No.340 貸し渋りとGDPの関係

日本全国における貸付残高の推移とGDPの関係について調べたところ、両者が比例関係にあることがわかりました。以下に私の分析をお送りしますので、是非お読み下さい。

貸し渋りとGDPの関係
日本は今、出血状態にあると考える。この血とは人間の血液ではなく、経済の血液ともいわれる資金のことであり、その流出が止まらない状態にある。資金を血液にたとえるのは、それが国家の経済において、人間の臓器にあたる各部分がうまく機能するよう必要な栄養を供給するからである。経済において資金は、エンジンや他の機械装置にとっての潤滑油と同じような働きもしている。大量出血が人間の体を衰弱させるのと同様に、また潤滑油が大量に漏れ出せばエンジンがきしむのと同様に、多くの資金が流出すれば経済は収縮する。

ビッグバンは日本経済に大きな穴を空け、資金流出の道を作ると同時に、日本経済を弱体化させた。日本政府がビッグバンを撤回し、海外への資金流出、あるいは出血を食い止めない限り日本経済は衰弱し続けるであろう。

以下の表の列(F)が示すように、日本全国の銀行の貸付残高に占める日本のGDPの割合は一貫して90%(0.9)であり、このことから日本のGDPと日本の銀行の貸付残高が比例関係にあることがわかる。つまり、銀行の貸付残高が増加すればGDPも増加し、貸付残高が減少すればGDPも減少するのである。

さらに列(A)と列(B)が示すように、銀行の貸付残高は1996年~1997年には、ほぼ一貫して53兆円であった。しかし、1998年4月1日のビッグバン開始直前の1998年1月以降、ビッグバンにより日本国民の預金を米国やその他、最も高い金利を支払う場所ならどこへでも自由に還流できるようになると、銀行は日本国内の貸付残高を減らし、日本国民や企業から預かった預金を国内ではなく、海外に投資し始めた。

また列(E)は、国内の貸付残高総額が1998年1月を境に、いかに急激に下がったかを如実に表している。1998年12月までの1年間で、銀行は25兆円も貸付残高を減少させた。この金額は1997年のGDPの約5%に相当する。貸付残高を減らした結果、GDPは1997年の488兆円から1998年の478兆円に減少した。1998年1年間で銀行が貸付残高を2%削減した結果、GDPも同時期、同じく2%減少している。

1997年末に比べて、1999年10月末の日本の銀行の貸付残高は57兆円も減少している。1999年1年間の毎月の貸付残高は、前年度比で平均27兆円、5%減少している。したがって、GDPと貸付残高の動きが連動していることを考えれば、1999年のGDPは、前年比5%減の453兆円になると予測できる。

また、日本のGDPが減少し続ければ、それに伴い倒産件数や失業率も上昇し続けるということも予測できる。日本国民がビッグバンを撤回しようという政府を選挙で選ばない限り、倒産や失業増に付随して、自殺や犯罪、麻薬中毒などの社会問題も増加することになるかもしれない。

(A)    (B)   (C)       (D)   (E)  (F)
年/月  銀行  前年度  前年度   1997年  GDP   貸付残高に
の貸付   からの  からの    12月以降      GDPが占める
残高  減少額  減少割合  の減少額       割合
(5業態)
兆円   兆円    %     兆円   兆円

1996.01  535                           0.9
1996.02  534                           0.9
1996.03  537                           0.9
1996.04  529                           0.9
1996.05  527                           0.9
1996.06  526                           0.9
1996.07  528                           0.9
1996.08  529                           0.9
1996.09  530                           0.9
1996.10  526                           0.9
1996.11  526                           0.9
1996.12  533                           0.9
1996年平均 530                      490   0.9

1997.01  535     1     0%               0.9
1997.02  533     1     0%               0.9
1997.03  535     1     0%               0.9
1997.04  529     0     0%               0.9
1997.05  526     0     0%               0.9
1997.06  525     1     0%               0.9
1997.07  527     1     0%               0.9
1997.08  527     1     0%               0.9
1997.09  528     3     1%               0.9
1997.10  523     2     0%               0.9
1997.11  526     0     0%               0.9
1997.12  533     0     0%               0.9
1997年平均 529    1     0%           488  0.9

1998.01  533     1     0%      (0)       0.9
1998.02  530     3     1%      3        0.9
1998.03  527     9     2%      7        0.9
1998.04  516    13     2%      18        0.9
1998.05  515    12     2%      19        0.9
1998.06  513    12     2%      20        0.9
1998.07  515    12     2%      18        0.9
1998.08  515    12     2%      18        0.9
1998.09  513    14     3%      20        0.9
1998.10  506    17     3%      27        0.9
1998.11  505    21     4%      29        0.9
1998.12  508    25     5%      25        0.9
1998年平均 516   13     2%           478  0.9

1999.01  509    24     5%      24
1999.02  508    22     4%      26
1999.03  506    21     4%      27
1999.04  489    27     5%      45
1999.05  487    28     5%      47
1999.06  484    29     6%      49
1999.07  484    31     6%      49
1999.08  482    33     6%      51
1999.09  481    32     6%      52
1999.10  478    28     6%      55
1999.11  476    29     6%      57
1999.12
1999年平均 489    27     5%           453

出所:経済統計月報(日本銀行)