No.183 自民党は敗北から何も学んでいない(1)

7月12日の参院選での大敗によって、自民党が正気に戻り、日本経済をだめにしている破滅的な政策をやめるのではないか、と私は期待していた。しかし12日以降の行動を見ていると、自民党は敗北から何も学んでいないという気がしてならない。自民党は日本経済を誤って診断し、それを治療するための処方箋ではなく、害を及ぼす毒物を処方することに固執している。

日本経済は今、2つの病にかかっている。記録的な企業倒産と高失業率である。

過去12ヵ月間の企業倒産の数は、過去48年間のどの年をも上回る数字を記録した。1998年上半期だけで1万社を超える企業が、1千万円以上の負債を抱えて倒産した。これは1997年上半期を30%上回り、1984年以来最悪となった。これら倒産企業の負債総額は6兆9千3百万円で、戦後これを上回ったのは1997年下半期の負債総額7兆6千3百万円だけである。倒産した企業で働いていた人の数は合計で9万161人と戦後最悪で、これが高失業率をもたらした。

失業率は記録的な4.1%で、失業者数は293万人にも上った。有効求人は20年ぶりに0.53倍となった。総務庁によれば、雇用状況はきびしく、この状況はしばらく続くとしており、専門家は今年度末には失業率が5%近くになると予測している。これは警告という枠を超え、今まで大半の国民が職の安定を心配したことのなかった日本にとって、実にばかげた状況であるとしか言いようがない。

悪化する経済の窮状で、もっとも悲惨なのは自殺である。金銭的な問題にからむ昨年の自殺者の数は、日本で「バブル」がはじけた8年前と比べて3倍にも増加し、警察庁の調べでは3,556人が経済問題から自殺し、一年前の18%増であった。1990年の金銭がらみの自殺者数1,272人の2.8倍である。負債に関係した自殺者は1,878人で、3年前と比べて160%増加した。事業が思わしくないために自殺した人の数は140%増えて664人、倒産による自殺者は160%増えて64人、失業などの問題で自殺した人の数は950人であった。

これらの倒産ラッシュと失業の急増の原因をもたらしたのは、自民党のお粗末な政策である。自民党が彼らを死に追いやったと言っても過言ではない。自民党はこれまで何をしてきたのか。

(1) 1年前に消費税を5%に上げ、個人消費を抑制した。

(2) 自民党が発動した金融ビッグバンによって、巨額の預貯金が海外へ流出した。多くの企業が信用貸しを打ち切られ、たとえ受けられても、その費用は高くなった。またそれによって研究開発費や工場設備費が削減され、日本企業や日本の労働者の生産性や競争力が低下した。

(3) 自民党は銀行を保護するために人為的に地価の下落をくい止めた。そして、住宅は一般庶民の手の届かないものに、事務所や工場用地は中小企業にとってあまりにも高価なものとなった。こうして土地、建物、什器などの購入といった経済活動は行き詰まったのである。

(4) 政府の消費を他のOECD諸国の半分に抑えることによって、自民党は日本国民や日本の企業にとって重要なサービスの半分を奪い、高度社会においては正常な経済活動を圧迫した。

(5) 国民の福祉よりも企業の利益を優先する自民党は、社会にとって有益な製品の製造やサービス、雇用の代わりに、社会を破壊するような金融投機を奨励した。

日本の経済を立て直し、これ以上の社会の分断を防ぐためには、自民党の有害な政策とは正反対の政策をとらなければいけない。つまり、消費税を引き下げ、ビッグバンを無効にし、資本統制を復活させなければならないのである。人為的に地価を支えることをやめ、社会消費を他のOECD諸国並みに増やし、賃金よりも利益を優先させたり、製造者よりも高利貸や賭博者を優遇する仕組みを即刻やめなければいけない。

さらにこの他の有害な政策、例えば法人税の減税や自民党の政治家のような高額所得者のための所得税減税、相続税減税、その一方で金融機関の博打による負債を国民の税金で補填するといった計画を、自民党は即座にやめるべきである。また減税や不良債権処理のために赤字国債をさらに増やし、消費税を増税し、今以上に米国に盲従することもやめなければいけない。これらの政策はすべて毒であって、薬ではなかった。このままこの処方を続けられれば、日本の経済や社会は立ち直るどころか、害がもたらされるばかりである。明らかに自民党は、これらの病を正直に治そうとする代わりに、自分たちやその力を維持したい特別利益団体を優先するために日本経済の病を利用しようとしている。

自民党が日本経済や社会をこれ以上破壊するのを防ぐために、私たちは自民党を正気に戻さなければいけない。次の選挙で自民党が再度大敗するのを待つのではなく、今日にでも、次のような草の根的な行動をとることを私は主張する。

(1) もし私がここで述べたこととあなたの意見が同じであれば:

(A) 衆参両院のあなたの選挙区の国会議員と自民党本部宛てに手紙を書いていただきたい(またはこのを送って欲しい)。国会議員ならびに自民党本部の住所は、下記の弊社インターネットのWebサイトで調べることができる(また下記へご連絡いただければ、喜んで情報を提供させていただく)。

(B) また、OWメモをあなたの親戚や同僚、友人などにも送って欲しい。そして皆が国会議員や自民党の本部へ手紙を出すように是非勧めていただきたい。

(2) もし私がここで述べたことに反対されるのであれば、是非知らせていただきたい。私の間違いを指摘していただければ、私はそれを正すことができるからである。