日本人の友人に尋ねたところ、昨年末の「砂漠の狐」以来、英米によるイラク空爆について日本ではほとんど何も報道されていないようです。日本だけではなく英米両国でも、ユーゴ空爆で空爆が日常化したせいか、ほとんど大きなニュースにはならないと、以下の記事でも触れているとおりです。この記事をお読みいただければ、イラクへの空爆がすでに500回以上におよび、それが実際どれほど大きな被害をもたらしているか、おわかりになると思います。皆様からのご意見をお待ちしております。
隠れた湾岸戦争:
空爆500回、死者は100人以上
『インデペンデント』紙、1999年8月22日
ロバート・フィスク
これは隠れた戦争である。今年、イラクに対して米英は少なくとも500回の空爆を行った。死者は100人を超え、戦闘機の出撃は1,000回以上に及んだ。それでもほとんど大きな記事になることはなかった。もしかすると我々は、NATOのユーゴスラビア爆撃によって免疫ができてしまったのかもしれない。
連合軍のジェット機は7月にもイラクを爆撃した。イラク人によると7月29日には8人が死亡、30日には9人が死亡したという。しかし、欧米の新聞では、米英によって行われる爆撃は、数行の記事にしかならない。ワシントンで政治論争が湧き起こることもなければ、英国下院でそれが疑問視されることもない。イラクへの空爆は日常と化し、容認される戦争となったのだ。
1999年最初の5週間でイラクに対して70回の空爆が行われ、昨年のクリスマス前の「砂漠の狐」作戦以上の被害を負わせた。そして、直接的な脅威でなくてもイラク軍事施設を攻撃するという新しい交戦規則が米英両国空軍に出されると、もはや爆撃はまったく問題視されなくなった。しかし、それから8ヵ月がたったものの、サダム・フセイン大統領の悪党政権は相変わらず難攻不落のようである。
空爆の事実には疑いの余地はない。2月1日、米英の航空機がイラクのアル・アマラとタリルのミサイル基地と2ヵ所の「通信施設」を爆撃した。2ヵ月間で一番激しい爆撃の1つとなった3月1日、「レーダー照射を受けたため」として米国の戦闘機がモスルにある通信施設、無線中継施設、対空陣地に対し、2,000ポンドと5,000ポンドのレーザー誘導爆弾を30以上投下した。
イラクの石油パイプラインが爆撃されると、バグダッドにある国連の「オイル・フォー・フード」プログラムの指導官、ベノン・セヴァンはそれを非難した。
3日後、イラクはバスラ近くの農場に爆弾が投下されたと発表した。3月14日には連合軍のスポークスマンが「連合軍の航空機への脅威となるイラクのレーダー」に対して不特定多数の爆弾を投下したと発表した。
NATOがユーゴスラビアを爆撃している間、イラクへの爆撃はつかの間の小康を得た。4月5日、ユーゴへの爆撃が最も激しい時期にイラクへの攻撃が再開された。
国防総省のスポークスマンは、米国のF-16CG戦闘機、米海軍のF/A-18ホーネット、英空軍トーネードが、バグダッドの南110マイルにある地対空ミサイルを攻撃し、その一方で他の航空機がアルサルマンとヌカイエブ近郊の通信施設を爆撃したと発表した。それから2週間もたたないうちに、イラクによればバグダッド南の地対空基地を航空機が爆撃し、2人が死亡したという。
米英による攻撃は、ロシアとフランスの国民を激怒させたが、ほとんど報道されることもなく、また国民からの反対もなかった。
国連によると、2月にバスラの住宅地区で米軍AGM-130ミサイルが爆発し17人が死亡、約100人が負傷したことにフランスはひどく困惑したという。死者のうち6人は女性、10人は子供だった。
ペンタゴンのスポークスマンは、その2ヵ月後のユーゴへの爆撃で決まり文句となった、「民間人を標的にはしていない」と述べた。
2月4日、米国人が、英米軍機が40のミサイル砲台を破壊したと訴えたが、米国議会および英国下院からは、一言の異議も出なかった。
5月8日、イラクの「民間および軍事目標」に18の爆弾が投下され、3人が死亡したとイラクが発表した。5月12日、イラクはニネヴァーの古代都市の周りにある農民の住居に米英の航空機から地対空ミサイルが投下され、モスルの民間人地区で12人が死亡したと発表した。5月の末までに、米国はモスル近くのイラクの空防施設へ記録的な攻撃を行った。
サダム大統領がユーゴ大統領、スロボダン・ミロシェビッチよりもさらに残忍であることを考えると、ユーゴでの付帯的な損害をすべてミロシェビッチのせいにしたように、イラクで非戦闘員の被害者が出れば米国政府が同じ呪文を唱えるであろうことは目に見えていた。
そして、7月19日、米国国務省スポークスマンのジェームズ・ルービンはこう述べた。「民間人に負傷者が出ることを避けるために、あらゆる手段を尽くしている。しかし、これらの爆撃すべての最終的な責任はサダム・フセインにある」
一方で米国は、イラク同様いつものように事実を歪曲する手段に出た。8月5日、海軍少将のクレイグ・クイグレーは、今年になってイラクに対して行った「攻撃」はわずか108回だと述べた。イラクの防空司令官のシャヒーン・ヤシン将軍は、米英軍機は1万977回「出撃」したと述べている。
もちろんここでの落とし穴は、クイグレー少将が記録した「攻撃」回数は、少なくともその10倍の個々の空爆から成りうることであり、「出撃」回数には、航空機が一度の任務で行う輸送や燃料補給、監視なども含まれるということである。しかし過去8ヵ月の数字を計算すると、米英軍機はイラクに対してそれぞれ500回以上の爆撃を行っていることになる。
英国の有名な防衛雑誌、『エアクラフト・イラストレイテッド』と『ジェッツ』が、昨年12月の砂漠の狐作戦でさえ、サダム大統領の政権転覆にはまったく効果がなかったと記していることにも留意する価値はある。また『エアクラフト・イラストレイテッド』は、攻撃の25%は標的から逸れており、連合軍の航空機の目標とされた大量破壊兵器の中で大きな打撃を与えることができたのはわずか1つだけで、連合軍の顔を立てる以上のことは何もしていないと記している。
それにしても、イラク爆撃などして、我々は一体どうしようというのだろうか。