日本人および外国人投資家が、投資対象を日本の株式市場から米国を始めとする海外の株や債券へ移している中で、円安でいくべきか、それとも日本の外貨準備高で円を買い支えるべきかで日米がもめている。この経済論争を理解するためには、市場開放や即効薬の信奉者達が使う婉曲表現が実際には何を意味しているかを知る必要がある。つまり、「日本の銀行の不良債権処理」とは、日本の銀行や不動産資産を投機家に投売りすることなのである。
日本の銀行を「白人の救済者」に売却させたい米国の高官達は、日本のあらゆる経済問題は、日本が不良債権処理に手間取り、さらに破綻した金融機関の売却を躊躇していることに起因すると主張している。日米のマスコミは米国政府高官のこうした訴えを鸚鵡返しに繰り返している。さらに、円安はアジア諸国に深刻な影響をもたらし、また日本の不景気は米国の輸出の減少につながるとも批判する。米国の生活水準の低下の原因は、米国のダウンサイジングや「柔軟な雇用」にあるのではなく、すべて日本のせいだというのである。
今日、為替レートを決めるのは製品の相対的価格ではなく資本の流れであり、通貨取引の大半はもはや財やサービスの貿易とは結びついていない。世界経済がグローバル化した結果、貿易取引額よりも資産運用者が行う株や債券への投資額の方が上回っている。日本版ビッグバンの始動以来、日本の貯蓄は主に米国の株式・債券市場に流出し、それが円の下落をもたらしている。また、為替レートの下落は一般にその国の輸出業者を助けることになり、日本でも実際にそれが起きている。日本人が日本の銀行や郵便局から米国企業の株式に資金を移動し、その手数料でメリルリンチその他の外資系金融機関は潤っている。また、日本からの資金の流入で米国や海外の株価は暴騰し、国際債券市場も活況を呈している。
問題は日本からの資金流入の見返りに米国側が日本から何を購入するかだが、それが日本の家電製品や自動車でないのは確かである。なぜならそれによって米国企業が重視している産業が侵食されることになるからである。米国の産業資本家は、日本企業が円安によって人件費が米国に比べて相対的に安くなり、日本の輸出業者が恩恵を受けることを望んではいない。そこで、円安に対抗するために米国が関税を引き上げたり、あるいは、日本の輸出自主規制を要求することもあり得る。さらには、日本に対し米国製品の一定の市場占有率を保証するように要求してくるかもしれない。しかし、今のところ米国側が日本に要求しているのは、ビッグバンに起因する貯蓄の流出分を日本に戻すために日本が好都合な投資機会を用意すること、つまり日本の資本資産、具体的には破綻した銀行や不動産、企業などを破格の値段で米国企業に売却させることである。米国の金融機関が日本の消費者から集めた貯蓄をやり手の投機家に融資し、その投機家に日本の資産を購入させる。こうして、日本人消費者の貯蓄を使って外国人が日本経済を所有するという構図ができあがるのである。
米国の政府高官達はこの最終段階に到達するまで、日本から米国への資金の流出を相殺するために、ドル建て外貨準備高、つまり財務省証券を売却し続けるよう日銀に要求するであろう。そして日本の民間部門の株や債券の保有高が増加するために、円の対ドル為替レートを維持するために日本政府に財務省証券を手放させる。これが、今日の外交論議における「均衡」の新しい定義なのである。そして国際的な力や経済的自治性を示す指標である外貨準備高が底をついた時、日本は第三世界の国に転落する。これが、今流行りのグローバル化に忠実に順応した国家の行き着く先である。
米国が日本政府に要求しているもう1つは減税である。減税による手取増加分を日本人が貯蓄に回すことを米国は十分承知している。減税によって増えた分の日本人の貯蓄は流出して米国の負債に融資され、税収減により日本政府はさらに債務を増やしていく。こうして年金基金や保険会社、銀行や民間投資会社などの世界の金融機関の貯蓄高が増加する分だけ、両国も債務を増やすことができる。
第三世界の国でそうであるように、日本でも富裕者は貯蓄を海外に移すことで利益を得るかもしれない。しかし、日本の外貨準備が枯渇した後もさらに資本が日本から流出すれば円安を食い止めることは不可能になり、日本経済は破滅し、日本人の生活水準は下降の一途を辿るであろう。このシナリオは日本にすぐにやってくるわけではない。毎月新しい危機が提議され、徐々に日本人をパニック状態に追いやっていく。そして要求に従うように圧力をかけられていくのである。繰り返すが、ここ数ヵ月続いている円安は、日本が不良債権問題を解決できないために起きたのではない。日本がビッグバンという法規制の変更を行ったために起きた現象なのである。日本が円安に危機感を感じて不良債権問題解決を急ぎ、資産を外国投資家にたたき売れば、日本から流出した資本は外国人が日本の資産を購入するという形になって再び日本に戻ってくる。「経済再生内閣」という看板をつけた小渕内閣がこれから数ヵ月間にどのような政策をとるかが、日本の命運を左右するのである。
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このハドソン氏の論文からも明らかなように、ビッグバンを発動したのは自民党である。自民党が日本の経済や社会をこれ以上破滅させる前に、私たちはこのように腐敗しきった自民党を今すぐ正気に戻さなければいけない。次の選挙で自民党が再び大敗するのを待つのではなく、草の根的な行動をすぐにでもとっていただきたい。そのためには、もしあなたが私の意見と同じであれば、衆参両院のあなたの選挙区の国会議員、そして自民党本部に手紙を書くか、このメモに署名してそれを彼らに郵送してもらいたい。国会議員、自民党本部の住所は下記の弊社インターネットのWebサイトでも調べられるし、弊社にご連絡いただければ喜んで情報を提供させていただく。
また、このメモをあなたのまわりの人たちにも読んでもらって欲しい。そして皆が国会議員や自民党に手紙を出すか、このメモに署名してそれを彼らに郵送するように勧めて欲しい。
もし私がここで述べた意見に反対なら、是非知らせて欲しい。異なる意見を理解したいし、私の考え方に間違いがあればそれを正したいからである。