我々を取り巻く様々な問題について一緒に考えて頂きたく、今後定期的に、皆さんと共有したいと思う情報を私のコメント付きでお送りしたいと考えています。第一号の今回はその目的と内容についてお知らせします。主旨をご理解の上、毎号お読み頂ければ幸甚です。
1 目的
私は日々、数多くの書物や記事に触れ、考え、それを文章にまとめています。そしてその中から最も考えさせられたものを自分の友人にも読むように勧め、それについて一緒に考え、また自分が書いたものを批評してもらうことにしています。これまでは、東京、京都、ニューヨークと、とにかくその場にいる友人をつかまえてはこれを実行してきましたが、誰もが多忙で断片的にしか話すことができずジレンマを感じていました。そこで、様々な事柄について、継続的に考え、意見交換する方法はないものだろうかと考えた結果、このように電子メールを通じて個人的にメモを送付するというアイデアが浮かんだわけです。
2 方向性
私は企業経営者であり、私の肩には630人の社員とその家族の生活がかかっています。私には出生地米国と永住地日本という2つの母国がありますが、ここ数年、その2国のことが心配でなりません。共に民主主義国家をうたう日米は、本当に民主主義なのでしょうか。もしそうだとすれば、国民にはどんな権利と義務があるのでしょうか。国民は権利を享受し、義務を遂行しているのでしょうか? そして国家における企業の役割や義務とは何か。その中でわが社の役割や義務とは何なのか。企業は何を目的に経営すべきなのか。これらのことについて私はいつも頭を悩ませます。そしてその解決策を探すべく、考え、書物を読み、書いているのです。このメモ・シリーズを通して、今後このような事柄について皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。
3 私の見解
私はこれまでにも上記のような大きな事柄を考えるにあたり、いくつか具体的な問題点を指摘してきました。
<日米の貿易不均衡はない>
米国は貿易不均衡、日本の閉鎖性や不公平を非難していますが、私は日米貿易は均衡がとれていると信じています。日本は米国に売るのと同じくらい、米国から物を買っているのです。これは投資についても同じことです。これらの批判は単純な誤解やコミュニケーションの問題に起因するものもありますが、その大部分はそのような単なる誤りではなく、虚偽と貪欲から生じるものだと考えています。
<コンピュータによる生活向上>
我々コンピュータ業界はハードウェアやソフトウェアを提供しているものの、それでユーザーの生活、仕事、ビジネスはどのくらい改善されているのでしょうか。我々提供する側の努力が足りないのはもちろんでしょうが、ユーザー自身もコンピュータ利用を真剣に推進していないのではないでしょうか。
<1%の金持ちが民主主義を乗っ取った>
国民の約99%は賃金収入で生活をしていますが、利子だけで生活できる金持ちが日米どちらにも1%程存在します。米国ではその1%の金持ちが財力にものをいわせて、狡猾にプロパガンダ(宣伝活動)を牛耳り、政府に圧倒的大多数の国民よりもトップ1%を優先させるような仕掛けを作り上げました。また99%の国民はその不合理を受け入れるよう、そのプロパガンダに騙されています。その結果、米国の富や収入の分配は偏り、まるで第三世界のように富の集中と貧困が混在しています。
さらに、米国の支配階級は、中国の4人組のごとくG7(ギャング・オブ・セブン)を結成し、他の西側諸国が同じように財力と権力で社会を奪略するよう手ほどきをしています。そして今、そのギャングたちは日本をもそのゲームに引き入れようとしているのです。私は米国に民主主義と公平さを取り戻す助けをしたいのです。そして日本の友人達が米国の巧妙な策略やプロパガンダによって植民地化されないように支援したいと思っています。
<米国を駄目にした価値観が日本にも上陸>
1945年には米国は最も豊かで力のある幸福な国でした。その50年後の今、米国は貧困にうちひしがれ、負債を負い、麻薬に汚染され、犯罪、文盲にあふれ、汚れた不健全な国になってしまいました。私にとってこれは大変悲しく、恥ずかしいことです。しかし、今度は日本人が、日本をここまで繁栄させ、安全で、健全で幸福な国にした価値観や慣行を捨てて、その代わりに米国を惨めにした価値観や慣行を取り入れています。それを見るにつけ、私は米国に対するのと同じように幻滅するのです。私は米国人がかつてのアメリカン・ドリームを立て直すのに力になりたい。そして日本の友人達が現在の米国の悪夢の二の舞となるのを避けられるよう助けたいのです。
4 トピックス
このメモ・シリーズでは、具体的に次のような話題を取り上げようと思っています。
・ 米国企業は、金融市場での博打の方が手っ取り早く利益が得られることが分かり、製造業を捨てた。日本はそれをまねて「財テク」に走った。
・ 米国企業は海外の低賃金労働力を利用するために産業基盤を海外に移し、その結果国内には失業と貧困を招いた。今、日本企業は社員を人材と呼び、海外に工場を建てて日本人のかわりにもっと安い人材を利用しようとしている。
・ 貧困者や弱者を、金持ちや権力者から守る「規制」を捨てた時、米国は惨めな国となった。今、同じ巧妙なプロパガンダによって、日本でも同じような規制緩和が進められている。
・ 税負担を金持ちから貧しい人へ移行したために、米国の収入と富の分配は歪んだものとなった。今、日本でも、金持ちがさらに優遇されるよう所得税や法人税が減税され、貧しい人がさらに負担を強いられる消費税の増税が行われようとしている。
・ 選挙制度の変更によって、米国では投票ではなくお金が選挙を左右するような制度となり、それによって金持ちは自分達の権力を定着させた。選挙改革と呼ばれる同じような方法によって、日本もそれに追従している。
・ 世界の警察官としての役割に余りに多くの資金を費やしているために、自国の国民を殺人、強姦、強盗などから守る予算さえ米国には残っていない。エリツィン大統領に資金を提供し、北朝鮮の軽水炉への転換を援助し、メキシコのペソを支援するだけの税金を国民から徴収していながら、国民のための充分な食べ物、家庭、健康保険、教育などは提供できないでいる。今、日本は余りにも多くの資金を米国の戦争や外交政策の援助のために使っているため、自国の高齢化対策のために消費税を上げなくてはならなくなってしまった。阪神大震災の二の舞を防ぎ、最悪の事態を回避するために、東京の道路や鉄道を再構築する余裕などもちろんないであろう。