No.424 通信回線接続料を巡り米国がメキシコへ圧力

今回は、メキシコの電話会社の接続料金をめぐり、NTT接続料引き下げ要求の時と同様の圧力を米国がメキシコ政府にかけていると報じる『ロイター通信』の記事をお送りします。米国政府がこうした圧力をかけるのは、AT&Tやワールドコムなどの米国大手電話会社の要請に応えてのことであり、米国政府が自国企業の利益を守るために、日本だけではなく全世界に圧力をかけていることがこの記事からおわかりいただけると思います。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。

通信回線接続料を巡り米国がメキシコへ圧力

『ロイター通信』 2000年10月19日
アダム・エントゥス

 米国政府高官は10月18日、120億ドル規模のメキシコ通信市場へのアクセス問題で、世界貿易機関(WTO)にメキシコを即座に提訴するつもりはないと語った。これによって妥協点を探るために交渉が続くこととなる。しかし、もしメキシコの規制当局がテルメックス(正式社名:Telefonos de Mexico)によるメキシコ通信市場の独占体制を改革しなければ、米国政府はWTOへの提訴も辞さない構えであるとも述べた。「われわれが懸念する問題にメキシコ政府が適切に対処していないと考えれば、米国はWTOに提訴する権利を有するし、その行使を躊躇しないであろう」と、バーシェフスキ米通商代表部(USTR)代表のスポークスマン、ブレンダン・デリーは語った。

 米国は7月に、メキシコ政府に通信市場開放を求める正式な要求の第一歩として、WTOでの2国間協議を求めると発言した。メキシコは10年前にテルメックスを民営化して以来、通信分野を徐々に開放しており、すでに何十社もの新しい企業が地域/長距離電話会社、セルラー、インターネットの分野に参入している。しかし、AT&Tやワールドコムなど、メキシコの長距離電話会社に投資を行っている米企業が、テルメックスによる独占行為のためにメキシコで利益を上げることができないと米国政府に陳情したために、バーシェフスキUSTR代表はメキシコ政府へ圧力をかけることになった。

 WTOにおける2国間協議は合意に至らず、10月17日に期限切れとなった。しかし、米国の高官はメキシコに対する正式なWTO提訴を即座に行う予定はないと述べた。米国とメキシコの貿易交渉担当者は問題解決のために追加協議を行う予定であるが、日程はまだ決まっていない。「メキシコ側の発言には希望が持てる部分もあるが、メキシコがとる措置がどれだけ効果的なものか、それだけでWTOが求める事項を満たすことができるかどうかは疑問である」とデリーは語っている。

 米国の交渉担当者がメキシコ政府に要求している事項の中で主なものは、テルメックスの通信回線に他社が接続する際の接続料を料金ベースにすることである。メキシコはWTOの要求事項に違反してはいないと主張しながらも、新しい規制の作成を急いでいる。

 今年9月に、メキシコの規制当局である連邦通信委員会(Cofetel)は、それまで長く待たれていた、テルメックスの独占を緩和する新しい通信規制を発表し、長距離電話会社に対する接続料金を値下げした。しかし、テルメックスは新しい通信規制の差し止めを裁判所に要求し、接続料金に関して提訴を行うと発表している。

 米国の貿易交渉担当者は、メキシコの規制当局が正しい方向に進んでいると認めてはいるものの、政府高官によれば、米国政府は、新しい規制を確実に実行するというメキシコ政府からの確約を求めているという。