No.215 デリバティブで2,000兆円以上の博打に興じる銀行

デリバティブで2,000兆円以上の博打に興じる銀行

9月3日付けの読売新聞によると、大手19銀行のデリバティブ(金融派生商品)取引額は97年3月末で総計2,094兆772億円に上っていたことが、2日の衆院金融安定化特別委員会の理事会に金融監督庁が提出した資料で明らかになったという。その資料によれば、取引額が100兆円を超えた銀行は8行で、経営不振で住友信託との合併に追い込まれている日本長期信用銀行のデリバティブ取引額は9番目に多い86兆2,204億円であった。国際決済銀行(BIS)によると、97年の全世界の市場残高(想定元本ベース)は約41兆ドル(約5,500兆円)に上る。デリバティブは本来、株式や為替などの取引で生じる損失を回避するために開発された高度な金融技術を使った金融商品であり、将来の相場の変動を予測して行う先物取引や、変動金利と固定金利を交換する金利スワップ取引、異なる通貨建ての債務を交換する通貨スワップなどを組み合わせるものである。少ない元本で大きな利益を生む取引が可能になる反面、読みを誤ると巨額損失が発生する恐れがある。

この記事から明らかなことは、日本の大手19銀行が国民から預かった預金で2,000兆円以上、すなわち世界のデリバティブ市場残高の約40%にも上る金額の大博打を行っているということになる。この博打の規模は、日本の個人金融資産を一瞬のうちにすべて消失させてしまう規模である。さらに言えることは、これら銀行が2,000兆円以上をデリバティブに注ぎ込み、博打に興じている一方で、その銀行の貸し渋りが原因で日本では過去最高の倒産や失業が起こっているということである。つまり、銀行はバブル時に行った博打の大失敗から何も学んでいないということである。デリバティブで2,000兆円以上の博打を行っている銀行に対して、今、政府自民党は公的資金を投入し、バブル時の博打で積み上げた巨額の借金から銀行を救済しようとしている。言語道断としか言いようがない。

また、同じく9月2日に金融監督庁が提出した資料から、大手20行が過去6年間に退職した役員に対して、総額855億円の退職金を支払っていたことが明らかになった。破綻した北海道拓殖銀行を含む都市銀行10行は役員1人に対して平均9,771万円、長期信用銀行3行は平均9,761万円、信託銀行7行は平均5,469万円の退職金を支払った。こうした実態が明らかになったことにより、経営不振の日本長期信用銀行に対する公的資金投入に関する政府案に、国民の反発が高まるであろうと読売新聞は結んでいる。(自民党の計画の中には、金融再生案として13兆円の公的資金の投入が含まれている。)

銀行は博打の負債を積み上げた張本人である役員に対して、855億円もの退職金を支払いながら、その博打のつけを国民の税金で支払わせようとしているのである。こうした実態を知りながら、それでも日本国民は政府自民党の長銀に対する公的資金投入計画を支持するのであろうか。これを許せば、日本経済を破滅に追い込む博打に興じている他の銀行に対しても、公的資金の投入が求められることになるのは間違いない。政府自民党に決して悪い前例を作らせるべきではない。

このメモの読者の方々には、次の選挙で自民党が再び大敗するのを待つのではなく、草の根的な行動をすぐにでもとっていただきたい。そのためには、もしあなたが私の意見と同じであれば、衆参両院のあなたの選挙区の国会議員、そして自民党本部に手紙を書くか、このメモに署名してそれを彼らに郵送してもらいたい。国会議員、自民党本部の住所は下記の弊社インターネットのWebサイトでも調べられるし、弊社にご連絡いただければ喜んで情報を提供させていただく。

また、このメモをあなたのまわりの人たちにも読んでもらって欲しい。そして皆が国会議員や自民党に手紙を出すか、このメモに署名してそれを彼らに郵送するように勧めて欲しい。

もし私がここで述べた意見に反対なら、是非知らせて欲しい。異なる意見を理解したいし、私の考えに間違いがあればそれを正したいからである。