No.449 宮沢財務相、消費税上げ必要を明言

今回は、宮沢財務相が消費税を引き上げる必要性を初めて明言したことを報じる『読売新聞』の記事をお送りします。以下、『読売新聞』の記事に私のコメントを加えましたので、是非お読み下さい。

宮沢財務相、消費税上げ必要を明言

『読売新聞』(夕刊) 2001年2月20日

◆ 「複数税率導入も不可欠」

宮沢財務相は20日午前の衆院予算委員会で、社会保障費用の増加などに伴う将来の財政負担の増大について、「消費税を上げなければならないという答えになる公算が大きい」と述べ、近い将来、消費税率を引き上げる必要があるとの認識を示した。さらに、「(消費税の)税率が西欧に近いところまで上がると、いろいろな意味での控除なり複数税率を(導入)しなければ、国民が受け入れられない」と述べ、消費税率が欧州並みに10%を超える場合もあり得るとの見方を示すとともに、その場合には、食料品など生活必需品の税率を低く設定するなど、複数税率の導入が不可欠だとの認識を示した。

宮沢財務相が、現行5%の消費税率引き上げと、複数税率導入の必要性を明言したのは初めてだ。田中真紀子氏(自民)の質問に答えた。宮沢財務相は、消費税率引き上げに対する国民の反応については「(社会保障費用の増大などの)そういう状況であれば十分に説明できることだし、国民もやむを得ないと思われることではないか」と述べた。

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[宮沢は翌日の記者会見で与党内から反発が出たことに配慮して、「今どうこうしようと考えているわけではない」と語ったが、財務相が消費税増税の必要性を認めていることから、おそらく選挙後具体化されることになるとみられる。]

>>>  耕助のコメント  <<<

日本がバブル崩壊後、不況に陥った原因の1つとして、政府が消費税率を1997年に3%から5%に引き上げ、所得の大部分を消費に使っている低所得者層の負担を増やす一方で、所得税率、法人税率の累進性を低め、高額所得者や大企業の負担を減らしてきたことがあると、私は以前から指摘してきた。(詳しくは、Our World No.263「日本の不況に対する解決策の提案1」をご参照ください。)しかし、この読売新聞の記事を見ると、日本政府は不況の原因をきちんと分析することなく、再び愚行を繰り返そうとしていることがわかる。

また、この記事には、消費税増税を正当化するための理由として、「社会保障費用の増加」という表現が何度も出てくる。しかしOur World No.330「財政破綻は高齢化が原因ではない」で私が詳しく分析したように、実際には日本の社会保障費用が歳出に占める割合は1980年から20年間、ほぼ20%で変わっていない。大きな増加を示しているのは社会保障費ではなく、日本の借金財政が招いた国債の償還費用および利払い費を示す国債費なのである。消費税増税の真の理由が突出する国債費にあることは、政府が公表している数値からも明らかである。借金の返済のために消費税を増やすといえば国民に受け入れられないから、社会保障費負担の増加という表現を使っているとしか思えない。日本の政府は、国民の幸福のために景気を回復したいと本当に考えているのだろうか。日本国民は、今後の日本政府の対応に慎重に構える必要がある。

国債費        社会保障関係費
(兆円)  歳出比   (兆円) 歳出比
1960年 0.03    2%    0.19  11%
1970年 0.29    4%    1.15  14%
1980年 5.31    12%    8.26  19%
1990年 14.29   22%    11.55  17%
2000年 21.97   26%    16.77  20%

(出所:大蔵省主計局)