今回も前回に引き続き『オーランド・センティネル』紙から、チャーリー・リースが書いたコソボに関する論評をお送りします。米国の政策を批判するものですが、新ガイドライン関連法案が国会で審議されている今、日本の行く末を考える上で有益な示唆を与えてくれるはずです。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。
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コソボが人類の危機などではないことをクリントンは知っていた
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『オーランド・センティネル』紙 1999年4月6日
チャーリー・リース
クリントンとNATO同盟国は人種差別主義者なのであろう。考えてもみて欲しい。内戦で2000人の死者が出たことが人道的危機であるという理由で、NATOは主権国家に対する前例のない、不法な攻撃を行うことを正当化し、空爆を行ったのである。ルワンダではツチ族の老若男女70万人が虐殺されている。だが、クリントンと人種差別主義者たちは言葉で非難するばかりで何もしなかった。私の計算によると、彼らにとってはヨーロッパ人一人の命は、黒人350人分の命よりも優るということになる。
米国の現政権は、奴隷制度に反対しながら白人ではなく黒人兵士を戦場に送った南北戦争当時の北軍指導者よりも、さらに悪質な人種差別主義者で構成されている。
私がこう主張するのは、政府の嘘を見抜くことが常に重要だからである。ユーゴスラビア空爆の真の理由が何であるのか私にはわからない。しかし、それが人道的危機によるものでないことだけは確かなのだ。同じような事件がこれまでに何度も起きており、その中には空爆以前のコソボの状況よりはるかに深刻なものもあった。かつては徴兵忌避者で反戦家だったクリントンが、リンドン・ジョンソン以来、最も爆撃好きな大統領になったのである。
今回の狂った戦争を支持するクリントンの理由付けには、さらにいくつかの矛盾がある。パレスチナ人が米国や、あるいは国連やヨーロッパに救いを求めるたびに、米国はこう答えてきた。「パレスチナ人とイスラエル人の紛争は当事者同士で解決すべきだ」。それならなぜ、アルバニアの分離主義者達に対しても、セルビア人との紛争は外部からの介入なしに当事者間で解決すべきだといわないのであろうか。
米国は空爆開始後、ヒトラーの亡霊やホロコーストを引き合いに出して、ユーゴスラビア連邦のスロボダン・ミロシェビッチ大統領を悪魔として攻撃し始めた。これはイラクの時に使われたシナリオとまったく同じである。しかし、奇妙なのは数年前にセルビア人が不正選挙だと抗議したとき、米国はそれを無視したどころか、イラン・イラク戦争の時に米国がサダム・フセインを支持したのと同様に、ミロシェビッチ大統領を支援していたのである。
ラビン故イスラエル首相は、ボスニアをホロコーストになぞらえる人々を叱責した。確かに、5,500万人の犠牲者を出した第二次世界大戦とコソボを比べるのは耐え難いし、ばかげている。
腐敗した米国政府の流儀では、世の趨勢の変化に合わせて日和見的に今日の味方も明日は悪霊となるのかもしれない。NATOが理由もなくセルビア人に浴びせている死、苦痛、破壊は、NATOの指導者や官僚すべてを呪わせるに十分である。彼らが自分達の行為を正当化する理由には特に嫌悪感を覚える。堂々とした暴君にすらなれないのだ。
しかし彼らは戦略上、重大な過ちを犯した。ソ連を制したはずの西側同盟国に、小国が敢然と立ち向かう映像が世界中で映し出されている。ロシア、中国、北朝鮮政府の軍事関係者は、その映像を見て喜んでいるに違いない。確かに大量の兵器が使われているものの、NATOの指導者の間には気概がない。彼らは現にセルビア人を恐れているのだ。
[著者の許可を得て翻訳・転載]