No.367 安全保障のまやかしと引き換えに支払われる日本から米国への「思いやり予算

今回は、在日米軍駐留経費の日本側負担に関する記事をお送りします。米軍を駐留させておけば、日本が侵略されても米国が防衛してくれると日本国民は信じているようです。しかし、私がここで指摘したいのは、その基盤となる日米安全保障条約を読めばわかる通り、日本がいくら費用を負担しようとも、さらに日米ガイドラインなどを通じて米国にいわれるままに米軍支援を約束していたとしても、日本が攻撃された時米国が必ず日本を守ってくれるという保証はどこにもない、ということです。

 この記事には、日本が駐留費用を負担することが、米国に日本の安全保障を約束させるための交換条件だと書かれており、さらに、この欺瞞により日本政府は駐留米軍のために総額5,500億円を負担しているとも記されています。この金額は在日米軍兵士1人当たりに換算すると1,500万円もの金額になります。これを1999年度予算の国民1人当たりの社会保障関係費、約13万円と比べてみてください。日本政府が、いかに日本国民をないがしろにして米国政府にへつらっているか、この数字が端的に表しています。さらに、日本がその予算から米軍の駐留経費を負担する余裕などないことは、国と地方を合わせた日本の長期債務残高が今年645兆円に達し、国民1人当たりの負担額が、516万円にものぼるということを見れば明らかではないでしょうか。皆様からのご意見をお待ちしております。

安全保障のまやかしと引き換えに支払われる
日本から米国への「思いやり予算」

AP通信 2000年2月7日
ジョゼフ・コールマン

 ここは東京のはずれでありながら米国である。放課後、学生はフットボールに興じ、母親達は子供を近所のプールに送っていく。週末は裏庭でバーベキューというのが一般的だ。しかし、米国と大きく異なるのは、学費も、住宅費も、プールの建設費もすべて日本政府によって支払われている点だ。米軍基地の接受国の中で、日本は世界で最も多額の駐留経費を負担している。そのことから、経済問題が慢性化する日本国内では、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を問題視する声が高まっている。

 在日米軍駐留経費の日本側負担が総額で年間約5,500億円にものぼる中で、そのかなりを占める思いやり予算を定める日米特別協定が2001年4月に期限切れになることから、日本側は今年初めに始まった見直し交渉において、米側に負担軽減を強く求めている。

 日本が負担軽減を求める理由は経済的なものである。日本政府が「思いやり予算」として米軍の駐留経費のかなりを負担し始めたのは1970年代末で、上昇基調の日本経済に対し、米国では財政問題が悪化していた時だった。「しかし、今両国の立場は逆転している。それにもかかわらず、日本が今後も以前と同レベルの費用を負担し続ける必要があるのか疑問視する声が出始めている」と防衛庁報道官は語る。

 そこで、瓦防衛庁長官がコーエン国防長官の1月初旬の来日中に、思いやり予算の削減について話を切り出したが、米国側はいかなる削減にも反対し続けている。

 日本には、海外では最大規模の米海兵隊分隊を含む、男女合わせて4万7,000人の米軍兵士が駐留しており、日本は西太平洋およびアジアに配備される米軍兵力の中で要の役割を果たしている。

 また、米軍基地は日本の防衛に直接的な役割を果たしている。というのも戦後の日本国憲法が、日本は「戦力を保持しない」としてきたためで、米軍が日本から撤退すれば、日本は大幅な防衛力増強をしなければならなくなるであろう。

 米軍駐留の見返りに日本政府は、米軍に対し広大な土地を無料で提供し、米軍が使用する光熱費/水道料のほとんど、および日本人従業員の給与を肩代わりし、さらに学校、住宅、ショッピング・センターといった何億円もの費用がかかる施設を建設している。加えて、沖縄にある米軍の飛行場閉鎖と引き換えに、新しいヘリコプター基地の建設費も日本が支払うことになっている。このプロジェクトには、日本の地価が高いこともあって、7,500億円もの費用がかかると報じられている。

 「日本が行う駐留米軍支援の中で、依然として費用負担が最も重要な貢献である。日本の接受国支援は同盟国中、最も寛容である」と昨年、国防省も議会で報告した。

 日本の負担は指数関数的に増加しており、防衛庁の発表によれば、1978年には61億8,000万円であったのが、昨年は2,750億円に増加している。これに借地代などの間接費用を加えると、日本政府による米軍支援の総額は1998年に5,500億円弱に上ったと米高官は1月に語った。さらに米国防総省によれば、これは米軍の総駐留費の約75%に相当するという。

 広大な横田基地には米軍兵3,000人およびその家族や関係者7,000人が居住するため、日本の費用負担削減は気になる問題である。横田基地の職員は、日本にさらに多くを負担して欲しいと願っている。彼らによれば、アジアに米国の強力なプレゼンスを維持するためには資金が必要であり、日本の駐留経費負担は、米国による日本の安全保障を約束させるために不可欠な交換条件のひとつである。「これは相互条約である。相互とは日本が米国のために何かをやってくれて初めて、米側も貢献するというものだ」とは、駐留米軍の報道官、ビリー・バードウェル少佐の言である。加えて、思いやり予算の中の建設費や他のプロジェクトの費用(年間1,430億円)がすでに大幅に削られ始めていると米軍側は主張する。

 「接受国支援が最高を記録したのは恐らく1997年であり、以来、全体として費用は減少傾向にある」と、米陸軍のエンジニア、カーク・M・バーグナー大佐は述べている。日本の費用負担は横田基地の建設現場を見る限り、依然として大量の資金が日本から米軍基地に流れ込んでいるようであり、多くの日本人には手の届かない生活を提供している。

 新しい軍のための売店その他が入った、7億9,750万円のショッピング・センターの建設がすでに始まっている。また、テニス・コートやプールを含む1億7,500万円の娯楽センター、および全天候型のテニス・コートやフットボール場完備の2億3,650億円の中学校の建設も予定されている。最近、二世帯用住宅の団地が完成した。また、1996年に完成した8億2,500万円の娯楽プロジェクトの中央に位置する、約45メートルの室内プールでは、米国人の子供たちが放課後、水しぶきをあげて泳いでいる。

 道幅が広く、住宅地の周りには多くの駐車場が完備され、芝が敷かれた横田基地全体には、米国の雰囲気が漂っている。基地から一歩外に出れば見られる、狭い道や密集した住宅街といった一般的な日本の光景とは対照的である。

 米軍の将校は、基地には、米国本土で平均的な兵士が享受できるのと同程度の快適さを提供する必要があるという。さもなければ、新兵は辞めかねない。「米軍はすべて志願兵で構成されているため、本国と同じ快適さが提供されていなければ、荷物をまとめて帰ってしまうであろう」とバードウェルは語る。