<新指針がいかに日本国民に負担を与えるか>
(以下の番号は指針の番号を示す。)
III.2 日米いずれかの政府又は両国政府が国際連合平和維持活動又は人道的な国際救援活動に参加する場合には、日米両国政府は、必要に応じて、相互支援のために密接に協力する。日米両国政府は、輸送、衛生、情報交換、教育訓練等の分野における協力の要領を準備する。
コメント:この文章は日本とその国民をばかにしている。国連常任理事国である米国は、これまでその国益に合致しない国連の行動について、すべて拒否権を発動してきた。新たな指針は、常任理事国でもなければ拒否権も持たない日本に対して、米国が勝手に行う国連平和維持活動および人道的な国際救援活動に、密接な協力を要求するものである。これまでの日米関係から明らかなように、米国が「必要に応じて」という表現を使うときは、すなわち「米国が必要と考える時」を意味する。米国が必要と考える国連の平和維持活動で日本が米国を支援するように脅し、もし支援しなければ世界中で日本を中傷してまわるに違いない。したがってこの項は指針から取り除くべきである。そうすれば、日本は国連の平和維持活動を支援すべきかどうか、またそれをどのように行うかを自国の判断に基づいて決定することができるのである。
大規模災害の発生を受け、日米いずれかの政府又は両国政府が関係政府又は国際機関の要請に応じて緊急援助活動を行う場合には、日米両国政府は、必要に応じて密接に協力する。
コメント:この項は1978年の指針を大きく上回る。米国が緊急援助活動を行うと勝手に決めれば、日本は、米国の必要に応じて、密接に協力しなければならないと述べられている。例えば、日本国民を拉致したり、日本に麻薬を密輸したり、日本国民の日本への一時帰国を禁止したりしている国家を援助すると米国が一方的に決めたとしても、日本は密接な協力を提供することにコミットすることになるのである。あるいはその協力は第二次世界大戦以来、日本国土を不法に占領している国に対する援助になるかもしれない。このような指針に合意した日本は、独立国として外交政策をとることができるのであろうか。この項目により、日本は米国が勝手に決める緊急援助活動において米国を支援することにコミットすることになる。(米国は、当該政府および国際組織から要求が出ても、緊急援助活動を提供しないと勝手に決めることができる。)これまでの日米関係の変遷からも明らかなように、「必要に応じて密接に協力する」というのは米国が考える「必要に応じて」であることは確実であり、米国は自国の緊急援助活動を支援するよう日本に圧力をかけ、米国が必要と考える援助活動を支援しなければ日本を国際的に糾弾するであろう。したがってこの一節は指針から抹消すべきである。さもなくば、日本が独自の判断で米国の救援活動を支援するか否か、またそれをいかに行うかを決定することはできなくなる。
III.3 日米共同の取組み
日米両国政府は、日本に対する武力攻撃に際しての共同作戦計画についての検討及び周辺事態に際しての相互協力計画についての検討を含む共同作業を行う。このような努力は、双方の関係機関の関与を得た包括的なメカニズムにおいて行われ、日米協力の基礎を構築する。
コメント:ここでも安保の枠を越え、武力攻撃だけでなく、未定義の(つまり無制限の)周辺事態にまで及んでいる。これは明らかに違憲である。日本の憲法は、日本国外でのいかなる地域においても、米国の軍事活動に日本が参加することを禁じている。橋本首相は日本の政府を削減するとよく言うが、日本の防衛や安全保障と全く関係のない「周辺事態に際しての相互協力計画についての検討を含む共同作業」は政府の仕事を増やすことであり、それには人手や資金がかかることを理解しているのであろうか。また、「双方の関係機関の関与を得た包括的なメカニズム」も政府の労力や予算が必要になる。一体、これらの作業に日本の税金がいくらかかるのであろうか。
日米両国政府は、このような共同作業を検証するとともに、自衛隊及び米軍を始めとする日米両国の公的機関及び民間の機関による円滑かつ効果的な対応を可能とするため、共同演習・訓練を強化する。また、日米両国政府は、緊急事態において関係機関の関与を得て運用される日米間の調整メカニズムを平素から構築しておく。
コメント:上記の「公的機関及び民間の機関による」に注目してほしい。ここには、この指針に基づき日本の義務を増やそうという狙いが表れている。1978年の指針には、自衛隊以外、日本の「公的機関」や「民間機関」を米軍に利用させるという表現は全くなかった。以下にもあるが、新たな指針は日本の公的機関・民間機関を米軍に広く開放することを義務づけている。これにも日本の政府の労力や資金がかかる。さらに、日本の防衛や安全保障に関係のない周辺事態に対して、「共同作業を検証するとともに、円滑かつ効果的な対応を可能とするため」、日本は、米国に日本の民間の空港や港を利用させなければならなくなる。そして、米国は自国に最も都合のいいように解釈を加え、日本に圧力をかけ、日本が言いなりにならなければ中傷するのは目に見えている。それを許せば、日本全土が米軍基地に変貌することになる。民間の空港や港を米軍に利用させることによって日本国民のその施設の利用がいかに妨げられるかは、沖縄県民や大田知事に聞けばすぐにわかることである。
V.日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(周辺事態)の協力
周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態である。周辺事態の概念は、地理的なものではなく、事態の性質に着目したものである。日米両国政府は、周辺事態が発生することのないよう、外交上のものを含むあらゆる努力を払う。日米両国政府は、個々の事態の状況について共通の認識に到達した場合に、各々の行う活動を効果的に調整する。なお、周辺事態に対応する際にとられる措置は、情勢に応じて異なり得るものである。
コメント:最初の文にある「日本の平和と安全に重要な影響を与える」日本周辺の事態に関しては、憲法が完全な指針を提供している。
<<憲法第9条>>
「 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」
コメント:日本政府も米国政府も、どのようなことがあっても日本国憲法に違反するようなことは提案しない、という確固とした確約が、新たな指針に必要である。また、「周辺事態の概念は地理的ではなく事態の性質に着目したもの」とあるが、これは私には理解できない。このようにわかりにくい表現を使うのは、両国政府が、この指針を承認させた後、好きな時に好きなように新たな解釈ができるように、意図的に行ったとしか思えない。両国の国民は政府に、このたわごとの意味を明確にするよう、今すぐ要求すべきである。
2 周辺事態への対応
協力の対象となる機能及び分野並びに協力項目例は、以下に整理し、別表に示すとおりである。
(1)日米両国政府が各々主体的に行う活動における協力
日米両国政府は、以下の活動を各々の判断の下に実施することができるが、日米間の協力は、その実効性を高めることとなる。
コメント:これまでと同様に、この項目の内容を楯に米国は日本政府に米国政府が主導する活動を支援するよう圧力をかけてくるだろう。それを支援しなければ日本を中傷するに違いない。
(イ) 救援活動及び避難民への対応のための措置
日米両国政府は、被災地の現地当局の同意と協力を得つつ、救援活動を行う。日米両国政府は、各々の能力を勘案しつつ、必要に応じて協力する。
日米両国政府は、避難民の取扱いについて、必要に応じて協力する。避難民が日本の領域に流入してくる場合については、日本がその対応の在り方を決定するとともに、主として日本が責任を持ってこれに対応し、米国は適切な支援を行う。
例: ○ 被災地への人員および補給品の輸送
○ 被災地における衛生、通信および輸送
○ 避難民の救援および輸送のための活動並びに避難民に対する応急物資の支給。
コメント:この項目は日本の防衛には関係のない(あるいは表面上関係あるように見せかけた)米国の軍事的野望から生まれた避難民を、日本に受け入れさせるための罠のようである。思い出してほしい。ベトナムやラオス、カンボジア難民を受け入れなかったことに対し、日本がどれほど非難されたかを。過密化した日本の国土に、米国のせいで生まれた避難民をなぜ引き取らなければならないのか。また未定義かつ無制限の「周辺地域」における、日本の防衛とは無関係の米国の軍事活動から生まれた避難民に対して、これらのサービスを日本の費用で提供することをなぜ義務づけられなければならないのか。
(ロ) 捜索・救難
日米両国政府は、捜索・救難活動について協力する。日本は、日本領域及び戦闘行動が行われている地域とは一線を画される日本の周囲の海域において捜索・救難活動を実施する。米国は、米軍が活動している際には、活動区域内及びその付近での捜索・救難活動を実施する。
コメント:「捜索・救難」は一見、人道的活動のように聞こえるが、この部分は米国が国際紛争を解決するために日本国外で好戦的な威嚇をしたり、あるいは武力行使に訴える場合について述べているのである。こうした米国の軍事的野望のために、なぜ日本が「捜索・避難」のサービスを提供しなければならないのか。なぜ日本の納税者がその費用を負担しなければならないのか。
(ハ) 非戦闘員を退避させるための活動
日本国民又は米国国民である非戦闘員を第三国から安全な地域に退避させる必要が生じる場合には、日米両国政府は、自国の国民の退避及び現地当局との関係について各々責任を有する。日米両国政府は、各々が適切であると判断する場合には、各々の有する能力を相互補完的に使用しつつ、輸送手段の確保、輸送及び施設の使用に係るものを含め、これらの非戦闘員の退避に関して、計画に際して調整し、また、実施に際して協力する。日本国民又は米国国民以外の非戦闘員について同様の必要が生じる場合には、日米両国が、各々の基準に従って、第三国の国民に対して退避に係る援助を行うことを検討することもある。
コメント:やっと正当な理論に巡り会えたかと思った。ここでは、各主権国家は自分の判断に基づき、相互にあるいは独自に適当であると判断した分だけ協力すると述べられている。しかし、それが本当に意図していることであるとすれば、わざわざこのような指針に含める必要はなかったはずである。
非戦闘員を退避させるための活動」の例(別表より)
○ 情報の交換並びに非戦闘員との連絡及び非戦闘員の集結・輸送
○ 非戦闘員の輸送のための米航空機・船舶による自衛隊施設及び民間空港・港湾の使用
○ 非戦闘員の日本入国時の通関、出入国管理及び検疫
○ 日本における一時的な宿泊、輸送及び衛生に係る非戦闘員への援助
コメント:日本の防衛に関係のない、未定義・無制限の周辺地域で行われる米国の気ままな軍事活動のために、非戦闘員を退避させるサービス・施設をなぜ日本が提供しなければならないのか。また、なぜ日本がその費用を負担しなければならないのか。
(ニ) 国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保するための活動
日米両国政府は、国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保するための活動に対し、各々の基準に従って寄与する。
また、日米両国政府は、各々の能力を勘案しつつ、適切に協力する。そのような協力には、情報交換、及び国際連合安全保障理事会決議に基づく船舶の検査に際しての協力が含まれる。
コメント:「適切に」という言葉は注意が必要である。米国政府は米国の要求をすべて日本政府にのませるために日本政府に圧力をかけるが、その時必ずその要求が「適切」であると主張するであろう。
例: ○ 船舶の検査及びこのような検査に関連する活動
○ 情報の交換
コメント:経済制裁の実効性を確保するために、国連安保理事決議に基づく船舶の検査を行うことに、なぜ日本がコミットしなければならないのか。米国は国連安保理事会の常任理事国である立場を利用して、米国が好まない決議のすべてに対し拒否権を発動してきた。日本は常任理事国でもなければ、拒否権も持たない。したがって、この指針を受け入れれば、経済制裁の決定に日本は一切発言権を持たないにもかかわらず、米国が拒否しない制裁をすべて支援し、船舶の検査義務を持つことになるのである。そんなばかげたことがあるだろうか。日本ではなく米国が船舶の検査を行うべきであり、日本国民ではなく、米国民がその費用を負担すべきである。
2) 米軍の活動に対する日本の支援
コメント:この項目を読むとき、全く限定も定義もされていない「日本の周辺地域」における米軍の活動を日本が支援するということについて書かれていることを忘れてはならない。米国は、防衛の名の下に戦争を行うと決めた時、これまで幾度となく全世界を「米国周辺」と捉えてきた。
(イ) 施設の使用
日米安全保障条約及びその関連取極に基づき、日本は、必要に応じ、新たな施設・区域の提供を適時かつ適切に行うとともに、米軍による自衛隊施設及び民間空港・港湾の一時的使用を確保する。
コメント:これは52年間におよぶ米軍の日本駐留を大きく拡大させ、米国に白紙委任状を与えるようなものである。「必要に応じ」の「必要」の意味、「適時」や「適切」が何を指すのか、「一時的」がどの程度の長さなのかは、これまでの日米関係の中ですべて米国が一方的に決めてきた。そのことを考えると、この項目は、米国が必要と判断すれば、米国が適時、かつ適当と考えるのに応じて、追加の施設や区域を日本側が提供しなければならないということである。つまり、これは米国が日本を主権国家ではなく、米国の植民地と捉えていることを象徴している。主権国家でありながら、これ程まで他の国に屈している国が日本以外にあるだろうか。
施設の使用の例(別表より)
○ 補給等を目的とする米航空機・船舶による自衛隊施設及び民間空港・港湾の使用
○ 自衛隊施設及び民間空港・港湾における米国による人員及び物資の積卸しに必要な場所及び保管施設の確保
○ 米航空機・船舶による使用のための自衛隊施設及び民間空港・港湾の運用時間の延長
○ 米航空機による自衛隊の飛行場の使用
○ 訓練・演習区域の提供
○ 米軍施設・区域内における事務所・宿泊所等の建設
コメント:これは文字どおり日本全土を米軍基地に変えることに他ならない。米軍が日本の防衛を支援するための基地ではなく、米軍が気まま、かつ一方的に行う軍事的野望の基地である。米国政府が勝手に決めたことが何であろうと、日本の防衛および安全保障に全く関係なかろうと、さらに、それが世界、宇宙のどこで行われようが(つまり日本周辺)、日本が基地となるのである。民間空港や港湾、その他の区域施設を米軍が利用することで、騒音や危険、その他の問題が発生するのはもちろんのこと、日本国民の税負担も増加することになる。逆を考えてみるとよい。日本や他の国が、米国の周辺地域で勝手な行動をとるために、米軍の施設を同じように利用するようなことがあり得るだろうか。
(ロ) 後方地域支援
日本は、日米安全保障条約の目的の達成のため活動する米軍に対して、後方地域支援を行う。この後方地域支援は、米軍が施設の使用及び種々の活動を効果的に行うことを可能とすることを主眼とするものである。そのような性質から、後方地域支援は、主として日本の領域において行われるが、戦闘行動が行われている地域とは一線を画される日本の周囲の公海及びその上空において行われることもあると考えられる。
後方地域支援を行うに当たって、日本は、中央政府及び地方公共団体が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用する。自衛隊は、日本の防衛及び公共の秩序維持のための任務の遂行と整合を図りつつ、適切にこのような支援を行う。
コメント:この項目により、日本全土が米国の軍事マシンの付属物となりうる。日本は、米軍を後方地域支援するために、中央政府および地方公共団体の権限及び能力、並びに民間が有する能力を、米国が適切と考えるように活用しなければならない。また忘れてならないのは、日本の納税者がすでに米軍駐留経費としてすでに約6,400億円(97年度)支払っているという事実である。この指針が適用されれば、別表にある以下のような例すべての費用を日本が支払わなければならなくなる。
○ 自衛隊施設及び民間空港・港湾における米航空機・船舶に対する物資(武器・弾薬を除く。)及び燃料・油脂・潤滑油の提供
○ 米軍施設・区域に対する物資(武器弾薬を除く。)及び燃料・油脂・潤滑油の提供
○ 人員、物資及び燃料・油脂・潤滑油の日本国内における陸上・海上・航空輸送
○ 公海上の米船舶に対する人員、物資及び燃料・油脂・潤滑油の海上輸送
○ 人員、物資及び燃料・油脂・潤滑油の輸送のための車両及びクレーンの使用
○ 米航空機・船舶・車両の修理・整備
○ 修理部品の提供
○ 整備用資器材の一時提供
○ 日本国内における傷病者の治療
○ 日本国内における傷病者の輸送
○ 医薬品及び衛生機具の提供
○ 米軍施設・区域の警備
○ 米軍施設・区域の周囲の海域の警戒監視
○ 日本国内の輸送経路上の警備
○ 情報の交換
○ 日米両国の関係機関の間の通信のための周波数(衛星通信用を含む。)の確保及び器材の提供
○ 米船舶の出入港に対する支援
○ 自衛隊施設及び民間空港・港湾における物資の積卸し
○ 米軍施設・区域内における汚水処理、給水、給電等
○ 米軍施設・区域従業員の一時増員
(3) 運用面における日米協力
周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与えることから、自衛隊は、生命・財産の保護及び航行の安全確保を目的として、情報収集、警戒監視、機雷の除去等の活動を行う。米軍は、周辺事態により影響を受けた平和と安全の回復のための活動を行う。
自衛隊及び米軍の双方の活動の実効性は、関係機関の関与を得た協力及び調整により、大きく高められる。
○ 情報の交換
○ 日本領域及び日本の周囲の公海における機雷の除去並びに機雷に関する情報の交換
○ 日本領域及び周囲の海域における交通量の増大に対応した海上運航調整
○ 日本領域及び周囲の空域における航空交通管制及び空域調整
コメント:日本の防衛や安全保障と直接関係するものは何もない「周辺事態」に対する米軍の一方的かつ勝手な野望を支援するために、なぜ日本の納税者が費用を負担してこうしたサービスを提供しなければならないのか。
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<新たな指針が日本をいかに危険に晒すことになるか>
上記のすべては、新たな指針は、曖昧で未定義かつ無制限の「周辺事態」に対して米軍が行う交戦や威嚇、武力行使を日本が支援することにコミットすることを示している。換言すれば、新たな指針によって、日本の奴隷としての役割や義務が米国の軍事マシンの手先であると定義されている。これが日本国民をいかに危険に晒すかは、上記のような日本の支援を得た米軍からの交戦、威嚇、武力行使を受けた国が日本をどう見るかを考えてみれば明らかである。
米軍が日本の基地からある国を攻撃した場合、その国は自国を守るために日本の基地への反撃を考え、それが必要であり、正当とするであろう。米軍が日本の民間空港や港湾からある国を攻撃すれば、その国は自国を守るために日本の民間空港や港湾を攻撃することが正当防衛であると考えるはずである。
さらに、米軍の禁輸の対象となった国の船舶を日本が無理矢理検査しようとすれば、その国はその検査を必死に拒絶しようとするであろう。
米国の艦艇から自国を防衛するためにある国が機雷を置いたとする。それを日本が除去すれば、その国は日本の掃海艇を攻撃することを正当防衛と考えるであろう。
また、ある国が自国を攻撃する米国に資金援助をしているのが日本であると知れば、資金援助ができないよう日本経済に打撃を与えようとするであろう。
つまり、この新指針に基づいて日本が米軍を支援すれば、明らかに日本が米軍の付属物となり、米国からの攻撃を受ける国はどこでも自国を防衛するために日本を攻撃しなければならないと考えるのである。しかも、それは正当防衛とされる。確かにそれは正当な行為であり、さらに言えば米国からの攻撃から自国を守るにはそうせざるを得ないであろう。米国が気まぐれ、かつ一方的に他の国を威嚇したり、攻撃することを決定するたびに(これまで常にそうであった)、日本を危険に晒させる白紙委任状がこの新たな指針である。日本国民は本当にこのような白紙委任状を米国に与えたいのであろうか。