No.102 『控え目な提案』と『3周年目に際して』に対するご意見

今回はまず最初に、エコノミストのマイケル・ハドソン氏による『日本のための控え目な提案(No.96)』に対する読者からのご意見と我々の回答をご紹介します。この『控え目な提案』は、米国のプラザ合意によって日本の納税者にもたらされた何兆円もの損失を取り戻し、日本が奴隷の立場から抜け出すための提案でした。その後には、私の書いた『3周年目に際して』に対する読者からのご意見と私の回答が続きます。

『控え目な提案』について

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読者:控え目などと言う必要のない、良い提案だと思う。だたしこの提案は、日本の政治家が日本の国益のために行動するというのが大前提となっている。日本の政治家についてはよく知らないが、直観的に、それがこの提案の弱点のような気がする。

回答:No.97でも書きましたが、日本の政治家は日本国民を代表しているように見せかけてはいますが、実際には日本を米国の植民地として統治していると私は考えています。

読者:国益を考えて政治家が執務を行う国など、世界中どこを探してもないと思う。1945年の国連誕生後、また1957年に欧州連合の発端となったローマ条約の締結以来、そして特に最近の冷戦終結以降と、世界はますます国益ではなく財力と権力だけを信じる一握りのグローバリストによって支配されるようになってきている。このグローバリストの大半は米国のパスポートを持っているが、彼らは国際共産党であるコミンテルン発行のパスポート保持者であってもいい。いわゆる「新世界秩序」の基本的考え方は、共産党のそれと全く同じなのだから。その点を考えると、日本に国民のために命を捧げるような勇敢かつ愛国心の強い政治家が本当にいると思っているのだろうか。いたとすれば、ハドソン博士の提案は日本だけでなく世界中の愛国者から支持を受けるだろう。なぜならそのような指導者は、米国の愛国者の利益のためにも戦っていることになるからだ。新世界秩序の崩壊は東ヨーロッパの共産主義の終焉と同じだ。ハンガリーやチェコ、ポーランドなどの近視眼的な東ヨーロッパ諸国は、共産主義の統制を取り除くと自ら進んで資本主義体制という新しい足枷をはめてしまったが。
しかしこうした状況を見るにつけ、Our Worldのような公開フォーラムで「控え目な提案」にあるような戦術を話し合うべきなのかと考えてしまう。なぜなら、これは知的な意見交換ではあるが、提案が成功する可能性は低いからだ。この提案でハドソン氏が標的にしている人々は力を持っているだけでなく(事実、エリツィンを買収して世界第2位の大国、ソ連を滅ぼしてしまったではないか)、冷酷で自分達を世界の情報の支配者だと考えているからだ。それともこのメモの目的は不正な制度の変革などではなく、単なる意見交換なのだろうか。

回答:私の目的はできるだけ多くの人々に事実を知らせ、彼らの目を覚ますことにあります。国民が現状に気づき、政府に外国のためではなく、日本国民の利益のために行動するよう要求し始めない限り、日本の政治家が日本国民のために行動するようになるとは、私も思っていません。

ハドソン:変化を起こすには、世界の病に関する我々の診断に同意してくれる人を十分な数まで増やす必要があります。少人数では政府は取り上げてくれません。我々の考えに関心を向けさせるには、その考えに共鳴する人の数を増やすしかないのです。
問題はどうやって増やすかですが、忍耐強く取り組んでいくしかないと私は思っています。民営化の波を止めることは不可能です。そして、この新世界秩序はすべての公有地や公共財産が売却されつくすまで続くでしょう。ではその時、政府はどのようにして予算を均衡させるのでしょうか。結局は、貧困者に過去最高の税率を課し、公的債務の利払い以外のすべての公共サービスを削ることになるのです。
私はこのような形での討論は前進のための第一ステップだと思います。現在の金儲け主義者たちは、我々の考えなど全く気にもかけていません。彼らの関心は資産だけなのです。彼らは傲慢にも、自分達を阻むものは何もなく、当面は何も心配はないと考えています。彼らにとって、我々は次世代になれば死にゆく時代遅れの人間であり、「騒音」の一部に過ぎず、彼らの眼中にはないはずです。我々に気づいているとすれば、何とかして買収しようするでしょう。ですから、彼らが何らかの提案をしてこない限り心配はいりません。そして提案してくれば単にそれを拒否すれば良いだけのことなのです。我々が拒否すれば、彼らは混乱するでしょう。最も高い値を提示しさえすれば何でも買収できると彼らは信じているからです。
まずは1つずつ実行していくしかありません。最初は経済および文化の病を理解するために、それを正しく診断することです。その症状をきちんと理解しなければ、物事を変えるために何かをしようという気にはならないでしょう。
例を1つ挙げましょう。私は1972年に出版したSuper Imperialism”で、米国政府がドル本位制で他の諸国を搾取していることを示しました。米国がベトナム戦争の国際収支負担をドイツ、フランス、日本の中央銀行に押しつけている実態を映し出すことにより、何十億ドルもの負担を強いられていることを知れば、これらの政府から何らかの反応があるだろうと考えていました。しかし、反応が来たのは米国政府からだけでした。米国政府はこの本をいわゆるHow Toものと考え、その搾取が一体どのように起きているのか詳細に示すようHudson Instituteに依頼してきたのです。私はこの本を社会主義者の友人全員に贈りました。しかし彼らにとって「搾取」とは賃金の搾取であって、それを金融外交にまで広げることは、彼らが本来対象にしている黒人や貧困者、女性など、資本主義の中心から取り残された人々を混乱させるだけだとして取り合ってくれませんでした。
現在の搾取制度がなぜうまくいかないのか、またそれがいかに不公平で汚職にまみれているかを我々がきちんと診断できれば、新世界秩序は我々をコンサルタントとして雇おうとするでしょう。この体制をさらに効率よく不公平で、より完全なものにするにはどうすればよいかを我々に示すようにと依頼してくるはずです。彼らの防衛手段は我々のような評論家を味方につけるところから始まります。だからこそ、私は世界銀行や右派寄りのシンクタンクではなく、Our World向けに研究レポートを書いているのです。私は単なるHow Toものの本は書きたくありません。私が目指していることは、読者が自分達から「これは間違っている」と言い出すような状況を作り出すことなのです。どう対処すべきか決めるのは、それからです。
マルクスの考えとは逆に、そうした人々は経済の上層部に属していると私は思っています。下層階級の人々は自分達を犠牲者だと考え、自分達には経済を再生させ、世界をもっと良い場所に作り替えることなどできないと考えるからです。世界を変えてやろうという心意気のある人を見つけることは難しいものです。しかし、自分が認識する問題を他の人にも気づかせ、その人にも問題に立ち向かう気にさせること程、やりがいのあることはないと私は思うのです。

『Our Worldの3周年目に際して』

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読者:「日本は独立国家かそれとも米国の植民地か?」を拝見しました。タイトルを見たときは、本文中にも書いておられますが、「極端すぎる!!」というのが実感でした。しかし順次読み進んでいくうちにすべてが否定のしようのない説得力のある内容で、「極端すぎる」どころかだんだん腹立たしくなってきました。いまは、米国を偶像化していたマインドコントロールが少しだけ解け、植民地であったことに気がつき、このままじゃいけないんじゃないかという気持ちが少しだけですが、生まれてきました。ひとつだけ疑問があるのですが、米国人はこのようなことについて、どう考えているのでしょうか。

回答:大半の米国人は、日本が米国の植民地であることなど全く知りません。しかし、最も権力のある米国人は知っています。 米国による日本の植民地化についてさらに詳しくお知りになりたい場合、グレン・デイビス/ジョン・ロバーツ共著、『軍隊なき占領: ウォール街が「戦後」を演出した』(新潮社、森山尚美訳)をお薦めします。