今回は、5月の訪米に合わせて、小渕総理大臣が『ニューヨーク・タイムズ』に投稿した記事と、それに対する私のコメントをお送りします。
日本の静かな改革
『ニューヨーク・タイムズ』(NYT) 1999年4月29日
小渕 恵三
NYT:日本は、多くの米国人が理解しているつもりの国とは違う国に静かに変わりつつある。我々は、21世紀の平和と繁栄にさらに貢献する国になるべく、自己変革を遂げている。これが、今週の私の訪米における中心的なメッセージになるであろう。
耕助: 21世紀の平和と繁栄に貢献する国に自己変革を遂げるというが、過去半世紀に、日本以上に平和と繁栄を享受した国が他にあっただろうか。また同時期、戦争の回数、国民の貧困化という点で、米国を超えた国があっただろうか。小渕の意図する変革とは、一体何なのであろうか。
NYT:かつて日本は、友好国であり同盟国である米国からの圧力により、変革の必要性を感じてきた。しかし今日、より大きな変化への圧力が日本内部から生まれている。
耕助: もっと具体的に述べて欲しい。なぜ米国が日本の友好国であり同盟国だと言えるのか。米国が日本の友好国、同盟国として、これまで行動したことがあっただろうか。小渕のいう変革を求める圧力をかけているのは、日本の誰なのか。
NYT:過去において日本を成功に導いた制度やプロセスは、もはや機能しない。それは重い足枷となって、われわれを抑えつけている。過去の成功の法則を捨て去ることは容易ではない。しかし我々は世界が変わったことに気づいている。市場主導型のより柔軟な経済を採用しない限り、日本の経済も技術も衰退する運命にあることに気づいている。
耕助: 過去の成功を導いた制度やプロセスがもはや役に立たないとなぜいえるのか。それが我々を抑圧する重い足枷になったのはなぜか。過去の成功のためのどの法則を捨て去るべきか、そしてその理由はなぜなのかを、もっと明確に説明してもらいたい。過去の成功の法則が時代遅れになったのは、世界がどう変わったからなのか。市場主導型のより柔軟な経済を採用しない限り、経済と技術が衰退する運命にあるのはなぜか、具体的に説明して欲しい。
NYT:我々は日本を衰退させるつもりはない。痛みを伴う構造変革が進行中である。かつて「終身雇用」制度を誇った日本の失業率は、現在米国を上回る。社会的安定のために、収益に関わらず労働者を雇用し続ける余裕はもはや日本企業にはない。つまり、失業率は日本の差し迫った経済問題の指標であるだけではなく、新しい経済への転換の副産物でもある。
耕助: ちょっと待って欲しい。誰の平和と繁栄のために、小渕は働いているのだろうか。痛みを伴う構造改革が進行中だというが、主人である米国に対しておべっかばかり使う政府自民党が、米国の命ずるままに日本国民に押し付けたもの以外、どのような構造改革が行われているというのか。これまで日本の平和と繁栄に寄与してきた終身雇用と社会の安定へのコミットメントを捨て、米国に社会不安と貧困をもたらした企業収益中心の考え方を、なぜ日本企業が採用しなければならないのか。確かに高失業率は日本の差し迫った経済問題の指標であるだけではなく、米国の家来である自民党政治家が、主人を喜ばせるために、日本の価値観や考え方、慣習を捨て去った結果生じた副産物である。
NYT:日本は銀行制度や金融構造も改革しており、このプロセスでもある種の混乱がもたらされている。日本企業は伝統的に行ってきた株式の持ち合いを解消し、過去からの企業関係を解いている。しかし、これによってGEキャピタルやメリルリンチなどの外資系企業には、日本企業を買収する機会が与えられる。我々はそれによってもたらされる新しい考え方やエネルギーを歓迎する。
耕助: 小渕を含む売国奴たちは、外資による買収で日本が混乱に陥ることを知りながら、ワシントンに政治献金を行うGEキャピタルやメリルリンチのような米国企業に日本企業を買収させる後押しをしているのである。
NYT:日本政府が行った減税を含む24兆円の緊急経済対策は、日本史上最大規模である。また日本は金融部門の信頼回復のために60兆円の予算枠をとった。現在の日本の不景気は、一部は心理的なものである。景気刺激策および構造改革が触媒の働きをして、国民の信頼を回復してくれるものと期待している。
耕助: 首相就任以来、小渕は、不正直にも、日本経済を回復させるふりをしてきただけである。実際にやったことは、銀行の博打による借金の返済と法人税および高額所得者減税のために負債を積み上げて日本の公債を過去最高、世界最高に押し上げただけである。小渕は景気回復を装いながら、実際には自民党自身が作り出した不況を盾に、自分とその仲間の当選を政治献金で支えた大企業や富裕者を優遇してきた。小渕が行ったことは、大半の消費者や労働者、労働者の多くを雇用する中小企業を助けるどころか、むしろ苦しめることであった。また過去最多の倒産と失業をもたらし、過去半世紀で最低のレベルに日本経済を低迷させた。
NYT:我々は経済の変化と再生に奮闘する一方で、アジア太平洋地域の平和、安全保障、繁栄に影響する重大な問題において、密接に協力を行ってきた。日本には多数の米軍基地があり、どの国よりも多額の資金援助を米軍基地に提供している。
耕助: 小渕は確かに、奴隷がその主人に献身するように、米国に協力をしてきた。米国が命じることすべてに従順に従っている。
NYT:日米両国は北朝鮮に対する政策で緊密に協調し、北朝鮮の核兵器の開発を阻止し、平和利用のための原子力開発を援助するべく、日本が約10億ドルの資金供与を行う。
耕助: 小渕が米国政府に対して行った「協調」政策は、モニカがビルにひざまづいたのと同じである。KEDOは完全に米国政府の発案で生まれたものであり、過去も現在もすべての采配を握っているのは米国政府である。日本の納税者に10億ドルを支払わせるよう小渕に命令したのは米国であり、小渕はそれに従順に従った。その結果、米国の納税者の負担はわずか1億1,500万ドルで済んだのである。
NYT:日本経済は中国を含む全東アジア経済の3分の2を占めるため、日本はこの地域の経済危機でひどい打撃を受けた諸国の支援に特別な責務を感じた。そのため、アジア経済への支援に、どの国よりも多い800億ドルを拠出した。日本の対外援助予算は、過去7年間にわたって世界最高である。
耕助: その7年間に、小渕は日本の公債を過去最大、そして世界最大に積み上げた。小渕と自民党の仲間は、海外に金をばらまき、その分、日本の借金を増やしている。
NYT:つまり、私がいいたいのは、日本が世界で応分の負担をしたいと考えているということである。日本は世界の平和と安定の推進に励んでおり、それは米国と共有する総合的な目標であることは疑いない。
耕助: ロバの群れのように、小渕と自民党の仲間は、主人から課せられた重荷は何でもかつぐ。いや、ロバの世話役として、日本国民に米国の主人が命令する重荷を何でも背負わせるといった方が正しいかもしれない。
NYT:現在の経済的困難を克服すれば、日本はより活気ある、柔軟な社会に生まれ変わるであろう。米国と深く共有する価値観、つまり自由、民主主義、人権の尊重の支持において、さらに強い立場に立つことができるであろう。
耕助: 自民党政府の間違った統治により、日本は盲目的に米国の主人に追従する、臆病な奴隷の国になってしまったようだ。