No.171 参院選について思うこと(5)

 人気のある政治家は力が弱く、嫌われる政治家の力が強いのはなぜか、その理由をお考えになったことはあるでしょうか。今回はこの問題について私見を述べたいと思います。是非お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。

参院選について思うこと(5)

 人気のある政治家は、国民すべての利益を満たそうとするがゆえに好感は持たれるが、一般国民から献金などの支援が得られないため、権力が弱い。これとは対照的に、嫌われる政治家は国民全体の利益を犠牲にして、特別利益団体や圧力団体の利益を優先する。そのために国民からは嫌われるが、利益団体から政治献金、プロパガンダ、接待等の様々な合法・非合法の支援を受けるために、強い力を持つようになるのである。
 経団連、経済同友会などの経済団体やその会員企業は、大企業やその経営者を優遇するよう政府に働きかける。具体的には、大企業や経営者は以下のようなことを政府に求めている。

1. 減税: 所得税最高税率の引き下げ、および法人税、相続税、有価証券取引税、地価税などの減税。

2. 消費税増税: 減税に伴う歳入の減少を消費税増税により補填する。

3. 規制緩和: 中小企業は倒産の憂き目に遭うこともあるが、規制緩和によって大企業支配は容易になる。

4. グローバル化: 海外進出および海外市場の拡大で利益増大を狙う。また自国民を捨て低賃金労働者を雇用することで人件費の削減が図れる。

5. 海外資本に対する市場開放: 海外資本による略奪を許す見返りに、相手国の市場に参入できる。

6. 食料自給率の引き下げ: 食料品の輸入を増やす代わりに、自社製品を輸入相手国に売り込む

7. 個人消費の促進: 自社製品の売上増加を図る。

8. 社会消費の削減: 自社製品は主に個人消費者向けの製品やサービスなので社会消費は求めない。

9. 失業率の増加: 企業収益を増やすために人件費を削減したいと考え、そのために失業者が増えることも仕方のないことだと考えている。

 経済団体やその他の利益団体は国民全体の公的利益よりも、自分達の特別利益を優先する政治家を積極的に支援し、政治献金やプロパガンダなど、あらゆる手段を使ってその政治家を当選させようとする。それに対して、特別利益よりも国民全体の利益を優先させる政治家は、自分達が必要としている唯一の支援、つまり選挙での一票すら与えられないのである。国民が政治や選挙に無関心で、国民の義務である投票さえ行わない結果がこうした事態をもたらしている。つまりこのような政治家の力を弱めているのは国民自身なのである。
 高利貸業界やその圧力団体についても同じである。金融機関は自分達の博打が招いた巨額の不良債権を公的資金で処理するよう政府に圧力をかけている。金融機関の特別利益を支持する政治家や官僚に、天下り先や賄賂を与え、プロパガンダで後押しするなど、ありとあらゆる支援を提供している。しかし、国民の利益を代表する政治家は、無関心で怠惰な一般国民に投票すらしてもらえず、したがって彼らの力は弱まる一方なのである。
 
 さらに米国政府の影響も無視できない。米国政府は日本に対して、次のようなことを要求している。

1. 日本国占領: 日本の憲法や法律を無視して、米軍は日本に駐留している。そしてさらに新ガイドラインでは、日本の防衛に関して米国側からは、いかなる約束も義務も明示していないにもかかわらず、日本国民を犠牲にして日本の土地や設備、自衛隊員を米国の軍事的野望のために供出させようとしている。

2. 食料・エネルギーの輸入: 日本にとって極めて重要な食料・エネルギー自給率を犠牲にして、米国の農民から農産物を、石油会社から石油を輸入させる。

3. 規制緩和: 米国大企業の侵略を阻む、いかなる規制をも撤廃させる。

4. ビッグバン: 米国の金融業界に日本の個人資産を開放させる。

 米国政府は、米国の利益のために日本を裏切る政治家や官僚には惜しみなく賄賂を与え、逆に日本を略奪者達から守ろうと抵抗する政治家達は厳しく罰する。このことは、中曽根と橋本が米国から受けている信任と、日本を守ろうとして結局ロッキード事件で政治生命を絶たれた田中角栄の末路を見れば、火を見るより明らかであろう。

 日本国民の利益のために働いている政治家を知っていれば、7月12日の参院選では是非彼らに一票を投じるべきである。そして、もしそうした政治家を知らなくても必ず選挙に行き、常に日本の利益よりも大企業や金融業界、あるいは米国の特別利益を優先させてきた政党とは違う党に投票すべきである。7月12日の参院選で投票率が上がり、自民党が敗退して参議院での議席数が減れば、政権を維持するためには利益団体ではなく、日本国民すべての公的利益を満たさなければならないことを自民党も思い知るはずである。