No.281 アメリカ・インディアンから見た「民族浄化」:「涙の旅路」を忘れるな

 米国の先住民であるアメリカ・インディアンが、NATOの空爆を受けるセルビア人に自分たちの受けた苦悩をなぞらえ、Truth in Mediaに次にような投書を送っています。米国国内の反応として興味深いとともに、米国の要求に屈する日本人も耳を貸していただきたい意見だと思います。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。

アメリカ・インディアンから見た「民族浄化」:「涙の旅路」を忘れるな

 

 ユーゴスラビアへの空爆において、米国の役割を最も端的に表わす言葉は「偽善」かもしれない。クリントン政権が攻撃を正当化するために持ち出すセルビアの大罪といわれるものは、すべて合衆国政府がアメリカ先住民に対して長い間行ってきた、そして今も続いている大罪と同じである。

 合衆国政府は建国以来、自分たちが占領したアメリカ大陸に住む先住民族を根絶あるいは同化させる政策をとってきた。細菌戦争、老人や女子供の大虐殺、生まれた土地からの強制移住、荒れた居留地への隔離、それらが米国の政策であった。

 米国人は、セルビア人がアルバニア系住民を追い出しているというが、米国はアメリカ大陸の南東部から文明化された5部族(北米インディアンの5つの部族、Cherokee、Chickasaw、Choctaw、Creek、Seminoleの呼称)を強制移住させたことを忘れている。この追放は後に「涙の旅路」(米国政府の移動命令に抗しきれずCherokee族インディアンが族長に率いられて、ジョージアの故郷からオクラホマに移動した苦難に満ちた旅(1838~39年)を指す。途中約4分の1が命を落とした)と呼ばれるようになった。アメリカ・インディアンは自分で持てるわずかな物だけを手に住居を追われた。死者や死に行く者たちを道の両側に残して西へ追い立てられた。住居に残ろうとした者や逃亡を企てた者は処刑された。彼らが追い出された領地は、かつて合衆国政府との協定によって一定の自主権を保証され、永遠にインディアン主権の土地とされていたことも忘れてはならない。しかし、米国人がその貪欲さから先住民の土地を奪う気になると、その協定はたちまち効力を失った。

 世界の国々は大蛇の毒牙におびえるように、米国が侵略を続けるのを恐れおののきながら傍観しているが、いずれ自分たちの主権が剥奪され、攻撃される時がくるかもしれないことを忘れている。ローマ帝国や大英帝国がかつてそうであったように、アメリカ帝国は軍事力と通貨の力に物をいわせ、世界の国々をその支配下に置くまでになった。かつてすべての帝国が他国の主権を奪いつくした結果、それらの国々が帝国の侵略に対して蜂起するという状況を招いた。今のアメリカ帝国でさえ、当時世界でもっとも強大であった大英帝国に対して反旗を翻すことから誕生した。そして、米国の勝利は、大英帝国に愛想をつかす他国の協力があって初めて成し遂げられたものであった。

 自国のやり方を他国に強制する合衆国の政策は、それに屈服する国家を分断し弱体化させるだけである。アメリカの規範を受け入れた国の国民を待ち受けているのは、金融危機や増加する組織犯罪、不平不満だけである。

 合衆国政府は、世界平和や人権といった言葉を盾に他国を侵略している。他の諸国はもうこの欺瞞に気づいてもいい頃だ。国際社会はユーゴスラビアの小国の勇気ある先導に習って、もう限界だというべきである。そしてその誇り高い小国をむしろ支援するべきだ。

 国際社会は米国政府に対し、他の主権国家に内政干渉する前に他の国に要求していることを国内の先住民に対してまず実行するよう要求する時がきた。また、アメリカ・インディアンたちは、自分たちの祖先を虐殺した米国の軍隊に加わりその侵略に手を貸すのをやめ、自分たちの権利のために立ち上がる時である。そして、アメリカ主導の威嚇に遭っている者はすべて団結して立ち上がり、それに対抗する時がきた。学校のいじめっ子でも、自分がいじめた者たちが束になってかかってくればおとなしくなるということを、誰もが心に留めておくべきだ。

 東部先住民族の一員
 チャールズ・バッファロー

[Truth in Mediaより許可を得て、翻訳・転載]