No.236 クリントンによる長年の対イラク制裁は全面的に間違っている

 米国によるイラクへの空爆は、今回もイラクの査察受入れの譲歩により回避されました。米国のイラク制裁に対して、チャーリー・リースが『オーランド・センティネル』紙で痛烈な批判をしていますので、皆様にもお送りします。是非お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。

クリントンによる長年の対イラク制裁は全面的に間違っている

『オーランド・センティネンタル』紙
1998年11月22日

チャーリー・リース

 クリントンがイラクに課している殺人行為同様の制裁措置は間違っている。  

 まず、この政策には2つの目的があることを知っておくべきである。1つは経済制裁を理由にイラク産出の石油の輸出を禁止することにより、ここ10年間で最低レベルの石油価格がこれ以上下がらないようにすること。そしてもう1つは、嘘つきの徴兵忌避者であり、不倫揉み消しで偽証を行ったクリントンをいかにも大統領らしく見せることである。  

 イラクに空爆を行うことは道義的にも戦略的にも戦術的にも間違っている。

 道義的に間違っているのは、罪のない人々の命を奪うためである。なぜ戦略的に間違っているかというと、この制裁措置が逆にサダム・フセインを、あるいは彼が偶然殺されたとしても彼の政権を、より強力にし、すべてのアラブ諸国のアラブ人を怒らせることになるからである。それによってすべてのアラブ政府はより不安定になるであろう。戦術的に間違っている理由は、米国が10億ドル以上をこの政策に注ぎ込んでも何も得るものがないためである。

 イラクは化学・生物兵器を全廃したと主張しており、もし制裁が取り除かれれば、国連は継続して兵器査察を続けることが可能であるという。つまり、イラクが何をしても米国は制裁を解除するつもりはないとイラクは推断しているのである。

 ではイラクは本当に武器を隠し持っているのだろうか。私は隠していないと見るが、たとえ持っていたとしても、それはどうでもよいことである。現実に目を向けて欲しい。米国は過去50年間にわたり、ソ連が核弾頭や化学・生物兵器を使用することを抑止してきたではないか。その数はイラクが保持したいと望む核弾頭の何百万倍もの規模である。米国とソ連との間で戦争が起こればその過程で必ず自国も滅びてしまうために、核の使用は事実上不可能であったにもかかわらず、米国はこれまでソ連を核で抑止してきた。  

 だとすればなぜ米国政府の嘘つきたちは、人口約1,900万人の第三世界の国、イラクを抑止できないなどというのだろうか。米国の軍事力を持ってすれば、潜水艦たった一隻の兵力で、イラクの全国民の命を奪い去り、その国土を約30年間にわたり居住できない状態にすることも可能である。  

 サダム・フセインが狂人だからだろうか。彼は狂ってはいない。フセインは独裁者で、確かに荒っぽい行動をとるが、気が狂っているわけではない。湾岸戦争の時にも、イラクは化学兵器も生物兵器もまったく使用していない。これはフセインの政策で、彼は極めて理性的である。結局、湾岸戦争後7年間にわたり、米国はサダム・フセインを政権から引きずりおろすことはできなかった。

 イラクで死亡した子供たち50万人(国連の推定)は、イギリスと米国の経済制裁によるものである。またイラク政府によれば、150万人のイラク人が経済制裁の結果命を失っているという。  

 ヨーロッパの左翼判事の誰かが、クリントンとイギリスのトニー・ブレア首相に逮捕状を出すべきなのかもしれない。罪のない子供を50万人も殺害したことは、チリ政権の転覆を図った大人、4,000万人の命を奪ったピノチェトの人道的犯罪にも匹敵するからだ。  

 クリントンの政策がいかに破壊的な影響をもたらしているかは、大半の米国人にはすぐには見て取れないのかもしれない。外国人を殺害する米軍のテレビ映像に、自分を重ね合わせて喜んでいる多くの米国人には無理かもしれない。しかし、その報復を受ける時がいつか訪れるに違いない。  

 米国は世界において重要なこの地域を米国から遠ざけている。いかなるアラブ諸国の指導者も米国と味方だと思われれば、国民に暗殺されることにもなりかねない状況である。  

 遅かれ早かれ、恐らく今後数年のうちにイラク人は報復に出るであろう。その時命を失う米国人は、いったい何のために命を失うことになるのであろうか。社会全体よりも自己の政治的な利益のためにクリントンがとった政策、つまり石油会社に数セント余分に儲けさせるためか。

[『オーランド・センティネンタル』紙(1998年11月22日)より、
許可を得て 翻訳転載]