No.339 読者からのご意見とそれに対する回答

新年明けましておめでとうございます。本年も昨年同様よろしくお願い申し上げます。

今回は読者からいただいたご意見と、それに対する私の回答をお送りします。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。

読者からのご意見とそれに対する回答

読者:大量消費社会の終焉では欲しい商品が本当に少なくなっています。ほとんどのものは揃っているし、あとは贅沢品が欲しいだけですが、なくても済むものばかり。広い住宅などは欲しいものですが日本では難しいのが現状です。

回答:  日本の人口密度は米国の13倍であり、他の先進国と比べても広い家を構えるのは確かに難しいものです。しかし、社会消費の内容と量を改善すれば、小さな家でも快適に暮らすことは可能です。通勤ラッシュ時になぜ家畜のようにすし詰めの電車に乗らなければならないのか。中央政府の機能を地方に分散させれば、東京の人口も分散するはずです。また仕事に柔軟性を持たせれば、同じ時間に同じ場所へ通勤しなければならない人間の数を削減することもできます。生活を快適にするためにできることはたくさんあるはずです。

読者:社会消費の増加に関する議論について、税金がうまく使われていないことは本当に腹立たしい。政治家や官僚の感覚はマヒしています。しかし、これが現代の日本を舵取りしている世代の限界と考えます。

回答: 「財政破綻は高齢化が原因ではない」(No. 330)で取り上げたように、税金の最大の無駄使いは国家債務の返済に使われる国債費です。今や国と地方の長期債務残高は600兆円、GDP比120%に達しています。その債務の返済に、国債費として19.83兆円、1999年の政府歳出の24%が使われているのです。それと比較して、社会保障関係費は16.1兆円に過ぎません。

国債費      社会保障関係費
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(兆円)  歳出比   (兆円)  歳出比
―――  ―――   ―――  ―――
1960年   0.03    2%     0.19    11%
1965年   0.02    1%     0.54    15%
1970年   0.29    4%     1.15    14%
1975年   1.04    5%     4.03    19%
1980年   5.31   12%     8.26    19%
1985年  10.22   19%     9.83    18%
1990年  14.29   22%    11.55    17%
1995年  13.22   19%    14.55    19%
1999年  19.83   24%    16.10    20%
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[出所:大蔵省主税局]

1999年度の歳入の内訳を見ると、税収は約47.1兆円です。その42%にもあたる19.83兆円が、過去の借金の返済ともいえる国債費に充てられているのです。

読者:米国への従属をやめるべきです。日本もベビーブーマーはアメリカを目標に育ったので無理もなく、私自身少し前まではアメリカ至上主義でした。しかし、よく考えると様々な社会問題はアメリカから輸入されたものではないでしょうか。テレビ、競争社会、マスコミ他、様々なことは金崇拝、資本主義のたまもので、経済的には豊かになったものの精神的には多くの人を退廃に導いています。

回答:  ここで読者が述べていることの、1つを除いたすべてに賛成します。その1つとは、競争社会です。競争とは良いものであり、必要なものだと私は考えます。日本には常に競争があり、それによる恩恵を受けてきました。日本はその競争を社会の利益になるよう規制してきたのです。政府による公的規制、様々な形の談合を通じての民間の規制などがその良い例です。問題は日本が今、その規制を緩和していることにあり、「自分さえよければ」という形の競争を促進し、強者に弱者を搾取させると同時に、社会の利益となる良い競争を、米国流の弱肉強食型の熾烈な競争に変えている点にあります。

読者:最近、能力主義を採用する企業が増えてきました。能力主義で、今まで以上に給与が増加するのであれば、問題ないのですが、やはり、企業では人件費の予算が決まっているため、従業員全員がやる気を出して、今まで以上の成果を出したとしても、全員の給与がアップすることは望めないでしょう。限られた予算の範囲内で給与を奪い合うようなことになれば、人間関係も難しくなり、やる気もなくなってしまうにちがいありません。

回答:  能力主義を導入している企業は、社員の給与を引き上げるよりも、いかに削減するかを考えて能力主義を導入しています。また、能力主義を導入すれば、読者が指摘しているように、企業目標の達成に向かって協力するよりも、限られた人件費の予算を奪い合うことになりチームワークが乱れ、生産性の低下は確実です。

読者:入社当時から能力主義を理解した上で入社してきたのであれば、若い間に稼いで蓄え、将来に備えることも可能でしょう。しかし、若いうちに年功序列の会社に入り、給与以上に働き、後々のことを考えて頑張ってきた者に、能力が下降気味になってきたところで能力主義を導入するやり方や、リストラで解雇するような考えには納得がいきません。

回答:  同感です。終身雇用を前提に入社した社員に対しては、会社は終身雇用を保証するべきです。能力主義の採用を明確にした後雇った社員であれば、終身雇用は保証しないと企業が発表したとしても不誠実ではないでしょうが、終身雇用の前提で雇った社員にそれを撤回するのは不誠実であり、不正直だと思います。

読者:企業は不景気対策として、経営者、従業員の残業をカットする、またボーナスの支給額を抑える等の対策をとっています。また、従業員だけではなく、経営側の方でもボーナスを20%カットする等、皆、我慢しているような状態になっています。しかし、ここで問題なのは、年収が500万円ほどの社員と年収が数千万円の経営者、あるいはつつましい生活をしている者と、ある程度富裕な者とでは、カットされたパーセントや額だけでは計れない違いがあるように思います。

回答:  私は、英米の階級闘争が日本に到来しつつあると感じています。金持ちや権力者が自分の富や権力を使って、その他大勢を犠牲に自らを富ませるというのが、英米型の階級闘争です。以下、米国の実態を示す統計を、「富の移動(1)~(4)」(No.311~No.314)から抜粋します。

◇ 最も裕福な上位1%の米国人が所有する富は、下位95%の米国人が持てる富の総額を上回る。
◇ 1983年から1995年に、最も裕福な上位1%の米国人の所有する富は17%増加した。また、その次の裕福な4%の米国人の持てる富は1%増加し、残る95%の米国人の所有する富は減少した。
◇ 1989年から1997年の間に、最も裕福な上位1%の米国人は株式収益の43%を手にした。次の裕福な9%の米国人は、株式収益の43%を手にした。残りの90%の米国人が手にした株式収益は14%に過ぎなかった。

ビル・ゲイツが所有する資産は、米国人口の45%にあたる1億1,250万人の米国人の富の総額に等しい。そしてこれは、グアテマラ、エルサルバドル、コスタリカ、パナマ、ホンジュラス、ニカラグア、ベリーズ、ジャマイカ、ボリビア、以上の国々のGDPの総額を超える。
◇ 最も裕福な上位1%の米国人の富(世帯の正味資産)の総額は約9億円であり、その次の裕福な4%の米国人の総額は約1.3億円である。下位20%の米国人世帯は負債が資産を上回る。
◇ 1977年から1994年において、裕福な上位1%の米国人世帯の税引き後の所得は72%増加し、次の19%は25%増加した。下位60%の米国人世帯の税引き後の所得は減少した。
◇ 1994年における裕福な上位1%の米国人の税引き後の所得は4,300万円で、下位80%の米国人世帯の所得の10倍以上であった。
◇ 米国人の13%にあたる3,300万人が、米国政府が規定する貧困線(1人当たり8,183ドル、4人家族で1万6,276ドル)以下で生活をしている。
◇ 80%の米国人の実質平均賃金は、1973年以降減少し続け、現在は1973年当時の賃金より6%から12%低くなっている。

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