今回は、米国の金権政治についての記事をお送りします。米国の金融業界および健康管理業界が巨額の政治献金を行い、それぞれの利益を優先するよう議員に働きかけたという事実が、政治献金額とともに以下の記事に書かれています。
前半部分にある昨年11月に成立した金融改革法案は、金融恐慌時代から銀行、証券、保険の兼業を禁止してきたグラス・スティーガル法の規定を60年ぶりに廃止するというものです。日本に金融改革をあれほどまでに強く求めてきた米国は、自国では銀行や証券業界の兼業を禁じるグラス・スティーガル法をごく最近まで維持していたという事実に改めて驚くと同時に、これによって米金融業界では再び巨大合併が加速することになるため、日本への影響もさらに強まるのではないかと懸念しています。米国の金融業界は、こうして米国の政治家を買収することにより自国内の規制緩和を求めると同時に、米国政府による日本政府への圧力を通じて米企業の利益を優先させようと、日本市場の開放と規制緩和を求めていることは周知の通りです。今後、その圧力はさらに強まることが予想されます。
私は、こうした金権政治は簡単に解決できると信じています。賄賂にあたる政治献金を企業や個人が支払いたいと考えたり、また政治家がそれを受け取りたいと考えないよう、企業や個人の所得、相続に対して累進性の高い関税をかければよいのです。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。
米国の金融改革法成立に見る金権政治
AP通信、1999年12月24日
ジョナサン・D・サラント
1999年、米国金融業界は1億ドルを使って米議会に大恐慌時代の規制を撤廃させ、銀行、証券、保険会社の兼業を認めさせることに成功した。1999年上半期には、健康管理、保険、一般企業の連合グループが、管理医療プラン(特に雇用主の医療費負担を抑制する目的で、 特定の患者集団の医療を特定の医師集団に請け負わせる健康管理方式)に対する新たな規制に反対するため、3,000万ドルを費やした。
1999年の米議会会期中、健康管理と金融改革問題は主要な議題であり、この法案の影響を最も受けることになる各種業界は、この年、ロビイ活動および政治献金に何百万ドルもの資金を投じた。「巨額の金を注ぎ込んだ人々は、合衆国憲法制定者がまったく意図しなかった多くの利益を手にした」と、選挙資金規制法の主要提唱者、コネチカット選出の共和党下院議員、クリストファー・シェーズは述べる。
大恐慌時代に作られた銀行、保険、証券会社の合併および競合を禁じる規制を撤廃する法案を成立させようと、金融業界は1999年、議員1人当たりに187,000ドルを費やした。これは、インターネット・コンサルティング会社「パブリック・ディスクロージャー」と、メディア組織の研究を行う元ジャーナリストのグループ「選挙活動研究グループ」が発表した数字に基づく。
AP通信が「選挙活動研究グループ」のデータをコンピュータで分析したところ、米国議員の中でこの金融改革法案を支持する議員が金融業界から受けた政治献金の額は、反対者が受けた献金の額を大幅に上回っていた。ロビイ活動の費用および政治献金の数字は、1999年第2四半期まではすべて公表されており、また第3四半期についても、一部の政治活動委員会(PAC)(企業/組合などが、自分たちの利益を高めてくれそうな候補者の選挙運動資金を調達/献金するために結成した団体)がすでに数字を発表している。
最終法案を支持した上院議員は、1999年1月1日から9月30日までの間に、平均38,000ドルの政治献金を金融業界から受け、一方、法案反対者が受けた政治献金は平均わずか6,000ドルに過ぎなった。下院議員については同時期、金融改革法案支持者が17,900ドル、反対者が6,700ドルを受け取った。
「これだけ巨額の政治献金を少数の人々が提供し、それが残り大多数の国民の利益を損なうことになったのは、1996年の通信法の成立以来である。この金融改革法案そのものが、政治献金改革の必要性を訴えている」と、ニューヨーク選出の下院民主党議員、モーリス・ヒンチェイは語る。
そんなことはないと主張するのは、金融改革法案支持者の1人、アイオワ州選出の共和党議員であり、下院金融委員会委員長を務めるジェームズ・リーチであり、「この金融改革法案は、現代の金融法案の中で最も国民保護の要素が強く、金融近代化へのあらゆるアプローチの中で最も国民全体の利益を反映しており、特別利益団体のための規程が少ない」と語る。
また、選挙資金について研究する超党派の研究グループ「積極的な政治のためのセンター」の研究部長、シーラ・クラムホルツは次のように語っている。「これだけ多くの資金が注ぎ込まれていながら、米国民は金融改革に対する闘争に加わっていない。完全に業界ロビイスト対議員の戦いになっている。これは今に始まったことではない。ただし国民が無関心というだけではなく、ロビイストの力も強まっている。特別利益団体の力があまりに巨大化し、かつ巨額の資金を持つことから、政治家はそこから再選のための選挙資金を引き出そうと必死になっている」
それに対して、管理医療組織に対する規制努力は国民の関心を集めてきた。世論調査によれば、健康管理は有権者の関心事の中で、常に2位あるいは3位以内にランクされてきた。それにも拘らず、結果としてこの管理医療をきちんと規制する法案が議会を通過しなかったために、健康管理業界が勝利した。健康管理機関、保険会社、一般企業を代表する健康保険連合の加入メンバーは、1999年1月1日から6月30日までの間に、ロビイ活動に対して2,850万ドル、また選挙資金として連邦選挙候補者に対し150万ドルを支払った。これは、議員1人当たりに換算すると56,000ドルになる。
上院で53対47で可決されたのは、健康管理業界を支援し患者保護を怠るものだと、消費者団体および民主党議員が非難した法案だった。この法案の支持者は、1999年9月30日までに、健康保険連合のメンバーを含む健康管理業界から少なくとも平均27,000ドルを手に入れた。一方、法案反対者は、平均2,300ドルしか受け取っていない。
同様に、下院でも、健康管理機関(HMO)を告訴する権利を患者に与えるという超党派の法案を最終的には可決したものの、下院議員はまず、その法案が持つ消費者保護の力を弱める3つの代替案の否決をしなければならなかった。これら3つの代替案の投票に関連して、それを支持した議員が健康業界から得た政治献金の平均は、それに反対した議員が得た献金額を上回っていた。
カリフォルニア州選出の共和党下院議員であり、下院歳入健康小委員会議長を務めるビル・トーマスは、政治献金と議員の投票との相関関係に異議を唱え、「誰かが特定の立場を支持する投票を行ったからといって、買収されたと即座に結論づけることはできない。彼らだって逆に世間を同じように見ることができるはずだ」と述べた。