終戦記念日の夜の『ザ・スクープ』出演にあたり、テレビ局からの質問に対して事前に私が用意した回答を、昨日に引き続きお送りします。
愛国心に関する4つの質問とそれに対する回答(3)
質問3:生まれた国としてのアメリカ、永住地としての日本、2つの祖国をお持ちだと思いますが、あなたにとっての愛国心とは何でしょうか。
回答:まず第一に、現在の米国は日本と同じような問題を抱えている。国民が信頼できる指導者の不在、あるいは国民が民主主義の基本的な義務である投票を行わないことが原因で、米国民は日本人同様、指導者を信頼できないでいる。日本より投票率が低い民主主義国家は、米国しかない。
指導者を信頼できないことの一つの表れが、ベトナム戦争以来、米国人が戦争に行きたがらず、また地上戦を受け入れないという事実である。湾岸戦争でのコンピュータ・ゲームのような空中戦は許しても、大量の犠牲者を出す可能性のある地上戦を米国人は決して容認しない。日米安保条約を信じている日本人はこのことを忘れてはならない。朝鮮戦争の時の韓国を思い出せばわかるように、日本が他の国から侵攻されても、米国は「日本を救済する」という名目で日本に爆弾を投下することもあり得るのである。しかし、日本を防衛するために米国が大量の米国兵士の命を危険に晒すようなことがないことだけは確かである。
第二に、愛国心を教えることに関しては、日本よりも米国の方がはるかに長けている。大半の米国人は米国が世界一であると信じて疑わない。それは米国人が生まれ落ちたその時から、愛国心を持つよう育てられるからである。現在米国は、先進国の中で最も貧富の差が激しく、貧困やホームレスが最も多く、犯罪や麻薬が蔓延している。経済においても競争力を失い、わずか10年の間に世界最大の債権国から債務国に転落した。そして20世紀最大の好戦的な帝国主義国でもある。こうした現実がありながら、米国民は米国が世界最高の国家で、最も裕福かつ無欲な国であると信じている。このことからも、米国人の愛国心というものが自然発生したのではなく、生まれた時から徹底して植え付けられてきたものであることがわかる。
例えば子供たちは学校で、日本の朝礼にあたる時間に国旗に対して次のような誓いの言葉を述べる。「私はすべての国民に自由と正義を与え、神の下に一国となり分かれることのないアメリカ合衆国の国旗とその国旗が表象する共和国に対して忠誠を誓います」。私の記憶が正しければ、幼稚園から高校まで登校すると決まってこの行為を繰り返してきた。さらに、政治家は星条旗に対する敬意や冒涜をよく選挙の争点とする。これを日本の状況と比べて欲しい。1997年4月、日米首脳会談のためにクリントン大統領が訪日した際に掲げられていた日本の国旗には、クリントンのテレビ映りが良くなるよう、神聖な日の丸の周りに黄色の縁取りがつけられていた。日本はそういう国なのである。
第三に個人的には、自分が生まれて人生の前半を過ごした米国、そしてその後死ぬまで過ごそうと心に決めた日本のいずれも私は好きである。両国の政府は軽蔑しているが、両国民ともに大好きである。ただ感じることは、政府がこれだけ無能なのは国民に責任があるということである。そして、私の人生の最初の28年間が幸せであり、またその後の28年間の人生においても幸せで成功したのは、私個人の努力や能力というよりは、むしろその間過ごした米国と日本がすばらしい国であったからだと信じている。
私はこれまで、2つの国のうちどちらか1つの国に忠誠を誓うよう要求されたことはないのをとても幸運だったと思うし、今後もそうあってほしいと願う。ただし、もしどちらか選べといわれれば私の答えは決まっている。会社を経営し700名の社員を幸せにする責任がある日本を選ぶと思う。
最後に、私は愛国心を持っているが、国のために自分が間違っていると考える戦争で戦うことは決してないだろう。私はこのことを約30年前に決意した。日本に来日した直後、米国政府からベトナム戦争への徴兵が近いという知らせを受け取った。もし徴兵されたらどうするかを私は1週間じっくり考えた。そして徴兵を受けたら、東京のアメリカ大使館に徴兵を拒否する旨を伝えようと決意した。これは徴兵忌避であり、逮捕され裁判にかけられ拘置されることを意味する。さらに自分の学歴および職歴から、徴兵されたとしても戦場に赴くのではなくワシントンでのデスクワークに割り当てられるであろうことも確信していた。しかし、私はベトナム戦争が間違いであると固く信じていたし、愛国心の表れとして私が祖国に対して果たすべき義務は、米国の指導者の間違った政策に反抗し、それに対する罰金を払うことであると考えたのである。
私のこの決意は尊敬するモハメッド・アリの真似であった。彼はベトナム戦争の時に徴兵を拒否し、米国政府に反抗した男である。アリは、徴兵されたとしても米軍兵としてボクシングを続けられることも、またベトナムで危険な任務に就かされることはないことも知っていた。しかし、彼はベトナム戦争は間違いであると信じていた。そして政府の間違った政策に反対する上で最も愛国心を示す行為は、ボクサーとしてのキャリアを諦め、さらに何百万ドルもの罰金を払うことだと考えたのである。私の場合は、結局、米国政府に徴兵されることはなかった。