No.296 ウォール街の内情の暴露本『大破局』

 今回は、モルガン・スタンレーの元社員がウォール街の内情を暴露した『大破局』(徳間書店刊)という本を紹介します。デリバティブについて書かれたこの本は、モルガン・スタンレーをはじめとする投資銀行(証券会社)が行っているデリバティブの多くが、ただの賭博に過ぎず、買い手の無知に付け込むものであることを、素人向けに説明しています。読者も是非一読されることをお勧めします。皆様からのご意見をお待ちしております。

ウォール街の内情の暴露本『大破局』

 この本は1993~1995年、著者のパートノイがウォール街、おもにモルガン・スタンレーにおいてデリバティブを販売していた時の個人的な体験をもとに書かれている。パートノイは退職後ワシントンで弁護士をした後、現在はサンディエゴ大学で金融学の助教授を務めている。

 1993~95年、モルガン・スタンレーのデリバティブ・グループでは、パートノイを含む70人ほどで総額約10億ドルの手数料を稼ぎ出した。1人当たり平均1,500万ドルである。マネージング・ディレクターは40歳そこそこで数百万ドル、同世代のプリンシパルも100万ドル近く、30代半ばのヴァイス・プレジデントは約50万ドル、典型的なアソシエートは30歳前後で数十万ドルの年収を得るという。40歳を大幅に越えても退職せず、くびにもならなかった者は、モルガン・スタンレーで「養老院」と呼ばれる部門で「半引退」の管理職を命じられるという。

 デリバティブは世界最大の市場となり、その規模は1996年には推定55兆ドルで、これはアメリカの全株式の2倍、全債券の10倍以上にあたる。そして今もなお、デリバティブの損失は増大し続けている。

 デリバティブの一般的な定義は、その価値が株式や債券のような他の証券に連動し、そこから派生した金融商品であるが、著者はもう1つの定義として、突如として無価値となり、その直後に『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の第一面に現れる金融的な仕掛けだとも書いている。

 デリバティブには2つのタイプ、オプションとフォワードがある。オプションとは将来何かを買う、あるいは売る権利である。買う権利が「コール・オプション」で、売る権利が「プット・オプション」である。もう1つのタイプ、フォワードは、将来何かを買う、あるいは売る義務である。この義務は取引所で取引きされるならばフューチャー(先物)と呼ばれる。オプションとフォワードは株式や債券、さまざまな市場指数、天候まで含む、様々な金融商品に関して取引きされる。すべてのデリバティブはオプションとフォワードの組合せである。デリバティブ市場の活動の多くは、異なるオプションやフォワードを組合せ、それらをパッケージで売ることにかかわっているが、最も難しい点は、それぞれの構成部分にどのような価値があるかを計算することだ。失敗は破滅を招きかねない。1992年のデリバティブ市場の全体の規模は40兆ドル、外貨市場だけでも1日に約1兆ドルの取引きであった。

 モルガン・スタンレーは1935年9月16日の開業以来、優秀な世界的投資銀行であったが、それを創設したのは人間ではなく、1つの法律だった。1920年代の投機によるバブルや29年の株価大暴落、そして大不況に対応して、議会は33年にグラス・スティーガル法を制定した。銀行業と証券業との混交を危惧する大衆に応えたもので、アメリカの銀行にどちらか一方の業務を選ばせたのだった。民間銀行でニューヨーク証券取引所のメンバーだったJ.P.モルガン&カンパニーは商業銀行としてとどまることを選び、何人かのJ.P.モルガンの社員は分かれて証券会社を設立した。こうしてモルガン・スタンレーが誕生した。

 パートノイは著書の中で、デリバティブを扱う会社やセールスマンは、自分のためにできるだけ速く、できるだけ多く稼ぐことを目的に商売をしていると繰り返す。彼らは自分たちが儲けるために顧客を搾取する。顧客を助けようが傷つけようが、それは副次的なものでしかない。パートノイは、以前勤めていたバンカーズ・トラストのある悪名高いセールスマンの言葉を引用している。「人々をさりげなく誘惑しておいて、すってんてんにする」。また、あるやり手のセールスマンが、外国為替のリスクを隠して保険会社に8,500万ドルのデリバティブを販売し、莫大な手数料を稼いだ話も記されている。デリバティブを購入して数ヵ月後に元の価格の何分の一かに下落したことを知った保険会社の経理担当部長と話をした後、セールスマンはそれを誇らしげに「客のツラを引っぱがしてやったんだ」と語ったという。 投資銀行は法律用語で書かれた否認条項を利用して、手際良く儲かるトリックをやってのけることができる。つまり、顧客に損をさせ、ときには訴えられることを前もって知りながらも、顧客からむしり取る。会社の観点からすれば、大切なのは、これらの取引きで真っ先にできるだけ多く稼ぐことだ。たくさんの手数料を取り、時限爆弾を仕掛け、現場から遠ざかり、待つのだ。もちろん、爆発のあとでデリバティブの被害者は訴えるだろうが、会社が先に十分な金を稼いでいれば、訴訟でもうまく身を守ることができ問題はないだろう。パートノイと同僚が売ったデリバティブについて合法かどうか話していた時、ある男がいった。「この商売でうまくやるためには、犯罪者になるしかないさ」。するとほとんど全員がそれに同意したという。

 この本の題名『大破局』の原題、“FIASCO”は、モルガン・スタンレーがそのエリートのデリバティブ・トレーダーたちのために催すスポーツ・クレイ射撃大会の略称である。このハンティング旅行はビジネスの訓練として考えられたものだという。生きている鳩やクレイの鳩を撃つのは、複雑な金融商品の散弾が、金持ちで人を疑わない人間鳩を引き裂く、実生活でのより楽しい猟のための最高の訓練となったのである。上得意が挨拶に立ち寄ったときは、たとえ彼らがどんなに好きでも、デリバティブを売りつけ、必要ならばいつでも彼らの頭をぶっ飛ばす用意ができていなくてはならないのだ。90年までに投資金融は変わった。ウォール街は今や単なるジャングルではなくて、現代金融戦争の複雑な中枢となった。多くの危ないデリバティブは「核廃棄物」と呼ばれた。

 著者が設計を手伝った特に複雑なデリバティブについて、彼はこういう。「ぼくたちでさえもその価値を計算できないのに、バイヤーたちがどうしてこの取引きを理解することができるだろうか」。

 パートノイは、デリバティブの買い手には基本的に2つの種類があると発見したという。それを彼は「チーターズ(騙し屋)」と「未亡人と孤児」と呼んでおり、熱心なデリバティブ・セールスマンだったら相手はどちらでもまったくかまわない。「デリバティブはこれからも投資銀行にとって莫大な利益をもたらし続ける。それはデリバティブの買い手であるファンド・マネジャーが株主からリスクを隠すためにプレミアムを支払うからであり、また他の買い手は、自分が何を買っているか完全に理解することがないためである。2種類の買い手には、モルガン・スタンレーのような会社に莫大な手数料を払い、その多くはデリバティブで大損したかこれからするということ以外、ほとんど共通点がない。

 会社または政府の規制によって外貨に賭けることができない投資家も、デリバティブには賭けることができる。なぜなら、一見ボンドのようであり、そこに潜む賭けの本質は覆い隠されている。単純で安全なボンドのように見せかけて組合わされた、複雑な為替の賭けであり、これらはチーターズによって悪用されることがあった。デリバティブは特に保険会社の血迷ったマネジャーにとって魅力的であり、彼らの多くは当局や上司に知られることなく外貨の賭けをしたがった。デリバティブはそんなチーター型のマネジャーが不安定な外国為替の先物やオプション市場でギャンブルすることができるように作られていた。

 しかし、デリバティブを全部理解するだけの訓練も経験もないタイプの買い手は、デリバティブの説明書を見て、まったくのボンドだと思い込み、複雑な公式を見逃し、ボンドの元本の支払いが為替レートの変化にリンクされているという事実を理解できない。これらの買い手を著者は「未亡人と孤児」と呼ぶ。彼らはセールスマンたちにとって格好の餌食だ。5年物のデリバティブを「未亡人や孤児」の買い手に売ることは、元金の返済について5年間(ウォール街では1人の全キャリア)心配しなくてよく、しかも買い手がうまく賭けてお金を儲けるチャンスもそこそこあるのだ。 セールスマンは売ることにしか関心がなく、あとに及ぼされるダメージなど構わない。すべてのデリバティブ・セールスマンは、取引きがときには爆発し、顧客の中には火だるまになる者もいることを知っている。もしも損失が本当にひどいものとなったら、いつでも彼は会社を辞めることができる。危険で高収益のデリバティブをたくさん売ったという実績があれば、次の職を見つけるのは簡単だからだ。

 モルガン・スタンレーのような会社が、自分たちが作ったデリバティブの格付けのために、どうやってムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズのような格付け機関に金を払うかについても著者は述べ、私企業がその格付けをもらうために金を払うということは、読者には驚きかもしれない、と記している。多くの人々は格付け機関は中立・公正だと考えるかもしれない。以前は特定の債券の発行について、発行者に無料で情報を提供していたが、20年前から、発行者の債券についてどのような格付けを与えるか投資家に知らせるために、発行者から料金を徴収している。料金は3万ドル以上で、大規模で複雑な取引きはさらに高くなる。S&Pもその評判を維持しなければならないため、取引きによっては格付けを買うことができないものもある。

 モルガン・スタンレーがメキシコの銀行が帳簿をごまかせるようにと作ったPLUSというデリバティブについて、パートノイは次のように記している。最も驚くべき点は、投資基金やそれを購入する企業が株主や投資家たちに、その格付け以外の投資の性質について、いかにわずかな説明しかしなかったかということだ。その結果、多くの投資信託のオーナーや年金生活者や株主や、ウィスコンシン州の住民でさえ、彼らが所有している基金や企業が買おうとしているものについて、どんなものかまるで知らなかった。PLUSノートによって、ファンド・マネジャーの中には、投資家にその基金のメキシコでの持ち高を隠すことができた者もいる。格付けの高い米国債しか買わない低リスクであるはずの基金に、ペソ建て債券で裏付けされているPLUSはメキシコへの投資を可能にした。これによってウィスコンシン州でさえ、メキシコ・ペソに投資を行うはめになったのである。あなたの退職年金のポートフォリオに短期のAAマイナスのボンドとして名を連ねているPLUSノートが、実際はメキシコのペソを裏付けとするインフレ・リンク式の、バミューダの免税で保護されている会社が発行したデリバティブだと知ったらどうするだろうか。たぶんあなたが気づく頃には、すでに手遅れで、金をなくした後だろうから、できることといえば怒ることくらいであろう。

 デリバティブで最初の重大な損失が公表されたのは、1994年4月12日だった。アメリカ第三位のグリーティング・カードメーカー、ギブソン・グリーティングズ社が、2,000万ドル、プロクター&ギャンブル( P&G )社が1億200万ドルの損失を出した。P&Gのデリバティブ取引きはあまりにも巨額で、P&Gの株を買った投資家は洗剤の売上よりも、アメリカとドイツの金利低下に賭けていたことになった。また、自動車メーカーのビッグスリーについてあるアナリストは、その金融専門子会社ゆえに「製造会社の仮面を付けた銀行」と呼んだ。あるクライスラーの子会社は、15億ドルの金利スワップと、5億3,500万ドルの通貨スワップを所有し、クライスラーもさらに10億ドルを所有していた。グッドイヤー・タイヤ&ラバー・カンパニーさえ、5億ドルのデリバティブをポートフォリオに持っていた。著者はデリバティブで巨額の損失を出した企業を列挙し、こう記す。「こういう会社の株を買う時、あなたは何を買おうとしているのか。製造会社なのか、それともデリバティブ投機会社なのか。その違いはどうしたらわかるのか?」

 それにしても政府はなぜ、デリバティブを規制しようとしないのか。パートノイは、過去2回の選挙期間だけでも、議員たちは銀行や投資会社や保険会社から政治献金として推定1億ドルも受け取っていたと説明する。

 パートノイは第8章すべてを割いて州と郡政府によるデリバティブの損失について記している。まず米国最大のフィアスコ(大破局)といわれるカリフォルニア州オレンジ郡では、財務官ロバート・シトロンが17億ドルのデリバティブの損失を出し、郡は破産した。この損失はオレンジ郡の全市民1人当たり1,000ドル近くに上った。メリルリンチが手にした手数料は約1億ドル、そのうち900万ドルはデリバティブの大部分を売った、1人のセールスマンの手にわたった。著者はオレンジ郡以外にも、州や地方自治体、学校、年金基金、宗教団体などが、複雑で謎めいたインヴァース・フローティング・レート(逆変動金利)デリバティブで金を失ったとしている。

 パートノイは、金持ちの個人客が税金の支払いを免れるためにエクイティ・スワップを使っていることにも触れている。エクイティ・スワップは、通常は個人と銀行の間の契約で、個人はある株について後に入る収益を銀行に支払うことに同意し、銀行は個人にキャッシュを、しばしば最初に支払う。エクイティ・スワップは証券ではないため、最近までまったく規制がなく、国税庁も含めて、誰に報告する義務もなかった。裕福な個人は、エクイティ・スワップを契約することにより、売らない条件の株を「結果的に」売ることができる。投資銀行は彼にキャッシュを払い、のちに彼は銀行に株に対するトータル・リターン(配当プラス株価)を払う。彼は株を売ったのと同じようにキャッシュを受け取るが、技術的には株を売っていないことになる。キャピタル・ゲインを得たことを認めず、つまりキャピタル・ゲイン税を払うことなしに、時価で株を売りたいと思ったら、誰でもエクイティ・スワップを使うことができる。エクイティ・スワップは、個人がまだ裏付けとなる株を所有しているので、売却とは見なされない。結果として、個人は「いかなる税も払わずに」株式での利得を現金化できる。近年、アメリカの裕福な金持ちや企業からのキャピタル・ゲイン税収がゼロに近かったのは、ほとんどエクイティ・スワップのせいであった。

 この本はまた、2章にわたって日本について言及している。毎年、桜の花の季節が近づくと、日本のデリバティブ・ビジネスも開花する。日本のクライアントたちは2月のある時期にいつも、その1年間に被った損失を取り返そうとする。そして最後の瞬間の利益を生み出すため急襲をかけるとき、いつもデリバティブ・フィーバーに捕われるのだ。投資家の中には、もし当たれば損を帳消しにできるだろうと、大きな賭けをはる者もいる。また、帳簿の手品を使って前年の損失を次の年に回し、不成績を隠そうとする者もいる。日本の投資家たちは年々、ローンや投資をするにあたって驚くほどまずい判断を示すようになり、絶えず損失を隠していなければならなくなる。

 パートノイは、1995年2月27日に起きた、創業233年のイギリスの名門銀行の倒産についてこう記す。ニック・リーソンという28歳のシンガポール支店のトレーダーがわずか数日間に、ベアリングズ社がとても払えないような巨額の損失を積み上げたために起こった倒産であった。ベアリングズ社の焦げ付きによる数百万ドルの損失にいま直面している不幸な貸し手は誰か。もちろん日本人だ。ベアリングズ社の倒産はある不可避な連鎖反応を引き起こした。日本の金融機関は損失を早急に埋合せるため、あるいは隠すために、必死でデリバティブを買いにかかった。日本の機関投資家は数週間の間に何億ドルもの利益を生み出せる金融商品を必要としていた。著者の上司はしばしばいっていたという。「我々は死にもの狂いのクライアントを愛し、彼らを見ると興奮する。我々は必死の人からたくさんの金を稼がせてもらった」。日本のバイヤーたちは死にもの狂いの人々だった。そして彼らにぴったりの取引きを持つモルガン・スタンレーにとって歴史上最も有利な取引きだったという。それは素早く見せかけの利益を生み出すことができた。あらゆる投資の損失を隠すのに使えた。東京では、モルガン・スタンレーのクライアントたちが、歴然たる詐欺を働いているようだった。日本の投資家による明白な欺瞞に満ちた取引きであった。そのいかがわしい取引きは1992年の初めに、何社かの日本のクライアントが大きな損失を経験した直後に始まった。彼らは差し迫った年度末を懸念しモルガン・スタンレーに、損失を隠すために何か手っ取り早く利益を生み出す方法はないかと聞いた。日本の企業は、デリバティブや何かクリエイティブな帳簿付けを使って、魔法のように悪い年を良い年に変える方法がないか知りたがった。日本の会計基準は緩やかで、日本の銀行やトラスト会社は、人為的な利益を示す取引きを作り出すことができれば、損失を何年でも、いや何十年でも隠し通せるであろうことを知っていたのだ。日本の証券会社はアメリカよりずっと進んでいて、長年にわたり金融的な詐欺を手がけ、みごと成功していた。アメリカでは詐欺的な金融活動は責任を追及され、時には犯罪ともなるが、日本では日常茶飯事であり、ごく最近までは罰せられることもなかった。しかし日本の最大手の投資家たちは、どれほど切羽詰まっても、もう財務的詐欺を犯すために日本の証券会社を使いたがらなかった。その1つには、日本の証券会社が関与している場合、当局が彼らのしっぽを捕まえる恐れがあるからだ。投資家は信頼性と、取引きを隠す安全な避難場所を求めて、日本のいかがわしい同類に代わるアメリカの銀行を求めていた。日本の投資家がアメリカの銀行を捜し求めた、より差し迫った理由は、機密保持だった。投資家たちは、国税庁の目から取引きを隠す虚偽の「利益」を生み出すのを誰に手伝ってもらうにせよ、信用できなければならなかった。大蔵省は日本の証券会社を急襲できたが、アメリカの銀行には捜査権を持っていない。東京の銀行業界は、ある複雑な企みを遂行する必要があり、当局に捕まりたくなければ、行くべきところはただ1つ、モルガン・スタンレーしかなかった。パートノイは、いかにモルガン・スタンレーがAMIT(アメリカン・モーゲージ・インヴェストメント・トラスト)という、日本の投資家のために虚偽の利益を生み出すための、最も効果的な手段であるデリバティブを作ったかについて、本書で詳しく説明している。モルガン・スタンレーの東京支店はたっぷり金を稼いでいて、いくつもの最も怪しげなデリバティブ取引きの本拠となっていた。日本での取引きはしばしば、経済的には無意味であった。日本企業はデリバティブを、規制を回避するためや虚偽の利益を作り出すために使っていた。これらの取引きは、著者自らをも汚いものに感じさせ始めたという。ほんの少し道徳感が兆しただけでも、もはやデリバティブを売るには向かないことの印だと分かったという。

 パートノイは結論として、デリバティブは、金融の歴史における基本的テーマ、つまりウォール街がメイン・ストリートを騙すことを示す、最も新しい例だという。数千年前に貨幣が誕生して以来、より多くの情報を持った金融の仲介者は、情報の少ない貸し手や借り手を利用してきた。デリバティブ市場が拡大するにつれて、それはより不安定で危険なものとなった。それと同時に、投資銀行のロビイストたちは議員に対し、デリバティブは基本的に「ヘッジ」(危険回避)と「リスク減少」のために利用されるのだと主張して、デリバティブの規制を減らすよう説得してきた。現在の行く手ははっきりしている。金融サービス業界は、規制を避けるためにロビイストや政治献金に何千万ドルも支払い続ける。デリバティブは何百人もの投資家を餌食に何十億ドルもの損失を生じさせ続け、名声を傷つけ、人生を狂わせ、銀行通帳を空にし続けるだろう。そしてウォール街は、デリバティブを規制しなくてはならない絶対的な理由もないと主張し続けるだろう。