No.420 日米、日本海で救助訓練

今回は『京都新聞』の記事をお送りします。このOur Worldでも何度か取り上げた日米防衛協力の指針(ガイドライン)(OWメモ No. 127~133他)を具体化するための法案が、1999年5月にガイドライン関連法案として成立しました。その関連法案の1つである周辺事態法に基づいて、「後方地域捜索救助活動」の初の訓練が、米軍と自衛隊の間で11月6日から行われることがこの記事で報じられています。私も指摘してきたように、米軍への後方地域支援は、この周辺事態法の目的である「わが国の平和および安全確保」というよりも、日本が米国と敵対中の国に攻撃を受ける可能性が高まると『京都新聞』も指摘しています。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。

日米、日本海で救助訓練
-軍事協力、加速へ、来月上旬周辺事態法で初-

『京都新聞』 2000年10月2日
 

 自衛隊と在日米軍が11月6日から約2週間の日程で予定している日米共同統合演習で、昨年施行の周辺事態法に規定された「後方地域捜索救助活動」の初の訓練を、米側が空軍と海兵隊、日本側は海上、航空の両自衛隊が参加して、九州、中国地方沖の日本海を中心に実施することが2日、明らかになった。同演習では、日米の輸送機やヘリコプターなどを使って海外の粉争地から双方の在留国民を非難させる「非戦闘員退避活動(NEO)」の初訓練も実施することが判明しており、日米の軍事協力は一気に加速することになりそうだ。

 周辺事態法は「日米安保条約の効果的運用に寄与し、わが国の平和、安全確保を目的」に昨年8月、施行された。後方地域捜索救助活動について「戦闘での遭難者の捜索または救助を行う活動で、わが国が実施する」としている。訓練内容は、捜索・救難のほか、救助した米兵への医療加護、米側指定基地への輸送、米側航空機の整備など同法の別表第一と第二に示された項目で、海自幹部は「米側に提供できる役務項目の大半を実際に試す」としている。

 具体的には、九州・中国地方の北方沖合を「戦闘行為が行われておらず、救助活動の期間中も戦闘行為が発生しないと認められるわが国周辺の公海」に指定。山口県から福岡、長崎県までの日本海と玄界灘を主な訓練海面として実施する。

 シナリオは「戦闘で米パイロットや水平が遭難、海面に救命ボートで漂流している」状況を想定。

 海自のP3C哨戒機が広範囲に捜索し、発見した米兵を海自の護衛艦と艦載ヘリ、PS1救難飛行艇や米空軍の救難ヘリと海兵隊の輸送ヘリなどで救い上げ、手当てをした上で、山口県の米海兵隊岩国基地に運ぶ計画だ。

<<解説>>

 自衛隊が在日米軍と共同で、戦闘で遭難した米兵を救助するという筋書きの大規模な訓練を実施する動きは、一見「平和活動」に協力するかのように映るが、実態は「米国の戦時」にいや応なく組み込まれていくことを示している。

 周辺事態法は、後方地域捜索救助活動の範囲として「戦闘行為が発生しないと認められるわが国周辺の公海」と定めたが、現代の海戦や航空戦で、ここからは安全と線引きするのは困難だ。

 海上自衛隊のある幹部は「米国と敵対中の国に『我々は救助活動だけなので攻撃するな』と求めても無理でしょう」と法による定義の限界を認め「戦後初の戦死者が出る」(同幹部)可能性も否定しない。

 同法は、給水や給油、食事などの補給のほか、人員、物品の輸送、医療行為、通信設備の提供を可能にし、自衛隊が米軍の「支援軍」となる立場を明確にした。

 防衛庁は今後、日本の各地で同種の訓練を実施していく考えだが、米軍への後方地域支援は、同法が目的とした「わが国の平和及び安全確保」というよりも、武力行使を受ける危険にさらされる恐れが出てきたことになるといえそうだ。