世界の警察官のようにあらゆる国に内政干渉を行い、自国の国益にかなうかどうかを常に基準として、介入をしたりしなかったりする米国ですが、こと日本に関してはどこの国に対するよりも過度の干渉を行っています。それはまるで、1945年の敗戦から7年間、日本が米国の占領国であった頃と何も変わっていないかのようです。今回のOWでは、米国が日本のNTTの接続料金に対してまで干渉を行っていることに関し、米国最大の発行部数を誇る日刊紙『USA Today』の記事をお送りします。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。
日本への対応にだけ見られる米国の傍若無人ぶり
— 戦後のマッカーサーの口調は今も変わらない —
『USA Today』紙 2000年3月30日
ジェームス・コックス
クリントン政権はイラクの独裁者、サダム・フセインに無礼な言葉を数多く投げかけたが、イラク国内の電話料金が高すぎるとまではいわなかった。そこまで細かいことをワシントンから指示される国は日本だけである。10年間にも及ぶ不況にあえぐ世界第二位の経済大国日本は、その勢力の衰退、さらには米議会や企業が中国との貿易に焦点を移すにつれて、米国の新聞の見出しを飾ることはなくなってきた。
ただし米国官僚たちは、日本の衰退をいいことに3年間におよぶ日米共同規制緩和政策の一部として、日本経済の細部にまで口を挟み出した。日本の金利だろうが、建築規制だろうが、米国はあらゆる問題について、日本政府を威嚇し、丸め込み、いばり始め、それはこれまで日米関係を長年見守ってきた専門家が驚くほどである。
3月30日現在、米通商代表部は日本の電話接続料金引き下げ問題で7月末までに日本との合意が得られなければ世界貿易機構(WTO)への提訴に踏み切るとしている。
クリントン政権が日本の規制緩和の遅々とした進展に嫌気がさしているのは明らかである。クリントン政権は第一期中、米国の自動車部品、ガラス、写真フィルム、保険、その他の製品に対し、市場を開放させることに集中した。そして今期、日本が絶望的なほど行き詰まっていると確信した米国政権は、日本政府を混乱状態から救うことを装って、言葉たくみに日本をいいくるめる手段に出た。
「米国の官僚がフランス政府に対してフランスの大店舗法をどのように変えるべきか説教するなど、想像もできない。しかし、それこそ米国が日本にしていることだ」と、1994年から96年まで日本の米国大使館で特別経済顧問を務めたエド・リンカーンはいう。大店舗法だけではない。米国の通商官僚は、入院期間の短縮、薬価の引下げ、セルフサービスのガソリンスタンドの増加、小売業者の競争促進、低価格の建築資材の使用促進など、事細かに日本政府に指示している。同様に米財務省の高官は、日本の経済刺激策や金利を承認するか、しないかを示す信号を定期的に発信している。
米国官僚は、単純にいうと、日本は無視するにはあまりにも大きく重要だという。日本が健全であれば、より多くの米国製品を輸入できるため、世界の成長の主な原動力となり、米国からの圧力も減らすことができる。
「なぜ米国人が、日本人の木造家屋を何階建てにするか気にするのかって。それは利己的な理由で、米国人は多くの木材を日本に売っているが、もっとたくさん売りたいからだ。日本にもっと売り込みたいから日本の成長が我々の関心を集める」と、米通商代表部次席代表で規制緩和協議の中心人物であるリチャード・フィッシャーはいう。
時々米国がうるさ過ぎるということはフィッシャーも認めている。しかし、日米協議は電気、医療機器、通信分野の米国企業に勝利をもたらした。ただし、米国が払った労力に見合う利益は得ていないと考える者もいる。「日本をもっと効率的にすることに、なぜ米国が口出しする必要があるのか。日本が効率を良くしたい、競争力を高めたい、生活水準を向上させたいと望むのなら、それは日本の問題だ。そろそろ米国は日本に口出しするのをやめ、自分が蒔いた種は自分で刈らせるべきである」とリンカーンはいう。
歴史的に見ても、日本の変化は外圧によってもたらされることが多かった。日本の近代化が始まり西欧諸国との交易が開始されたのは、1853年に米国海軍の一行とともにペリー提督が黒船で浦賀に来航してからである。マッカーサー総司令部は戦後7年間の占領時代に実質的に日本を作り変え、占領がなければあり得なかった変化を導いた。マッカーサーは土地改革、教育改革を行い、財閥を解体し、新しい政治制度を作り、天皇の存在を現人神から国民の象徴に格下げし、新しい憲法を制定した。
「われわれは日本社会を再構築するために外圧を利用する傾向にあった。ある意味で、米国は利用されてきた」と日本で影響力の強い大蔵省の元財務官、榊原英資は語る。しかし、榊原は最近は米国のすべての助言が好ましいものではないと警告する。「グローバル経済に生き残るためには米国化しなければならないと、日本に説教することは好ましいことではない。日本がグローバル化に適応しなければならないことは確かだが、それでも日本の文化は維持できるはずだ」
高圧的な友人
「日本経済がまごついているのを見ることが米国の関心事ではない。日本は最大の国債発行国であり、世界第二の経済大国であり、米国製品の最大の購買国のひとつであり、アジアの安定の原動力なのだ」(米通商代表部次席代表、リチャード・フィッシャー)
「米国は、フランスやドイツといった国には決してしないであろう、細部にわたる政策の処方を日本に対して指示している」(国際貿易担当前商務次官、イエール・スクールオブマネジメント学長、ジェフリー・ガーテン)
「我々は、自国の政府に対してでさえ“ちょっと、おまえらの金利はなっていない”とまではいわないのに、市場開放のことになると、日本人に対してこうしたことをいっている」(EC 委員会のワシントン報道官、ウィリー・ヘリン)
「日本はひどい機能障害を起こしている。政府機関はおかしくなっていて国民もそれを知っている。過去15年間、私が知る米国官僚で日米関係に関わった人は誰もが、日本についてむなしさと怒りをおぼえ、深い冷笑をもって帰国している」(日本とアジア問題のニューズレター『ネルソンレポート』、クリス・ネルソン)
「日本は地獄の淵にはまっている。旧制度はうまく機能せず、日本人はどこに向かっているのかわからない。不満がたまった日本人は米国に向かって“黙ってくれ、今考えているんだから”といい返したいところだろう」(日米関係のニューズレター『オリエンタル・エコノミスト』、ピーター・エニス)