No.413 負債総額1兆4,788億円、8月では戦後最大

経済企画庁を筆頭に与党自民党やその他政府の要人は、日本の不況が底を打ち、景気が上向くとの発表を繰り返していますが、今回はその発表の裏で、企業倒産の増加、それに伴う負債額が8月としては戦後最大を記録したことを報じる記事と、日本の家計所得が二極化傾向にあるとする分析結果をお送りします。

 私はこのOur WorldシリーズのNo. 351「規制緩和のマイナス効果」(2000年2月15日)で経済企画庁が発表した規制緩和効果に対して、そのマイナス効果を分析し企業倒産による負債額および失業増の影響を紹介しました。それから半年以上たった今、日本政府が、景気は底を打ち回復基調にあるとの発表を行っているにもかかわらず、実状はそれほど変っていないことをこの記事が物語っています。以下の『日本経済新聞』の記事によれば、8月としては企業倒産が戦後2番目、負債総額では戦後最大を記録し、特に中小・零細企業の倒産が増えているのです。

 また、同じく『日本経済新聞』からの記事には、日本の家計所得の伸びに二極化傾向が見られることが指摘されています。世帯数でいうと上位40%にあたる年収800万円以上のサラリーマン世帯主収入は4ヵ月連続で前年比増加を示しているのに対し、下位40%にあたる年収640万円以下の家庭では8ヵ月連続で前年割れが続いているということです。これは、米国型資本主義を盲目的に取り入れてきた日本が、その結果として「二極化」まで招くことになったといえると思います。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。

負債総額1兆4,788億円、8月では戦後最大

『日本経済新聞』 2000年9月15日

 民間調査会社の東京商工リサーチは9月14日、8月の全国の企業倒産(負債1,000万円以上)の負債総額が1兆4,788億円と前年同月から64.8%増え、8月としては戦後最大になったと発表した。倒産件数も18.5%増の1,638件と8月としては戦後2番目の高水準。公共工事の息切れや信用保証協会の特別保証制度の政策効果が薄れたことから、建設業を中心に中小・零細企業の倒産が増えた。

 8月の特徴は、保証協会の特別保証制度を利用した後に経営破綻した企業が過去最多の355件(負債総額は1,172億円)に達したこと。この関連の倒産件数も前年同月から50.4%(119件)増え、今年5月の353件を抜いた。このうち建設業が142件を占め、負債額も363億円に上った。

 倒産件数は建設、卸売り、小売りなど4業種で前年比2ケタ増。特に建設業は26.9%増と大幅な伸びを示した。東京商工リサーチは「公共事業に依存する中小・零細の建設会社の倒産が進行している」と説明しており、今後も高水準の倒産件数が続くと見ている。

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家計所得の伸び二極化

『日本経済新聞』 2000年9月16日

 家計所得の回復傾向が所得水準の違いで二極化している。総務庁がまとめているサラリーマン世帯の家計調査によると、所得水準が高い世帯の収入が今年春から前年同月比で増加に転じたのと対照的に、所得水準が低い世帯では収入の減少に歯止めがかかっていない。家計所得は全体として回復基調にあるが、依然として厳しい所得環境にある世帯層が存在するため回復ペースは緩慢なものになるとの見方が多い。
 サラリーマン世帯の家計調査を興銀証券が分析したところ、7月の高額所得層(世帯数で上位40%、年収で概ね800万円以上)の世帯主の収入は前年同月比1.3%増加した。高所得層の世帯主収入は今年2月に8ヵ月ぶりに増加に転じ、3月に減少した後は4ヵ月連続で増加している。収入増の4ヵ月連続は旧山一証券など大型金融破綻が相次ぐ直前の1997年7~10月以来、約3年ぶり。

 これに対し、低所得層(世帯数で下位40%、年収で概ね640万円以下)の世帯主収入には回復の兆しが見られない。7月の収入は前年同月比1.6%減となり、昨年12月から8ヵ月連続して前年割れが続いている。

 こうした家計所得の二極化について、興銀証券エクイティ調査部エコノミストの片野修氏は「給与水準が相対的に高い大企業で業績回復を反映して給与が持ち直した反面、相対的に低い中小企業では厳しい業況を背景にリストラ圧力が依然として強く、給与の回復が遅れていることを示している」と指摘している。

 労働省の毎月勤労統計によると、サラリーマンの給与は残業代などの所定外給与に加え、昨年末からは所定内給与ついても増加傾向にある。企業業績の回復が徐々に家計所得に波及している形だが、大企業と比べた中小企業の経営環境の厳しさが家計所得の二極化につながっている。家計所得全体の緩やかな回復の裏でこうした二極化が進んでいることで、設備投資と並ぶ民需の柱である個人消費の本格的な回復にはなお時間がかかる見通しだ。