日本のメディアは米国の好景気ぶりを連日のように取り上げ、米国民すべてが豊かな生活を送っているかのような幻想を作り上げています。しかし実際は、以下の記事が示すとおり、一部の富裕者がますます豊かになっているに過ぎないのです。最上位1%の米国人家庭の資産が、下位95%の総資産額を上回るというのが米国の実態です。また平均値がいかに事実を偽るものであるかがこの記事から読み取れるはずです。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。
数字が示す貧富の差:平均に達していない典型的米国人
(Too Much, Spring 1999より)
2つの質問がある。その1。経済的に見て、「平均的な」米国人家庭は最近どのような状況にあるのか。その答えは「とてもすばらしい」となる。最新の数字による平均的な米国人家庭の持つ資産は、持ち家を除いてなんと17万6,200ドル(約2千万円)で、1983年から22.2%も増えている。
さて、続く質問その2。「典型的な」米国人家庭は最近どうなっているか。その答えは、経済的に見て「まったく良くない」。「典型的な」米国人家庭の資産は、わずか1万1,799ドル(約142万円)で、1989年から10%減少している。
これは一体どういうことだろう。米国人家庭の純金融資産は上がっているのか、下がっているのか。本当はどちらなのだろうか。米国人は経済的に好転したのか、悪化したのか、明快な回答が欲しい。
では、単純に示そう。米国人の家庭は「平均」では申し分がない。なぜかというと富裕層が非常にうまくいっているからである。1995年、ニューヨーク大学の経済学者、エドワード・ウォルフは、米国で最も金持ちの最上位家庭1%の資産は平均で、なんと787万5,000ドル(約9億4,500万ドル)だと語った。そしてこの最上位家庭1%の資産を総計すると、米国人家庭の最下位から95%の財産をすべて合わせたものをさらに上回る。
もし、これらの裕福な家庭も含めて全米国人の平均を算出すれば、その平均値はかなり高くなる。しかしこの平均値は、米国の典型的な家庭がどれほど資産を持っているかは表していない。典型的な米国人家庭がどれほど裕福か、またはどんなに貧乏かを知るためには、「中間値」と呼ばれる統計値を見なければいけない。
統計学者が、中間値となる家庭の資産を計算する時の問いは単刀直入で、最上位と最下位の間で、ちょうど真ん中にくる家庭の資産はどの程度か、となる。この中間値にくる家庭が、実際、米国のもっとも典型的な家庭である。全家庭の半数はこの中間値の家庭よりも多くの富を所有し、また半数は少ない資産しかない。1997年、この中間値の家庭の金銭的な財産はわずか1万1,700ドル(約140万円)で、これは1989年よりも1,300ドル(約15万円)以上少ない。換言すると、この10年間で典型的な米国人家庭は経済的に後退しているのである。今度、誰かが1990年代型の経済的繁栄について米国の不平等を擁護するのを聞いたら、このことを思い出して欲しい。