今回は、読者からいただいた質問と、それに対する私の回答をお送りいたします。
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安保がなくて日本を守れるのか - 読者からの質問と回答
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読者:セミナーおよび著作物は私にとって大きなショックでした。というのも、我々は普段何かおかしい、おかしいと感じながら仕事をし、生活をしているのですが、その狂っている原因が、日本の指導者がアメリカの無理難題をいとも簡単に受け入れてしまったことにあったと、気づかせてくれたからです。また、日本政府は、銀行の不良債権処理に大量の公的資金(税金)を使いましたが、今度は大企業が抱えている大量の過剰な設備を買い取ろうとしているとか。こんなことは、決して許されることではありません。が、しかし、我々一市民の力でこれを変えることができるのでしょうか。半ば、あきらめにも似た感じがしております。
回答:私は、日本政府が日本国民を裏切っていると確信しています。日本政府は売国奴ともいえる政治家によって支配され、米国政府や日本の主要経済団体のメンバーである大企業に日本という国を売り渡しています。もちろんすべての官僚や政治家が悪人だとは思いません。しかし、国家や国民に正直かつ献身的な官僚、政治家はごく少数で、大半は日本の価値観や歴史に疎く、弱く怠惰な人間なのです。確かに真の悪党は少ないかもしれませんが、後援者たちの金および権力によって支えられているため強い力を持っています。一方、正直で献身的な官僚および政治家を支えるのは、彼らが公僕として奉仕している国民だけです。しかもその国民の約60%は政治に無関心で、選挙で投票することさえしないため、彼らの力は弱いのです。また大半の官僚や政治家は、自分の弱さ、無知、怠惰ゆえに、骨抜きの状態にあります。読者の疑問通り、これは一市民の力で変えることはできません。問題の解決には、多くの国民の力が結集されなければなりません。国民が社会に対し積極的に関心を持てば、すべての問題が解決できます。しかし、自分一人くらいならとその努力を怠れば、その分問題解決に必要な国民の結束力が弱まり、社会を汚し蝕んでいる少数の腐敗した悪人たちの力をますます強めることになるのです。
読者:安保条約問題も思い切って破棄してしまえば、アメリカの呪縛から解放されると思います。ただ、現実の問題として日本の自衛隊がどこまで日本の国を守ることが可能なのかわかりません。
回答:日本が自国を守るためには、虚構に過ぎない日米安保条約を破棄するだけではなく、同時に自衛隊を強化しなければなりません。さらに、食料やエネルギーの自給率を劇的に増加させる必要があります。以下のことを考えれば、こうしたことも簡単にできるということがわかるはずです。
(1)日本政府は、在日米軍基地を維持するために年間5,000億円を負担しており、これは在日米軍兵士1人当たり1,400万円にもなります。日本国民1人当たりの社会保障関係費が13万円であることを考えると、実に100倍以上の費用を米軍兵士1人に対して支払っています。
(2)日本の税収(中央政府だけではなく地方政府の税収も含む)のGDPに占める割合は、29%であるのに対し、日本を除くOECDおよびG7諸国の税収のGDP比は38%です。また、社会消費のGDP比はOECDやG7諸国の20%に比べて、日本は10%に過ぎません。税収および社会消費への支出を、他の先進国並みにまで引き上げれば、食料、エネルギー自給率の増加も含め、日本の防衛を充実させることは、簡単にできるはずです。
読者:もう1つの心配は、アジアの近隣諸国が、あの太平洋戦争の悪夢を思い起こし日本への警戒心を増大させたりはしないかという点です。
回答:日本政府が太平洋戦争に対して正しく、率直な評価をしない限り、日本は近隣諸国と良い関係を築くことはできないであろうし、日本国民は政府に対し不信感を持ち続けることでしょう。日本政府が300万人の国民の命を犠牲にしながら、未だに国民に対し謝罪もしていなければ責任もとっていない、ということの方が私には問題のように思えます。
読者:話は変わりますが、「日本の個人消費は限界に達し、産業革命も終了した」、「経営には、ふさわしい大きさがある」ということも理解できました。経済原理での生き方をほどほどにして、人が癒されて、つぶれない経営をしていこう。また、安心のできる人間尊重の経営、日本人らしさを求めていく経営を目指したい。
回答:このような発言を聞くと大変嬉しくなります。そのような経営を目指されれば、精神的にも大きな満足感が得られ、それが幸福や健康にも寄与するはずです。
読者:そして、アメリカの一部の国民の利益ではなく、日本の国民の幸福のためを考えてくれる指導者が今まさに待ち望まれているのです。
回答:ただ単に待ち望むのではなく、一般国民一人ひとりがそうした指導力を提供しなければいけません。政治家や官僚は国民の代表に過ぎません。信頼できる代表者を選挙で選ぶと同時に、信頼を裏切る政治家がいればその地位から引きずり降ろすこと、それが国民の重要な務めなのです。
【 資本の逃避を招いたのは何か? 】
読者:累進課税について質問があります。今、アメリカで貴殿が主張するような累進課税の政策に転換したらどうなると思いますか? 私はほとんどの投資家(つまりお金を持っている人)は税率の低い国にお金を移すと思います。
回答:米国が国家として、国民、そして企業にとって最も繁栄した時代は所得税の累進性が最も激しく、相続税が最も高かった1935~1975年でした。ですから、米国がその強さや国民の繁栄を取り戻す最善の方法は、1933年からフランクリン・ルーズベルトが実施し、ロナルド・レーガン、ジョージ・ブッシュ、ビル・クリントンによって1981年以降廃止された政策を復活させることだと信じて疑いません。
この時代、すなわち所得税が最も累進的で、相続税が最も高かった時代に、資本の逃避が起こったとは聞いたことがありません。累進的な所得税や高い相続税は過度に貪欲な利益追求を減退させる働きがあります。米国がそうした税制を再び採用すれば、他の多くの国々もそれに追随するはずであり、資本逃避の可能性はそれによって低くなるはずです。さらに国家は、資本の逃避を防ぐために、資本を統制し、また税制を強化することができます。実際、米国の場合、海外に居住する米国民に対しても所得税を課し、脱税すれば逮捕するという政策をとっています。
読者:近年、日本のお金がすべてアメリカに渡ってしまったように(アメリカは金利も高く投資環境としては最高の場所でした)、投資家はより儲かる国へとお金を移すでしょう。
回答:日本のお金が米国に流れたのは、日本がビッグバンにより資本規制を諦めて金利をゼロに近づけ、日本の金融機関に、預金者や保険契約者など顧客から預かったお金を海外で運用するよう、強制とまではいかなくとも奨励したからに他なりません。
読者:日本の不景気の原因は色々ありますが、金融ビッグバンによって、海外にお金が逃げてしまったことも大きな理由の1つでしょう。そして今、お金の流れは日本に向きつつあります。政府は不動産に対して税率を下げる政策を発表し(貴殿とまったく逆の方向ですね)、投資家に(お金持ちに)より有利な環境を整えて、ようやくそれが実ったといったところでしょうか。つまり今のグローバルな社会では、もはや一国が最大多数の幸せを守る政策をしたところで無駄だと思うのです。良くも悪くも今は自由になった。人も物もお金も世界中駆け巡る世の中になった。だから投資家は自分の利益が最大に得られるところを探し、そして投資家はどんどんお金を儲けていく。違いますか?
回答:日本にお金が流れ始めた理由は次の2つではないでしょうか。まず第一に、米国からの圧力に屈した日本政府が、日本の金融機関に対し、資産を投げ売りして外国人投資家が破格の値段で買えるようにすることを勧めた。第二に、外国人投資家が、リストラで手っ取り早く収益やキャピタルゲインを得ることを狙って、ビッグバンによる資本の逃避で弱体化した日本企業を買収しているからだと考えます。その結果、多くの日本国民が生活の糧を得る職を失い、失業率は毎月過去最高記録を更新しています。事実、99年9月3日付けの『日本経済新聞』には、対日直接投資の急増について、以下のように記されています。
「海外からの日本への直接投資が急増している。国際収支統計によると、今年1~6月期の対日直接投資は計1兆2,287億円となり、年間ベースで過去最高だった98年の4,179億円を早くも上回った。日本企業の大型買収が相次いだことが背景にある。今年前半は、外資系企業による日本企業の大型買収や資本提携が相次いだ。3月には仏ルノーが日産グループに6,430億円出資する大型資本提携に踏み切った。また英通信大手のケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W)は6月半ばまでに国際デジタル通信(IDC)の株式公開買い付けを実施。約552億円の資金を投じている」
読者:ところで話は変わり、アメリカはかつての日本のような国に変わりうると思いますか? もしあなたがアメリカの大統領になって、政策を決められるようになったとしたら、アメリカの貧富の差はなくなるでしょうか? 私はそう思いません。今、私が大きく感じるのは、アメリカ人と日本人は価値観が本当に違うのではないか、ということです。本質的に日本人は草食動物から、アメリカ人は肉食動物から進化したのではないでしょうか。アングロサクソンは基本的に競争を好む集団なのではないでしょうか。
回答:米国が日本のような国になろうとする必要はありません。そうではなく、米国が最も良かった時代に立ち返ろうとすべきです。私の見るところ、トーマス・ジェファーソン、アンドリュー・ジャクソン、フランクリン・ルーズベルトの3人の大統領の時代が、それぞれ短かったものの米国の古き良き時代であったと思います。私は会社の代表取締役であり、今はそれ以外の仕事をしたいとは思っていません。上に記したように、フランクリン・ルーズベルト時代の改革を復活させるだけで、米国の貧富の差は大幅に縮小されるはずです。