No.542 戦争から学ぶこと

今回は真珠湾の湾口から数キロの海底で発見された旧日本軍の潜水艇にについて、日米両国の反応を分析するとともに、戦争に対して両国がどのようにかかわってきたかを振り返ってみたいと思います。是非お読みください。

戦争から学ぶこと

8月28日、ハワイ大学海洋調査研究所は真珠湾の湾口から数キロの海底で旧日本軍の潜水艇が発見されたと発表し、さまざまなメディアもこれを報じた。
なぜなら日本軍戦闘機による奇襲とされていたが、発見された潜水艇は、日本軍が真珠湾を攻撃する1時間も前に米国の駆逐艦によって撃沈されていたことが証明されたからである。真珠湾攻撃は、ひきょうなだまし討ちとこれまで言われてきたが、宣戦布告をせずに最初に攻撃を放ったのは、実は米国の軍艦であったことが明らかになった。

米国の参戦パターン

関連記事を読むと、この発見に対して日米両国はまったく対照的な反応を示している。典型的な米国人の反応として、USSアリゾナメモリアルのダニエル・マルティネスは次のように述べている。
「米艦隊が行ったことは侵入者を防ぐという当然の任務に過ぎず、最初に攻撃したからといって戦争を仕掛けたのは米国ではない。すでに日本の戦闘機が真珠湾に向かっていたのだから」
一方、日本の防衛庁の1人はホノルルの新聞社の取材に対して、この発見で最初に攻撃したのは米国だったという日本側のこれまでの見解が立証されたに過ぎない、つまり日本の奇襲攻撃ではなかったということだ、と語っている。
歴史を振り返ると、米国はいつももっともらしい口実をねつ造して戦争を仕掛けたり、参戦をしてきた。
独立戦争は英軍からの先制攻撃が口実で始まった。先住民の土地を略奪するための戦いでは、インディアンの反乱が利用された。南北戦争では、南部の州が最初に攻撃するよう巧みに仕向けられた。米西戦争は、ハバナ港内で米軍艦が原因不明で爆沈されたことを口実に始まった。
第一次大戦初期、米国は中立の立場をとり交戦国との貿易で大きな利益を得ていたが、JPモルガンほか、ウォール街の銀行家が行った多額の貸し付けの回収に不安がでると、ドイツの残虐行為をねつ造し、参戦した。
ベトナム戦争はトンキン湾で北ベトナム巡視艇が米艦に攻撃をしたという主張で始まった。湾岸戦争は、イラクが米国政府に助言を求めたところ黙認されたためクウェートを侵攻、その侵攻が米国の参戦の口実となった。アフガニスタンへの攻撃は、もちろん9月11日に“テロリスト”が米国を襲ったことが理由である。

日本の野望が…

米国が説明してきた開戦、参戦理由は、時間の経過とともに、事実ではなくねつ造だったということが次々に発覚している。ベトナム戦争を除いて、どの戦争でも米国は領土拡大か、米国企業のための利益や特権を手にしてきた。
19世紀以降、米国は「国防」の定義に米国の境界や国民の防衛だけではなく「米国の国益」の保護を加えた。その国益が脅かされるといっては戦争を行い、他国や他国民を搾取することで米国企業が利益を拡大できるようにしてきたのである。
もう一つ、日本が忘れてはならないのは、日本がアジアの国を侵略していなければ太平洋戦争は起きていなかったということである。つまり、日本がアジアの隣人を略奪するという野望を持たなければ、同じくそれらの国を侵略しようとした米国の野望と衝突することはなかった。
また真珠湾については、そこに配備された軍艦が日本を攻撃するためではなく、米国の防衛のためだと日本が思っていれば日本は攻撃することはなかった。
しかし、米軍の指導者は北米大陸征服を終えた1850年ごろから公然と、次はアラスカとシベリアを経由して中国を、ハワイを経由して日本、そしてフィリピンを征服すると表明してきた。
海軍大佐アルフレッド・マハンは『海上権力史論』という書物を著し、その中で「国家の繁栄には貿易の拡大、ひいては植民地の拡大が必要である。そのためには本国と植民地の自由な海上交通を実力で確保し、他国の海上交通を実力でつぶす海軍力が欠かせない」と説いた。1920年代、米国はその力を誇示するためにグレート・ホワイトと呼ばれる白い戦艦を世界一周の航海にたたせている。

真実を語り継げ

日本の軍事侵攻が、アジアにおける米国の経済侵攻の脅威となった1930年代、米国はその戦艦を米国本土から日米の中間地点であるハワイへ移し始めた。アジア諸国を占領する日本軍と日本に対し、米国が攻撃を加えることを示すためだった。
日本軍が真珠湾を奇襲したという米国の主張は、もともとこじつけ以外の何ものでもなかった。相手を明らかに攻撃しようとしている軍隊に先制攻撃をすることは、攻撃ではなく防衛である。
もし日本人が戦争という悲劇を再び繰り返さないことを心から願うのであれば、真珠湾で最初に攻撃したのは誰かとか、南京で何人が殺されたのか、または慰安婦のうち何人が自由意志で何人が強制的に徴募されたのか、といったあら捜しをいつまでもしていてはならない。
むしろ、なぜ日本が近隣諸国を侵略し略奪してきたか、そして空襲や原爆を含めて米国が日本にどのようなことを行ったかを精査し、それらを後代に語り継いでいくことが必要であると私は思う。