ここのところ日本のマスメディアは、米国経済の好調な様子を日本の低迷ぶりと対照的に大きく取り上げています。特に、日本の失業率が米国のそれを上回ったとして、日本人はさらに自信を喪失させられました。
今回は、こうした報道がマインドコントロールであり、事実が報道とは異なることを示す記事を以下に紹介します。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。
米国北西部では最低生活賃金に満たない働き口しかない
『ロサンゼルス・タイムズ』紙 1999年1月10日
タイムズ記者 グレッグ・クリコリアン
好景気といわれる米国において、北西部の4つの州について行った調査結果から、求人の約半数は、独身成人が最低限の生活を送ることすらできない賃金しか提供しておらず、また子供を2人持つ片親にとっての状況はさらに厳しいということが明らかになった。
最新統計である1996年の雇用データを基に行ったこの調査結果では、ワシントン、オレゴン、アイダホ、モンタナの4州では、就労年齢に達している人々に最低生活賃金以上の職が十分に提供されていないことが明らかになった。子供を2人持つ片親の状況は特にひどく、4州全体の求人数の72~81%は、片親家庭が公的な支援なしには必要最低限の生活すらできないような賃金しか提供されていない。
ワシントン大学北西部政策センターの研究員ポール・スターンは、「基本的にいえることは、好景気に見える米国経済だが北西部で見ると、実際には最低生活賃金以上を支給する職は不足している」
さらに4州のデータに一貫した傾向が見られることから、この調査結果は北西部だけではなく全米に一様に当てはまるとスターンは見ている。
この報告書は同政策センターと北西部4州地域組織連合との共同プロジェクトによるものであり、企業、政府、労働者、地域向けの戦略作りを目的とする3年にわたる研究調査の第一段階の結果である。今回は入手可能な最新データである1996年の雇用データを使用したが、スターンによれば当時は現在よりももっと好景気だといわれていたという。
主な調査結果
1) 4州平均の最低賃金は、独身成人1人が最低生活できる生活賃金の約半分にしかならず、片親と子供2人の場合に最低必要な賃金のわずか30%であった。最低生活が可能とされる生活賃金の額は、独身の大人1人の場合、最低がモンタナ州の時給9.02ドル、年間18,760ドル、最高はワシントン州で時給10.25ドル、年間21,322ドルである。片親と子供2人の場合は最低がアイダホ州の時給14.42ドル、年間29,995ドル、最高がワシントン州で時給16.86ドル、年間35,079ドルとされている。
2) 就労年齢に達する家族のいる世帯数と、独身成人1人の最低生活賃金以上を提供する働き口との差から、最低賃金以上を提供する職がどれほど不足しているかを見ると、アイダホ州では約58,000、ワシントン州では275,000であった。片親と子供2人の場合、その世帯数と最低生活賃金以上を提供する職との差は、モンタナ州では200,000、ワシントン州では1,00,000以上に達している。
3) 職を求めている人の数に比べ、最低生活賃金以上を提供する求人数ははるかに少ない。独身成人の場合、州によって数字は異なるが、最低生活賃金以上を提供する求人1人に対し、求職者が4~6人いる。子供2人の片親の場合、最低生活賃金以上を提供する求人1人に対し、平均で10~17人が職を求めていた。
700以上の職に関するデータベースを分析した結果、求人の多くは、最低生活賃金に満たない給料しか提供しないとスターンはいう。職種はレジ係、銀行の窓口担当、小売店の店員、清掃係、ビルの警備員、コック、ウェイター、ウェイトレスなどである。
「これらの職業が必要ないとか、あるいはファストフードで働く人に時給10ドルは支払うべきだと主張したいわけではない。しかし、こうした職業が経済の大部分を占めているにもかかわらず、そのほとんどが個人や家族を養えるだけの賃金を提供していないことは問題だと考える」
この調査結果から苛酷な現実が明らかになったが、スターンによれば報告書自体の評判は良いという。「調査目的の第一段階はこの問題について皆で話し合うことである」とスターンはいう。
「事業経営者は、労働者が十分な生活賃金を得ていなければ製品が売れないし、最低生活賃金を提供しなければ離職率も高くなるということを承知している」
[『ロサンゼルス・タイムズ』紙より許可を得て翻訳・転載]