国民の幸福のための財源
メモ『国民の幸福(1)、(2)』(No.206、 No.207)で、「日本国民の幸福を目標とする政府が行うべきこと」として私が挙げた例を読んだ読者の中には、そうしたことを行う財源や余裕など日本にはないと思われた方もいるであろう。そして、一体どうやってその財源を集めるのかと疑問に思われたに違いない。以下の表は、私が例示したことを日本政府が簡単に行えるということを裏付けるOECDからのデータである。この表は日本と残りのG7および、他のOECD諸国を比較したものである。
第一列は、日本の税収がGDP(国内総生産)に占める割合を示している。日本のGDPに占める税収は他のG7諸国と比べて20%、またOECD諸国と比べても20%低いことが、この表からわかる。
中央の列は、GDPに占める公的支出(政府の消費額)の割合を示している。日本政府の支出は他のG7諸国の政府の半分、また他のOECD諸国に比べて60%に過ぎない。
最後の列は、全労働人口に占める政府職員の割合を示している。日本の政府は他のG7諸国およびOECD諸国のわずか30%に過ぎない。
注)ここでいう政府には中央政府だけでなく地方政府も含まれる。
税収の 公的支出の 全労働人口に
国名 GDP比 GDP比 占める
% % 政府職員の割合 %
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日本 28.5 9.7 6.0
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カナダ 37.2 18.7 19.6
フランス 44.5 19.4 24.9
ドイツ 39.2 19.8 15.4
イタリア 41.3 16.4 16.1
イギリス 35.3 21.1 14.1
米国 27.9 15.6 13.4
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日本以外のG7諸国平均 37.6 18.5 17.3
日本対他のG7 0.8 0.5 0.3
(=28.5/37.6) (=9.7/18.5) (=6.0/17.3)
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オーストラリア 30.7 17.2 16.0
オーストリア 42.4 19.8 22.8
ベルギー 46.5 14.5 19.0
チェコ共和国 44.3 21.5
デンマーク 51.3 25.2 30.7
フィンランド 46.5 21.9 25.2
ギリシャ 41.4 13.8
ハンガリー 39.2 24.9
アイスランド 31.2 20.8 19.9
アイルランド 33.8 14.1 13.4
韓国 22.3 10.6
ルクセンブルグ 44.0 13.6 12.0
メキシコ 16.0 9.7
オランダ 44.0 14.0 11.9
ニュージーランド 38.2 14.4 22.1
ノルウェー 41.5 20.5 30.8
ポーランド 42.7 16.9
ポルトガル 33.8 18.5 15.3
スペイン 34.0 16.3 15.7
スウェーデン 49.7 26.2 31.2
スイス 33.9 14.3 14.0
トルコ 22.5 11.6
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他のOECD諸国平均 37.7 17.5 19.2
日本対OECD 0.8 0.6 0.3
(=28.5/37.7) (=9.7/17.5) (=6.0/19.2)
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この表から、日本政府が国家の目標を明確にさえしていれば、つまり日本国民の幸福を国家の目標に掲げてさえいれば、私が具体的な例を挙げて示したようなことは簡単に行えるとわかるであろう。GDPに占める税収の割合や公的支出をG7やOECD諸国並みに増やせば、あとはそれを何に使うかの問題である。
上記のデータから、結局政府自民党の誠実さ、および能力が問われることになる。
1. GDPに占める税収の割合が日本は他のG7やOECD諸国に比べて20%も低い。それにもかかわらず、なぜ日本政府はさらなる減税を行おうとしているのか。
2. 自民党はなぜ公的支出ではなく、個人消費を増やすことによって日本経済を活性化しようとしているのか。日本の個人消費はすでに世界でも最高レベルに達しているし、国民は個人消費にすでに満足している。公的支出のGDP比を他のG7やOECD諸国と同等の17.5%、あるいは18.5%にまで押し上げれば、日本経済は40~45兆円の支出増となる。現在の不況から脱出するにはこれだけでも十分なはずである。
3. 自民党はなぜ日本政府が大きすぎるとして、小さな政府を目指そうとするのであろうか。全労働人口に占める政府職員の割合は、他のG7およびOECD諸国と比較してすでに70%も低いのである。
これらの数字から、私の提案が無理難題ではないことがおわかりいただけるのではないだろうか。