日本が1月22日に開催したG7蔵相・中央銀行総裁会議に先立ち、会議後に発表する共同声明に「円高懸念の共有」を盛り込むようG7諸国に働きかけると同時に、円高阻止での協力を求めているということを聞いたニューヨーク在住のエコノミスト、マイケル・ハドソンが以下のような見解を述べていますので、是非お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。
「円高懸念の共有」表明をG7諸国に求める
マイケル・ハドソン
「円高懸念」を盛り込んだ共同声明は、声明以上の効果をもたらす見込みはない。なぜなら、円を強くしているのは日本の政策そのものだからである。その上で円高阻止の協力を他国に求めるのは、要するに、政府と大蔵省が招いた政策の不始末の後片付けをそれらの国々に頼むことにほかならない。
円高傾向は日本が自ら招いた異例の状態によってもたらされている。ビッグ・バンは外国人投資家の乗っ取りに対して日本経済を無防備にし、また銀行は株式の持ち合い解消を促された。これによって米国投資会社や海外の企業買収家が日本企業の筆頭株主になったり経営支配権を獲得する、つまり事実上のM&Aが可能になったのである。
これらがどのような影響をもたらしているかというと、日本の不動産を狙うハゲタカ・ファンド、買収資本や株の投機資金が米国から流入し、日本の株や不動産、企業を買いあさっている。外国資本が日本の不動産、企業、株式の買収を実際に行うためには、必然的にドルを円に換金することになる。また、株式市場の売り手たちも(銀行や他の機関投資家/個人投資家)株式の売却で出た余剰ドルを円に替えて為替差益で運用しようとする。ドルの集まった日銀の選択肢は、何もせずに円に対する需要増が円高につながるのを傍観するか、あるいはドル買い介入を行い、買ったドルで米国債を購入することで米国政府に貸し付けるかということになる。
実際問題として、2つ目の選択肢は円の為替レートを押し下げる働きをするが、このプロセスの反対側では、米国人が自分の所有する米国債を日本人に売却し、その金で日本の株式や不動産を購入している。なぜなら米国債を購入し、自国の政府の負債を支えるよりも、日本の不動産や株式投資を行った方が、より多くの資本利得と利回りを得る可能性が高いからである。
日本には、検討されていないが、もう1つの選択肢がある。それはビッグバンを撤回し、「日本国民のための日本」を宣言することである。そして日銀は次のように言明すればよい。「日本も国際収支が赤字になれば、同じ状況に陥った他の国が行うのと同様、日本の財産である資産を売却する。しかし、今の日本はそうした状況からはほど遠く、国際収支の赤字改善のために日本の資産を売る必要はまったくない。日本の問題は、誰もが日本企業や産業を買収したがっているが、売却してもその利益の有効な使い道が見つからないことにある。そこで日本は、他の国から買いたいものが見つかるまでは、海外からの日本への投資を禁止する。そして日本人は自国の資産を手放さない。実際、日本は米国債を売却し、米国政府への融資残高を減らし、その売却益で日本の国債を償還し、日本の労働者(すなわち消費者)の税負担を少しでも減らしたいと考えている」
海外からの外国資本の流入がストップすれば、株式市場と不動産市場が沈滞するであろうが、そうなっても日本は動揺することはない。米国債の売却で得た資金で、米国人に売った株や不動産を買い戻せばよい。市場が低迷しているので、売却時よりも安い価格で買い戻すことができるであろう。現実問題としては、これはできすぎた話であろうか。