今回は7月12日の参院選について、私が思うところを綴ってみました。Our Worldでは、米国政府や米国企業、さらには日本の政治家やマスコミを中心に批判してきましたが、民主主義の基本である選挙を考える時、すべての責任は国民自身にあるという結論に到達せざるを得ません。この機会に是非、国民の義務について一緒に考えていただければと思います。皆様からのご意見をお待ちしております。
参院選について思うこと(1)
ここ数年間、日本は悪いニュースであふれている。経済は衰退し、円は下落し、金融機関の多くは巨額の博打のつけで破綻しかけている。また、労働者は職を失い、経営者は自信をなくし、官僚達は政治家同様腐敗している。このような例は枚挙にいとまがない。そして、政府がこれら無数の問題の解決の糸口を全く見い出していないことから、今後の見通しはさらに暗いとされている。
しかし、解決策は案外我々の身近なところにあり、1ヵ月以内に問題改善へ向けた大きな第一歩を踏み出すことができると私は確信している。
多くの人は、問題のほとんどは官僚あるいは政治家に責任があり、彼らに非難の矛先を向けている。しかし、問題の真の原因は国民にあると私は考える。民主主義社会において、立法および行政上、官僚を統制する代表者を選ぶのは国民の責任である。それにもかかわらず、最近の選挙では多くの国民がその責任を放棄し、投票率は40%台という悲惨な状況にある。また、来る7月12日の参院選でもさらに投票率の低下が見込まれているという。国民が投票という基本的な義務を果たさずにおきながら、良い政府による良い統治など期待できるはずがない。社会の一員としての義務を果たさない限り、国民には立法者や官僚を非難する権利などないのである。
民主主義社会の操縦者は国民であることに、多くの人が気づいていないようである。車や飛行機の操縦者に居眠りや飲酒運転が許されないのと同様に、社会の安寧を保つにはその操縦者である有権者が意識を鋭敏に保ち、真剣に投票することが要求される。これまでの「居眠り運転、飲酒運転」のような投票の仕方では、社会を台無しにするだけである。日本が現在抱えている問題を解決したいと考えるのであれば、来る7月12日に、確固とした目的意識を持って、真剣に選挙に臨むべきである。
民主主義の義務を果たすには、(1)投票する、(2)知識を持って投票する、(3)戦略的に投票する、(4)積極的に投票する、の4つのレベルがある。ここでは(1)の投票そのものについて言及する。
来たる参院選やその他の選挙に有権者が必ず投票に行くようにするだけで、日本の社会を計り知れないほど改善させることができる。
ほとんどの政治家は、選挙に当選すること、議員の座を維持することが自分の使命であると考えている。二世、三世の現職議員にいたっては、それはまさに一族の目標であり、選挙での当選は政治家の生涯の仕事である。政治家にとっては議員であることが唯一の収入源であったり、またある政治家にとってはそれが裏の収入源であったりもする。いずれにしろ政治家にとって落選ほど恐いものはない。有権者全員が投票すれば、政治家は議員としての座を維持するために、自分の後援者や支援団体だけでなく、すべての有権者を満足させなければならないことに気づくであろう。
有権者の中には、投票したいと思う良い候補者がいないのに投票するのは無駄だと理屈をこねる者がいるが、その考え方は間違っている。悪い候補者を落選させることは、良い候補者を当選させるのと同じくらい、あるいはおそらくそれ以上に重要なことなのである。国民が満足するような国を治められない政治家がいれば落選させて、政治家が政治家であり続けるためには国民を満足させなければならないということを教えてやるのである。そうすることで初めて、政治家に国民が満足するような政策や行動をとらせることができる。投票は言ってみれば買物のようなものである。消費者は、他に魅力的な商品がなくとも、手にした商品が気に入らなければそれを買おうとはしない。消費者が買いたくなるような魅力的な品物を用意するのは販売店の役目であり、消費者の仕事ではない。消費者が賢く買物をするように、選挙でも国民が積極的に自分達の意志を票に表わせば、政党は国民に魅力的な候補者、政策、行動を提供せざるを得なくなるであろう。
また、選挙はカネで決まるからと不平をもらす者も多い。しかし、日本における選挙へのカネの影響力は、他の国と比較してもはるかに低い。なぜなら、日本では選挙期間が非常に短く、テレビや他の高額な選挙広告が禁止されているためである。さらに、投票することによってカネの影響を相殺させることも可能である。なぜなら、選挙でのカネの影響力は投票率と反比例し、投票率が高ければ高いほど、カネの影響は小さくなるからである。候補者がカネで票を獲得しようとした場合、投票率40%台の選挙よりも投票率100%の選挙の方が巨額の資金が必要になるのは明らかである。したがって、政治家が同じ金額の資金で票を買おうとすると仮定すれば、投票率が高い方がカネの影響は低くなるのである。
最後に、政策課題や政党、候補者を詳しく調べなくとも、単に投票するだけでも効果は出る。なぜなら、直感に従えば、たいていの場合、賢い投票につながるからである。我々の社会がうまくいっているかどうかは、直感だけでも十分に判断できる。もし今の社会がうまくいっていると思えば、現職の政治家を信任し、当選させればよい。直感的にこのままでは社会がさらに悪くなると思えば、現職の政治家を落選させればよい。
国民を苦しめている問題について、現職の政治家に責任逃れをさせてはならない。ある政治家はそれを橋本総理のせいにする。しかし、橋本を総理にしたのは国民ではなく、同じ自民党の仲間である。したがって、責任は自民党にあるのであって、橋本政権を失脚させるには自民党に票を投じないようにするしかない。同様に、現在の問題を大蔵大臣や官僚達のせいにする者がいる。しかし、官僚を立法および行政上、統制するのは国会議員であり、国民が官僚を統制するには国会議員を通すしかなく、そのためには国会議員を選ぶ選挙で投票する以外に方法はないのである。官僚に対して不信任を表明するには、その官僚をのさばらせている国会議員を落選させればいい。また、ある者はマスコミを非難するが、国民にはマスコミを統制することはできない。国民にできることは、日本を混迷に追い込んだ与党政治家を落選させることだけである。