No.382 逆進税

Our WorldのNo. 381で紹介した『The Great American Deception』第2章で、著者のラビ・バトラは、米国の政府や報道機関、さらには政治献金や広告料で政府や報道機関を買収する大企業や富裕者、あるいは御用学者が描く豊かな米国のイメージとは裏腹に、いかに米国が大半の国民を失望させているかについて言及しました。

 こうした米国の「宣伝広告担当者」たちは、米国の株価は高騰し失業率は低下、国家の生産性や国民1人当たりの生産高は増加していると吹聴しています。しかし、バトラは、米国が繁栄しているのであれば、なぜ好況下の企業が有能な熟練労働者を何千人も解雇しているのか、世界最大規模の経済を誇る米国がなぜ巨額の貿易赤字を抱えているのか、なぜ米国は第二次世界大戦で実質上崩壊した国々から何千億ドルもの借金をしているのか、といった疑問を投げかけています。

 前回紹介したバトラの著書にあったように、80%の米国人労働者の税引き後実質賃金は、1972年から25%も低下しました。実質賃金の減少分を補うために、米国人は労働時間を増やしたり、家族の中の働き手を増やしたりしています。1950~1960年代には、家族のうち1人が働けば車も家も健康保険も学費もすべてを支払った上で、さらに所得の8%を貯蓄に回すことができました。しかし、それからわずか40年たった今、共働き家庭ですらこれらすべてを賄うことは、借金でもしない限り不可能です。これを繁栄と呼べるでしょうか。

 バトラは、米国の衰退の原因が社会の積弊ともいえる税制の失策にあると見て、過去に遡って調べてみました。すると過去100年間、米国政府は外国製品に対する関税率を引き下げる一方で、それに起因する歳入の減少を補填するために、国内製品に対する税金(売上税)や貧困層や中流階級の所得税を引き上げていました。こうして税の負担は関税から所得税へ、そして社会保障税へと転嫁されてきました。これらは米国の繁栄あるいは社会安定のためだと国民をごまかして行われましたが、実際はすべて、富裕者をさらに富ませるためになされたことでした。

 私は、バトラが社会の積弊と呼ぶものには2つの部分があると考えます。一つは、グローバル化あるいは自由貿易に対する米国の妄想あるいは盲目的な信奉が、自国内の輸入関税の引き下げにつながり、さらには他の諸国への同様な関税引き下げの強要となった。そしてその輸入関税引き下げ分を補填するために、米国と、米国の脅しに竦んだ、あるいは宣伝文句にだまされた国々が逆進税を適用したのです。今回は、ラビ・バトラの『The Great American Deception』より、この逆進税に関する分析をお送りします。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。

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No.381 醜い秘密:米国人労働者の実質賃金は25%低下

今回は、日本でもお馴染みのラビ・バトラの著書、『The Great American Deception』(1996年刊、邦訳は出版されていません)から「第二章 The Ugly Secret(醜い秘密)」を抜粋します。これまでこのOur Worldでは、米国の実態を読者に知っていただくために、米国経済に関する様々な統計を紹介してきましたが、米国経済が史上最高の好景気にあるとの印象を日本のメディアによって植え付けられている読者は、今回紹介する統計数値に驚かれることと思います。米国労働者の実質賃金が25%も低下しているという事実に対して、米国の経済学者や評論家がどのような反応を示しているかについても触れていますので、是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。

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