日本経済はデフレの問題をかかえているといわれながら、政府がとっている政策はデフレをあおる政策ばかりです。デフレを解消するには、政府がこれまで取ってきた政策のすべて逆を行えばよいと私は考えます。具体的に何をすればよいかについて、以下本文にまとめましたので是非お読みください。
デフレをあおる小泉改革
小泉内閣の経済政策はデフレを解消するどころか悪化させている。デフレを解決するには、過去二十年間の政府の政策を撤回するしかない。
デフレの原因は製品の過剰供給か、需要の不足にある。人々が必要な量だけを生産するのであれば過剰供給にはならないが、利益追求が目的であればどうしても過剰に生産する。日本が「過剰」状態になったのは、私の知る限り現代が最初である。
逆をいく税制改革
過剰生産をやめる簡単な方法は法人税と個人所得税の増税により、利益を狙う気持ちをそぐしかない。しかし、政府はまったくその逆の大幅減税を行ってきた。
三十年前、日本の税収のうち所得税収と法人税収はほぼ同額だった。今、法人税収は所得税収の三分の二に減った。また所得税率も累進性が弱まり、特に高額所得者が優遇された。一九八四年、最高税率70%で税率は十五段階に分かれていた所得税は、九九年には四段階、最高税率37%に引き下げられた。
技術進歩で過剰生産の潜在的な問題が出始めたその時期に、日本政府は税法を変えて経営者や株主に生産増を奨励する税制改革を行ってきた。小泉首相は今、さらなる過剰生産をあおるように研究開発投資減税、設備投資減税を行おうとしている。
デフレのもう一つの解決策は消費を増やすことである。消費されない所得は預金にまわるため、消費の増加は預金の減少と同じことでもある。それには個人消費を増やすか、あるいは社会消費を増やせばよい。
預金奨励する政策
しかし、これについても政府はまったく逆のことを行おうとしている。消費税の導入および増税により消費を減退させたことを忘れたのか、5%からさらに増税しようとしている。
平成に導入された消費税によって、低所得者層は大幅な増税となった。日本の全世帯数の約11%が年間収入三百万円以下であり、その消費支出は収入のほぼ九割以上である。
そのうち収入を上回る消費をしている3%の世帯では、預金を崩したり、借金をして生活をしている。日本国民の24%に当たる年収四百万円以下の世帯でみても、年収の四分の三以上が消費に充てられている。
もし消費税をここで再び増税すれば、こうした低所得者層に特に重い負担となる。なぜならこの層は収入に占める消費支出の割合が一番高いからだ。さらに過去の減税で受けた恩恵も一番低かった。
課税所得四百万円以下の所得税プラス消費税の減税幅は20%未満だが、千五百万円以上の世帯の減税率は一・五倍の30%以上である。所得に消費の占める割合が少ない少数の世帯を最も優遇し、また所得のほとんどを消費している低所得世帯の減税幅を低くするのは、まさに消費を冷え込ませ、預金を奨励する政策だった。
政府はさらに、国民がもっと預金に励みたくなる政策を打ち出した。将来が不確実で不安定になればなるほど、人は預金をしたいと思う。医療改革では国民負担増となり、高齢者は定額制の廃止と負担上限の大幅引き上げが予定されている。
年金支給額は減額、社会保険料は値上げ、母子家庭の手当減額をはじめ福祉の削減と、不安定な競争社会を前にしては人々が消費より預金に傾くのは当然である。
社会消費を増やせ
消費には個人消費と社会消費の二種類ある。日本の個人消費は、すでに国民一人当たり米国人の一・五倍、G7諸国平均の一・八倍、OECD諸国平均の三倍以上にも上る。一方の社会消費はOECD諸国が各国GDPの約20%を充てているのに対し、日本はその半分の10%しか費やしていない。もし社会消費を他の先進諸国並みに増やせばデフレは解決するだろう。
ところが政府はその社会消費をさらに減らそうとしている。もはや日本はどの先進諸国よりも非社会主義的な国になった。デフレになり始めたのは、日本のメディアや政治家が「小さな政府」を標榜し始めたころであり、デフレが深刻化した今もそれを言い続けている。
日本の公務員数は就労人口の6%だがEU諸国平均は18%で、日本の次に少ないルクセンブルグでも11%である。もし日本が公務員数をルクセンブルグ並み、つまり就労人口5%分を増員すれば、それだけで失業問題は解決する計算になる。
日本のデフレは消費を上回る供給があるためである。その解決策は生産を削減するか、預金を減らして消費を増やすしかない。生産がここまで増えたのは技術革新による機械化が進んだことと、拝金主義によって企業が過剰生産に走ったためである。
そしてその土壌としてそれをあおる税制改革が行われ、また政府の政策によって日本の社会消費は他の先進諸国よりもずっと少ない。デフレを解消するためには、従って、政府がこれまでとってきた政策の逆を行うしかないのである。