No.271 称賛から憎悪の的へ:米国に何が起きたのか

 冷戦の終結は国際社会の地政学を大きく変えたにもかかわらず、米軍の世界配備はその後もまったく縮小していません。冷戦終了後の世界各地における米軍の駐留や軍事介入の戦略目的は、一体何なのでしょうか。米国は外交政策でリーダーシップをとり、それに関与することが安全保障および繁栄、自由の維持にとって最善の策であるとして、自国の軍事・外交政策を正当化してきました。しかし、実際は米国の軍事プレゼンスそのものが世界を不安定な状況にしているのです。例えば、石油資源へのアクセスを守ることを目的に、米国は中東に膨大な政治的・軍事的資源を配備し、イラクを爆撃したり、湾岸諸国に介入しています。しかし、石油がある限り誰が政権を握ろうと中東はそれを売らなければ利益を得られないわけですから、米国が石油を手に入れられない事態になろうはずもなく、石油へのアクセスが米軍配備の理由にはなり得ないはずです。

 以下のチャーリー・リースの記事は、中東に限らず全世界における米国の外交政策がいかに間違ったものであるかを説明しています。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。

称賛から憎悪の的へ:米国に何が起きたのか

 

『オーランド・センティネル』紙
1999年2月21日
チャーリー・リース

 米国を標的にしたテロリズムについて考える時、かつて世界中を自由に旅する米国人が浴びたのは称賛と少しばかりの嫉妬という時代があったことを思い出すべきである。米国が称賛されていた時代と、憎しみを買うことが多くなった今日と、一体何が変わったのか、考えてみる価値がある。

 米国が称賛されていた時代、それはジョージ・ワシントンの助言に従い、米国が外交関係においてどの国も平等に扱い、いかなる同盟関係にも関与せず、すべての国と友好および通商関係を求めた時代であった。当時、米国は共和国であって帝国ではなく、帝国主義的政府の失脚を求める国民を味方する発言をしていた。

 変化が起きたのは、南北戦争以後である。帝国となった米国の、最初の帝国主義的戦争は米西戦争であった。この戦争は端的にいうと、スペインの外国所有を意図的に批判することによって、米国がその領土を奪うという目的があった。そしてそれに成功した米国は、プエルトリコとフィリピンを獲得したのである。

 自由と独立を求める人々の願いを擁護するどころか、米国はそれを踏みにじった。そしてその直後に、ハワイ諸島も併合した。さらにコロンビアに対する反乱を扇動してパナマを独立させ、パナマの土地を一部奪ってパナマ運河を建設した。

 海兵隊の将軍、スメドレイ・バトラーが33年間の海兵隊時代を回想して次のように語っている。「当時の私は、大企業やウォール街の金融機関といったハイクラスの用心棒としてほとんどの時間を費やす、資本主義のための雇われ暴力団だった。国際金融機関ブラウン・ブラザーズのためにニカラグアの浄化を助け、米国の石油会社の利権のためにメキシコの治安を向上させ、米国の砂糖会社のためにドミニカ共和国に電気を引き、ハイチやキューバではナショナル・シティ・バンクが収益を上げられるよう両国の社会レベルの向上を助け、また中国では1927年にスタンダード石油が中国市場に問題なく参入できるよう後押しした」

 今日、米国はいまだに軍やCIAを、資本主義のための雇われ暴力団として利用している。米軍やCIAには、現在のように世界のいたるところに駐留する国家安全保障上の正当な理由は何もない。こうした帝国主義的な行動のすべては、米国がヨーロッパの内乱に巻き込まれた頃に拡大し始めたロンドンとニューヨークの金融枢軸に端を発している。もしその起源について興味があれば、歴史書をひもとかれることをお勧めする。

 しかしここでいえるのは、政治家は決して口にしないが、米国の政策そのものがテロリズムを作り出しているということである。テロ問題を解決するには、米国が政策を変えるしかない。米国はバルカン半島や中東問題に干渉し、そこに住む人々の生活を脅かすべきではない。米国企業と取引きする独裁者を支援すべきではないし、取引きしない独裁者の転覆を試みるべきでもない。

 事実、政治家やテロリズム政策担当官僚の発言は、あたかもテロリストは火星から舞い降りてきたのであって、テロリストになる原因などまったくないとでもいいたげな口ぶりだ。米国の政治家が国民に一番気づいて欲しくないこと、それは米国の政策がテロリストを生み出しているということなのである。

 今日、米国政府がテロリストと見なしているオスラマ・ビン・ラーデンの要求は何かというと、サウジアラビアからの米国の撤退であり、またイスラエルのパレスチナ人に対する米国の支援を止めることである。私はその要求に異存はない。米国には、中東国家への内政干渉を正当化する理由はまったくないからである。米国人にとって、唯一正当な利権は石油の購入だが、中東で誰が国家元首になっても米国に石油を売ることは間違いないだろう。しかし、中東がどの会社と取引きをするか、どのような条件を提示するかは、米国の正当な国益ではない。

 政治家を操っている人々が、自分たちの利権を守るために「米国の国益」をでっち上げているにすぎないのである。

[著者の許可を得て翻訳・転載]