今回は各国の平均日給の比較から、日本経済の現状を客観的に捉えてみたいと思います。
経済改革は本当に必要か
今日、多くの日本人が日本経済の現状とその先行きを懸念している。失業率は過去最高水準を記録し続け、若者たちは学校を卒業しても就職先が見つからない。父親にあたる年代の男性たちは企業リストラの対象となっている。記録的な額の負債を抱えた企業が、これまた記録的な数で倒産している。国内総生産520兆円の日本が抱える借金は、国、自治体、政府系団体を合わせるとおよそ710兆円(GDP比137%)にものぼり、さらにそれは増えつつある。このGDP比は世界の先進工業国の中で最も大きい。最悪の経済が記録を更新するのと足並みをそろえるように社会問題も増大している。暴力犯罪の著しい増加、麻薬犯罪の若年層化、自殺者の急増、停滞する婚姻率と対照的な離婚率の増加。そんな日本に対して、米国、G7、EU、IMF、世界銀行などが一様に、失望したと日本経済を公然と罵倒し、首相に対して早期立て直しを迫っている。
日本には深刻な経済問題があり、それを解決する必要があることは私も認めよう。しかしそれと同時に、このような問題に適切に対処するためにも私たちはその問題を客観的に理解する必要がある。その1つの方法は、日本と他の国々とを経済面で比較してみることだろう。そこで私は、国連および世界銀行の統計から、世界191ヵ国、総人口60億人について調べてみた。その結果、日本に住む我々が、世界のほぼどこの国の国民と比べても恵まれているということがわかったのである。
日本人の平均日給は、一人あたり約12,210円である。これは地球上の残り99.8%の人々の日給を上回る。つまり世界191ヵ国のうち、日本よりも平均日給の高い国はルクセンブルク、スイス、ノルウェーの3ヵ国、人口にすると60億人のうちわずか1,200万人だけであり、残り187ヵ国、約58億人(世界人口の98%)の平均日給は日本人よりも少ない。
平均日給が日本人の約半分、6,085円に満たない国は165ヵ国 52億人(全体の87%)であり、また119ヵ国46億人の平均日給は約1,212円以下である。つまり世界の77%の人が日本人の十分の一以下で生活しているということだ。92ヵ国約41億人の平均日給は602円以下であり、世界の69%の人々が、日本なら新聞を買ってコーヒーを飲めばなくなる金額で1日を暮らしている。
さらに、世界人口の38%にあたる54ヵ国約23億人は242円以下、日本なら満腹になることさえ難しい金額が1日の平均収入である。そして11%にあたる32ヵ国約7億人の人々の平均日給は122円以下。1本の缶ジュースしか買えないお金で1日に必要なものを満たす生活がどんなものであるか想像できるだろうか。
これらのデータからわかることは2つある。1つは日本が抱える経済の問題をこのように客観的に理解すべきだということだ。確かに現在の日本は「経済の奇跡」と呼ばれた先輩たちの時代ほどは経済的にうまくいっていない。改善すべき点はいくつもある。しかし、それでも日本がこの地球上の多くの、いや、ほとんどの国より経済的にずっとうまくいっているのが事実なのである。
そしてもう1つ我々が行うべきことは、日本に対して米国やIMF、世界銀行、G7といった国際機関が執拗に迫っている経済改革を鵜呑みにするのではなく、まずは改革が本当に必要なのかを疑ってみることである。世界191ヵ国のうち、日本よりも一人あたりの日給が上回る国は3ヵ国しかない。その日本がいったい今、何をどう変えなければいけないというのか。日本の経済をとやかくいう前に、例えば米国は自国の平均日給をせめて日本並に上げることを考えるべきではないか。さらには米国やその御用機関がなぜ日本に対して執拗に経済改革を迫るのかを考えるべきである。日本が経済的に世界で4番目にうまくいっている国だと知らない無知からか、それとも偽善やそれ以外の動機からなのか。
そのうえで、日本は儒教の教えに基づいて経済問題を解決すべきだと思う。「経済の奇跡」を成し遂げた先輩たちの時代と比べ今がどんなにひどいかを嘆き悲しむことも、また米国や世界の一握りの裕福な支配者の代理人である御用機関の助言に従うこともやめ、日本人は世界のほとんどの国と比べいかに恵まれているかを認識し、さらにはその持てる力と富を誠実に使うことによって、恵まれない国の人々をいかにして助けるか、その方法をも模索するべきであろう。