今回は、我々がカジノ経済に暮らしていることを示すデータを紹介します。
カジノ経済
外国為替の世界の取引高(売り買い両方)は現在、貿易額の27倍、またこの地球上で生産されている製品やサービスの総生産高(GDP)の9倍にものぼっていることが、データを調べてみて明らかになった。
<1日の取引高:外国為替、貿易、GDP(単位:兆円、倍)>
世界の 世界の
外国為替 貿易額 倍率 世界の 倍率
年(Y) 取引高(F) (T) (F/T) GDP(G) (F/G)
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1973 4 1 4 4 1
1989 78 3 30 9 9
1992 109 3 32 11 10
1995 100 3 35 8 13
1998 197 5 40 14 14
2001 150 6 27 16 9
出所: (F) 国際決済銀行(BIS)
(T) (G) World Economic Outlook, IMF (2001年5月)
通貨が製品やサービスの生産や取引を促進するための道具であると主張する人がいるが、本当にそうだろうか。この数字を見ても本当にそういえるだろうか。
確かに何十年も前であれば、為替レートの変動による損失を防ぐことを目的に、すなわち輸出入や製品の生産活動を守ることを目的に、外国為替の売買が行われていた。例えば、3ヵ月後、米国企業に10万ドル支払わなければならないことがわかっている日本の輸入業者は、円の価値が下がることを見越して、前もって10万ドルを購入したりしていた。その当時の為替取引は確かに、物やサービスの生産や輸出入を補完するものであって、そうした経済活動を促進するのが目的だった。
しかし、為替の取引高が貿易額の27倍、またこの地球上で生産されている製品やサービスの総生産額の9倍にも達している現在、輸出入や生産を助ける、すなわち産業や商業活動を促進するために為替取引が行われているといえるだろうか。私は、為替取引はむしろ博打同然と考える。賭博師たちが、様々な為替価値の変動を予測しては、それで金儲けをしようとしているとしか思えない。
日本人の貯蓄率は世界一高いため、恐らく日本人の為替取引額、為替による博打の取引額も高いに違いない。しかし、日本人は向こう見ずで、貪欲な博打打ちなのだろうか。
ほとんどの日本人の貯蓄は、人々が安全と信じている銀行口座に預けられている。いわゆるローリスク、ローリターンである。しかし、預金者の承諾を得るどころか、預金者の知らないうちに、銀行は預金者から預かった資金を外国為替取引に投じている。そしてその博打の結果、利益が生まれればその配当金はすべて銀行にわたり、何も知らされていない預金者にはまったく見返りがない。逆にその博打に負ければ、掛け金を負担するのは預金者であり、納税者である。なぜなら日本では政府が預金者を保護する責任を負っているため、銀行が破綻すれば公的資金でその銀行の博打のつけを補填しようとするからである。なんとすばらしい世界だろうか。