No.380 CEOの報酬と解雇者数がともに上昇する米国

今回は4月6日のロイター通信のニュースを2つお送りします。最初のニュースは、『ビジネスウィーク』誌恒例のCEO報酬ランキングからであり、上位20名の報酬(給与やボーナスを含む)の平均は実に112億円を超えると報じられています。

 もう1つ同日発表されたニュースでは、チャレンジャー、グレイ&クリスマス社の調査結果による2000年3月の解雇者数が前月比58%増であったことが取り上げられています。

 CEOが過去最高の報酬を手にする一方で、解雇された労働者も1999年9月以来最高を記録しているというニュースに、米国の価値観が端的に表れていると思います。まさに、私がよく指摘する二極化の世界を表すものです。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。

CEOの報酬とレイオフの数がともに上昇する米国

 
 

◆ 1999年、最高経営責任者の報酬が17%上昇(『ビジネスウィーク』誌調べ)

 「王様はいいものだ」。米国大企業の最高経営責任者(CEO)はこう述べるであろう。1999年、彼らの報酬は、好景気と天井知らずの株価に支えられ過去最高を記録した。

 米国大企業362社のCEOの1999年の平均年収は賞与やストックオプションを含めて1,240万ドル(約12億4,000万円)であった。1998年の1,060万ドル(約10億6,000万円)からは17%増、1990年の平均年収の6倍以上にあたる。毎年恒例の同誌の調査によれば、第20位までのCEOの報酬は平均で1億1,290万ドル(約112億9,000万円)で、上位10名のうち7名はランキングの常連であったという。(ロイター通信、2000年4月6日)

<1999年 高額報酬を受けた上位10名のCEO> 
単位:ドル
  給与・
             ボーナス  長期報酬     合計
1. チャールズ・ウォン
(コンピュータ・アソシエイツ)
              460万  6億5,082万4千 6億5,542万4千
2. デニス・コズロウスキ
(タイコー・インターナショナル)
             455万  1億6,544万6千 1億6,999万6千
3. デイビッド・ポトラック
(チャールズ・シュワブ)
             900万  1億1,890万   1億2,790万
4. ジョン・チェンバース
(シスコ・システムズ)  94万3千  1億2,075万7千 1億2,170万
5. スティーブ・ケース
(アメリカ・オンライン) 157万5千 1億1,551万  1億1,708万5千
6. ルイス・ガースナー
(IBM)          926万6千   9,298万3千  1億224万9千
7. ジャック・ウェルチ
(ゼネラル・エレクトリック) 1,332万5千  7,981万3千  9,313万8千
8. サンフォード・ワイル
(シティグループ)    1,018万1千    8,004万9千  9,023万
9. ピーター・カルマノス
(コンピュウェア)     220万    8,532万1千  8,752万1千
10. ルーベン・マーク
(コルゲート・パルモリーブ) 420万   8,111万7千  8,531万7千

◆ 2000年3月の米国の解雇者数は前月比58%増を記録

 国際転職斡旋業者のチャレンジャー、グレイ&クリスマス社が発行している雇用削減に関する月報によれば、米国の解雇者数は2000年3月に前月比58%増を記録した。同月報によれば、5ヵ月連続で米国大企業の大規模なダウンサイジングが進められた後、3月に解雇者数が急増したという。2000年3月の解雇者数は5万5,783人で(2月は3万5,451人)、1999年9月以来、最高を記録した。ただし前年同月比では19%の減少となった。[米労働省の発表によると、米国では1999年1年間に、50人以上の大量解雇は5,624件行われ、112万6,278人の労働者が解雇されたという。]

 チャレンジャー、グレイ&クリスマス社のCEO、ジョン・A・チャレンジャーは、同社の月報の中で次のように述べている。「こうした雇用の削減は、企業が技術主導型の、変化の速いグローバル経済の中でどのような行動をとるかを示すものだ。工場の組み立て作業労働者から最高経営責任者にいたるすべての人々にとって、これは予測不可能かつストレスの大きい経済である。経営トップがいかに頻繁に替わっているかを見ればそれが明らかである」

2000年3月の解雇者数合計: 55,783人
(内訳)
  金融サービス      12,120人
  サービス        10,042人
  航空/軍事       6,280人
  エレクトロニクス     5,400人
  その他         21,941人

 一方で米労働省は、2000年4月第一週の失業者数が260,000人で、過去26年間で最低を記録したと発表している。(ロイター通信、2000年4月6日)