No. 1083 日本の平和終わるのか

アメリカ政府が産業統計を作る際の収集・分析基準について、政府諮問機関である「経済分類に関する政策委員会」(ECPC)が新たな産業分類を提案している。

もしこの提案が通ると、例えば、中国の工場で作られたiPhoneがヨーロッパに輸出された場合、それはアメリカの輸出額にカウントされる。またアップルの経営者や技術者、デザイナーなどもすべて統計上では製造業従事者になるという。海外に製造拠点を移しているアップルのような米国企業は、この新たな基準では「工場を持たない製造業者」という分類になり、またiPhoneを生産する中国の工場は米国企業への「サービス提供者」になる。

この再定義に基づいてアメリカの国際収支統計や雇用統計をとれば経常収支は改善され、製造業の雇用者数は劇的に増加することになるだろう。アップルのCEOが含まれれば、製造業の平均賃金も上昇する。この提案が採択されるとまだ決まったわけではないが、統計の定義を変えて経常収支や雇用統計の数値を改善して、それが多くの米国人労働者にとって何のプラスになるというのか。これは事実の歪曲(わいきょく)に過ぎず、空洞化するアメリカの製造業の実態が隠されることで、政府の政策はさらに誤った方向に導かれることになる。

しかしこの統計の再定義は、憲法を再定義した安倍総理と比べるとかなりましかもしれない。日本政府は集団的自衛権容認を閣議決定し、これによって日本も海外の戦闘に加わることが認められるようになったのだ。「自衛」という言葉はごまかしで、本質はアメリカの戦争に日本の自衛隊が軍事力をもってかかわることであり、明確な憲法9条違反である。

アメリカにノーと言えない歴代政権は、憲法改正ができないので、へ理屈をこねて憲法9条をすっぽかし、戦争する国づくりを進めてきた。特に憲法破壊の動きは、自衛隊のイラク派兵から一段と強まってきた。アメリカで戦地に送り込まれる兵士の多くは貧しい階層の出身者だが、できるだけ自国民を戦地に送りたくないという機運がアメリカ国内で高まっているため、「属国」である日本を使おうとしているのである。格差社会の広がる日本でも、アメリカのように貧しい若者が戦闘に駆り出されることになるのだろう。

日本憲法は国民主権をうたっており、そこに生まれた日本人はそれ以外の政体を知らない。だから民主主義が当然のように続くと信じているが、アリストテレスが民主主義は衆愚政治であり、長続きしないと書いているように、国民が関心を持たなければ、一部の人間の暴挙により民主主義は簡単に形骸化する。平和憲法がないがしろにされるように。アメリカや日本の政府は、国民を無視し、メディアを利用して民主主義を乱用している。戦後69年続いてきた日本の平和も、簡単に終わる日がくるということなのだ。