自民党総裁選に立候補した3氏は、いずれも財政構造改革法の凍結・停止や赤字国債による減税を主張しているが、これこそまさにロナルド・レーガンが世界最強の債権国であった米国を、わずか8年で世界でもっとも貧しい国に至らしめた法案なのである。
外務大臣小渕恵三氏は、総額6兆円の恒久減税を実施、さらに10兆円規模の追加補正予算を加えるという。日本の債務はこれで16兆円増加する。梶山静六前官房長官は財政構造改革法(財革法)を凍結すると述べた。財革法は、政府系金融機関による貸付金の規模を20兆円または30兆円に拡大し、法人税、所得税の恒久減税を行うことによって、米国を世界の債務国にしてしまったレーガン大統領と同じように、日本の政治家が日本を貧困国にしてしまわないようにと、国会を通過した法案である。梶山前官房長官が小渕氏同様に6兆円の減税を行う計画であれば、梶山計画では日本の債務は26兆円から36兆円増大することになる。小泉純一郎厚生大臣は、財革法を廃止し、恒久減税を実施し、減税による政府の歳入損失分は赤字国債に充てると述べた。この計画では日本の債務がどの程度増加するか具体的に明示されてはいないが、おそらく小渕氏の16兆円と梶山氏が掲げている2つの計画のうちの多い方(36兆円)の間と見てよいであろう。
つまり、これらの3人の自民党総裁候補の計画によれば、日本の債務を今年一年で16兆円から36兆円増やす予定なのである。これを念頭において、以下の1965年以降の日本の長期債務と名目国内総生産(GDP)の表を見ていただきたい。
年度 名目GDP 国と地方の 債務/GDP(%)
長期債務残高
(兆円) (兆円)
1965 33.8 1.6 5%
1970 75.3 7.3 10%
1975 152.4 32.1 21%
1980 245.5 118.2 48%
1985 324.3 204.8 63%
1990 438.9 265.8 61%
1995 487.4 410.1 84%
1997 515.8 475.5 92%
1998 519.7 529.0 102%
この表からわかるように、日本の長期債務残高は過去30年間に急増し、1965年にはGDPのわずか5%に過ぎなかったものが昨年はGDPの92%、そして今年はすでに102%になると予測されている。GDPが15倍に増加した一方で、長期債務残高は300倍にも増えている。これはつまり1965年から1997年の間に、日本では1円分を生産するのに20円借金してきたことを意味する。これは正気の沙汰ではなく、狂気の会計ではないか。
そして今、狂った政治家たちは厚かましくもさらに長期債務を増やそうとしている。
追加債務 1998年の長期債務残高 対GDP
(兆円) (兆円)
小渕氏の計画 16 545 105%
梶山氏の計画 36 565 109%
(高い方)
これに対してOECD調べによるGDPに対する債務残高の割合はイギリス62%、フランス63%、米国64%、ドイツ67%となっており、日本のGDPに対する債務の割合はすでにどの国よりも高い。自民党総裁を狙う3人の太鼓持ちは、その日本の長期債務をさらに増やそうとしているのである。
いかなる国家も、このように増大する債務残高を維持していくことはできない。最近のメキシコ、タイ、インドネシア、韓国における出来事が示すように、浪費家(またはその国の国民)は、いつかは債権者と対峙し、借金を返済しなければならないのである。もちろんそれには苦痛が伴う場合が多い。日本国民が浪費家の自民党政治家を降ろさなければ、メキシコ、タイ、インドネシア、韓国などの人々が、それぞれの国の詐欺師の指導者たちの借金を清算するために味わったのと同じような失業、倒産、貧困といった苦難に直面することになるであろう。
自民党が日本の経済や社会をこれ以上破滅させる前に、私たちは自民党を正気に戻さなければいけない。次の選挙で自民党が再度大敗するのを待つのではなく、今日にでも、次のような草の根的な行動を是非とっていただきたい。
(1) もし私がここで述べたこととあなたの意見が同じであれば:
(A) 衆参両院のあなたの選挙区の国会議員と自民党本部宛てに手紙を書いていただきたい。国会議員ならびに自民党本部の住所は、下記の弊社インターネットのWebサイトで調べることができる(また下記へご連絡いただければ、喜んで情報を提供させていただく)。
(B) また、このメモをあなたの親戚や同僚、友人などにも読んでいただいて欲しい。そして皆が国会議員や自民党の本部へ手紙を出すよう是非勧めていただきたい。
(2) もし私がここで述べたことに反対されるのであれば、是非知らせていただきたい。私の間違いを指摘していただければ、私はそれを正すことができるからである。