「ならず者国家」「悪の帝国」などと他の国につけたレッテルが正しいことを証明しようとするかのように、またもや米国は非白人の小さな国に残酷な攻撃を仕掛けようとしています。イラクが大量破壊兵器を生産・保有しているという偽善的な主張を盾に、核兵器の使用もちらつかせながら空爆を開始するとイラクを威嚇しているのです。その一方で、同様の武器を保有する中東のお得意様であるイスラエルに対しては、米国がこれまで一度もそうした威嚇や攻撃を加えたことがなかったことを忘れてはなりません。 米国は、これまで生物・化学兵器あるいは核兵器の査察を装いながらそれを長引かせ、丸7年にわたりイラク国民をひどい経済制裁で苦しめてきました。そして今、こうした兵器をイラクが保有しているという確固たる証拠が見つからないまま、その「疑い」を口実にイラクに狂気の空爆を開始すると脅しているのです。同じ大量破壊兵器を保有することが周知の事実であるイスラエルに対しては武力行使をまったく行わないという矛盾する政策を、米国はどう正当化するのでしょうか。イスラエルは白人の国であり、米国内に富裕で強力なロビー団体を抱えているのに対し、イラクは非白人の国であり、ロビー活動が弱いことが理由なのでしょうか。 現在、こうした不条理なテロリスト的な活動を支持している国は、イスラエル以外では1国を除きすべてがアングロサクソン系の白人の国であるイギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドです。そしていつも通り、日本を米国植民地として統治する霞ヶ関の米国の家臣達は、好戦的な米国に支持を示しています。 ただし、多くの日本の一般国民や団体は米国の残酷な対イラク攻撃に反対を唱えていることも事実です。以下は、ジャーナリストである高野孟氏が刊行しているインターネット上のオンライン週刊誌、「東京万華鏡」(株式会社ウェブキャスター運営)に掲載されていた、日本の56の平和団体と7人の個人がアメリカ大使館に手渡した申し入れ文です。ここに書かれてあることすべてに私は同意します。是非お読みください。
イラクへの武力攻撃に反対する!
1998年2月6日
アメリカ合州国大統領 ビル・クリントン様
ペルシャ湾で再び人々の血が流されようとしている。
7年前の湾岸戦争の時とは違い今回の危機はフセインによる国際法違反でも侵略行為でもなく、クリントン大統領、あなたとあなたに指揮された米国軍隊によって一方的に引き起こされようとしている。そこには、微塵の国際法上の根拠も道徳的正当性も見いだすことはできない。
あなたが予告した対イラク武力攻撃の日を目前に控えた今日、私たちはこの軍事的冒険と殺りく行為に対する如何なる支持も合意も、日本の市民の間に存在しないことをはっきりと伝えたい。
ホワイトハウスのマカリー報道官は、2月3日の記者会見で「死者が出たとしてもそれはフセインの責任である」と答えた。この発言は、軍事攻撃が必然的に一般市民に流血の惨事をもたらすことを充分に知った上での卑劣な責任逃れである。米国が主張する、高精度兵器による軍事目標へのピンポイント攻撃がただの神話にすぎないことは、すでに湾岸戦争で実証されている。
湾岸戦争以来の7年間を思い起こすがいい。多国籍軍の空爆は15万人の市民の命を奪った。経済制裁による死者は100万人を越え、その半数以上が子どもたちであると伝えられている。このような犠牲と引きかえに、イラクと湾岸地域には民主主義と平和と安定はもたらされたであろうか。答えは明白ではないか。軍事攻撃は、絶望と憎しみ生み、テロリズムを増幅し、フセインに圧政と(もしそれが真実であるならば)生物・化学兵器の製造への根拠を与えただけでなかったのか。
軍事攻撃は、人々の命を奪うだけではなく、人々から自らの手でイラク社会を変革する権利とチャンスを奪い取る、最悪の国際的テロ行為に他ならない。
クリントン大統領、あなたはこの軍事攻撃はフセインの生物・化学兵器生産を阻止するための正当な行為であると宣伝している。しかし、これは吐き気をもよおす様な偽善と欺瞞に満ちた主張だ。
もし生物・化学兵器工場の破壊に「成功」したならば、周辺一帯に飛散する猛毒物質によって甚大な被害が一般市民の間に広がるだろう。
また、私たちは、他ならぬ米国こそが残虐・大量破壊兵器の信奉者であることを知っている。核兵器使用は国際法違反であるという国際司法裁判所の判断に背を向けて、今も15,000発以上の核弾頭で兵器庫を埋めているのは米国ではないのか。核実験全面禁止の国際的合意を裏切り「未臨界核実験」を繰り返しているのは、どこの「独裁政権」なのか。劣化ウラン兵器によって多くのイラクの子どもたちの命を奪い、自国の兵士に被害が及んでもなお、この「放射能兵器」を軍艦や飛行機や戦車に配備しつづけているのは誰か。国連小委員会での禁止決議に反対しているのは誰なのか。対人地雷禁止条約への署名を拒否するよう命じたのは、クリントン大統領、あなたではなかったのか。
さらに私たちは、米国がイラクの人々を標的に新型兵器の実験を行おうとしていることに驚きと怒りと押さえることができない。最近の報道によれば、米軍がとりそろえた兵器オプションの中にはB-61地中貫通型小型核兵器と高性能誘導爆弾そして劣化ウラン弾が含まれている。
私たちはこのような非人道的な軍事的冒険に、在日米軍基地が使われることに強く反対する。空母インディペンデンスは、コーエン国防長官の「超大国の力を見せよ」との激励を受けて、トマホークを積んだ4隻の随伴艦を伴って横須賀を出港した。出港直前には、厚木・岩国・横田で、夜間離発着訓練を無通告で行った。2月3日、イタリアのリゾートで20名のゴンドラの乗客の命を奪ったのと全く同じ訓練が、日本全土で日々繰り返されている。これらの訓練の「成果」が、イラクに流血をもたらすであろうという現実を私たちは決して容認することはできない。沖縄の名護で、地域の人間関係を引き裂き、珊瑚礁を破壊し、ジュゴンのすみかを奪って、あなたたちが建設しようとしている新しい基地が、大国主義と軍事介入主義の要請に応えるためのものであることを知っている私たちは、沖縄の人々とともに、移転ではなく撤去こそが基地問題解決の道であることを何度でも訴えたい。
さらに私たちは、新しい「日米防衛協力のための指針」が「周辺事態」の名によって示すものが、今あなたが行おうとしている行為なのだということを再認識し、「新指針」の撤回を強く求める。
武力行使が、国際的対立や矛盾の解決にいかに無力であるかということこそが、湾岸戦争と7年間の教訓ではないのか。米国を含む西欧世界の覇権主義と植民地主義こそが、中東社会の分断と対立の根元にあるという自覚の上にたった、対話と政治的・経済的公正の確立という多面的かつ非暴力的努力のみが、事態解決のためにとりうるオプションであることを、私たちは信じている。
私たちは要求する:
・ イラクへの武力攻撃を行うな! 爆撃をするな! トマホークを撃つな!
・ イラクを核兵器と新型兵器の実験場にするな!
・ すべての部隊をペルシャ湾から引き上げろ!
・ 殺すな!
以上、下記連名した団体個人として申し入れる。
<団体> 姶良地区平和運動センター 姶良地区憲法を守る会 姶良ユニオン 米紙意見広告を実現させる会(事務局・湯布院) ローカルNET大分・日出生台 くまもと市民センター 市民ネットワークさせぼ 佐世保軍事問題研究会 ピースリンク広島・呉・岩国 アジアに学ぶ会 岩国市職労平和研究所 カトリック正義と平和広島協議会 共育・共生を進める広島連絡会議 呉教育労働者研究会 呉YWCA79女たちから 8.5広島集会世話人会 芸南火電阻止連絡協議会 原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会 公害をなくす三原市民連絡会 在日韓国青年同盟広島県本部更紗の会 市民運動交流センター福山 従軍慰安婦問題を考える会・広島 ストップ・ザ・戦争への道!ひろしま講座 性差別は許さん!私たちは行動する会 全国水平運動研究会 電磁波問題を考える会 トマホークの配備を許すな!呉市民の会 東チモール問題を考える会 広島キリスト者平和の会 広島地区連帯労働組合 広島平和と生活を結ぶ会 デルタ女の会 日本キリスト教団西分区牧師会 ピースサイクル広島ネットワーク 除虫菊の会 広島YWCA憲法九条の会ヒロシマ 反戦ドタバタ会議 関西共同行動 あいち反戦の会 市民平和訴訟なごやの会事務局 脱軍備ネットワーク・キャッチピース ピース・チェーン・リアクション ピースネット・ニュース 命どぅ宝ネットワーク 米軍基地と日本をどうする全国NET 厚木基地を考える会 非核市民宣言運動ヨコスカ NEPA の会 上瀬谷基地はいらないウドの会 ごまめ通信舎 未来を考える会 沖縄の自立解放闘争に連帯し、反安保を闘う連続講座 市民平和訴訟なごやの会事務局 福生市民連合 国際非暴力行動委員会 へいわとふくしを見つめる会 (以上56団体)
<個人> 伊波洋一(沖縄県議会議員) 西塔文子(広島) 加賀谷いそみ(秋田) 中野智志(東京) 中川涼子(横浜) 倉島誠二郎(横浜) 小笠原公子(横浜)
よびかけ・連絡先:
脱軍備ネットワークキャッチピース
横浜市港北区錦ヶ丘10-4-1-B
TEL/FAX 045-433-3483
ピースネットニュース
東京都文京区本郷3-37-3 フジミビル303
TEL 03-3813-6490 FAX 03-5684-5870
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株式会社ウェブキャスター運営のオンライン週刊誌『東京万華鏡』
( http://www.smn.co.jp/JPN/index.html )
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