No.615 「新春の集い」(東京)でいただいたご質問と回答

「新春の集い」(東京)でいただいたご質問と回答

Q1:辛口な社会矛盾に対する意見にはいつも感服します。その視点はどのような情報に基づくのでしょうか?

回答: ご参加いただきありがとうございました。まず私は、読書が何よりも好きです。実際、私の余暇の過ごし方といえば本を読んでいるかこのような書き物をしているか、テニスしかありません。私が読む本の著者は、これまで読んできた中で信頼でき、かつ読む価値があると思った作者のものか、または信頼している友人たちから薦められたもので、古典、経済、社会史(政治や軍事史ではない)がほとんどです。
近年、私はお気に入りの著者の書いたものがインターネットで読めるということを知りました。メーリングリストや、LexisNexisという有料検索サービスを利用すれば自動的に最新記事を転送してもらうこともできます。ご参考までに以下は、私が最近最も気に入っている著者のリストです。

Uri Avnery
Donald L Barlett and James B Steele
Jared Diamond
Neal Gabler
James K Galbraith
John Kenneth Galbraith
William Greider
Edward S Herman
Eric Hobsbawm
Will Hutton
Chalmers Johnson
Paul Kennedy
Paul Krugman
Robert Kuttner
Henry Liu
George Monbiot
Bill Moyers
Kevin Phillips
John Pilger
Ted Rall
Charley Reese
Jeremy Rifkin
Joseph Stiglitz
Immanuel Wallerstein
Richard A.Werner
Howard Zinn

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Q2:良い仕組みのアイデアに感心しました。金(ゴールド)も朽ちないと考えた場合どう考えますか。大量であれば、保管コストはかかりますが。マイナス利子は日本国内だけでは効果が期待できないのでは。

回答: 実際問題として、ゴールドは重さの問題、または贋物がつくれるということからも通貨として日常に使うことは難しいと思います。 ゴールドの価値について考えると、ゴールドは現在お金として、そして宝石の材料といった製造においても使われていますが、お金として使われているために値打ちがあります。ゴールドをお金として使うことを止め(ほとんどの人はすでに止めていますが)材料としての価値だけになると、現在よりも大幅にその価値は減ります。しかし国として日本は保管コストをかけても外貨準備でゴールドを買うか、または石油やその他の天然資源を買うほうが、米国債を買ってアメリカの赤字を補填するよりもはるかによいと思います。
マイナス金利の導入は2つの理由から良い結果をもたらすと思います。一つは、人々に貯蓄を思いとどまらせ、それによって一般の労働者や生産者に対してお金の所有者だけが持つ不公平な(かつ独占的な)利点が取り除かれ、お金がより早く流通するようになることです。貯蓄よりもお金を使うことが奨励されるので、サービスや消費に対する需要が増え、経済的な効果がもたらされます。
もう一つは、貯蓄の代わりに、人々はお金を長期的な投資にまわすようになることです。金利が高ければ、お金は生産的なものへの投資よりも貯蓄にまわります。ところがマイナス金利であれば、長期的な見返りのある設備などへ投資されるでしょう。例えばソーラーシステム(太陽温水器など)を家庭に取り付けると長期的に家計が助かり、二酸化炭素も出さなくて環境にもよいとわかっていても、プラス金利では貯金があってもなかなか購入しないが、マイナス金利なら多くの人が購入するようになると思います。
これらの良い影響は、マイナス金利が日本国内だけで導入されても十分国民に利益をもたらすでしょう。もしくは一部のコミュニティにのみ導入されたとしても、その地域のなかでよい影響をもたらします。すでに日本国内では利子のつかない「地域通貨」を導入しているコミュニティがあり、成功をおさめているようです。

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Q3:(1)土地に税金を掛ける・・・・固定資産税と言うのがあります。ビルさんのはその税率を今以上に高く設定しようと言うことなのだろうか。
(2)「土地の私有はいかん」というのがビルさんの主張。ドロボーの産物を継承している。でも汗水垂らして労働の対価を得て(あるいは大借金をして)やっとの思いで土地を買った人が大勢います。この人達をドロボー呼ばわりすることには日本人のかなりの人がついていけないと思います。土地所有者について何か切り分けが必要なのではないでしょうか。

回答: 講演でも申し上げたので繰り返しになりますが、土地は人間が自分の才能や努力によって作りあげたものではなく、創造主がこの地上で生活するすべての人々(そして生き物)に与えたものであると私は信じています。したがって、それを個人が所有する道徳的な権利はないと思います。今、「私有地」として所有されているすべての土地はもとをただせば、ご指摘の通りドロボーの産物を継承しているのです。ですからその土地を所有することに対して、課税をすべきだというのが私の考えです。

私たちが汗水たらして労働の代価を得て、やっとの思いで土地を買わなければならないのも一部の人が多く所有したり、投機の対象として買い占められることで土地の値段があまりにも上昇したからです。
調べていただければわかると思いますがが、固定資産税は土地に課税されている部分とその上の建物と、別々に課税されています。そして私が提案する土地への課税というのは、土地だけに課税するものです。固定資産税は、建物という人間が労働や才能を提供して付加価値をつけたものへも課税がされていますので、私はこの固定資産税をなくし、代わりに土地税をとることを提案します。講演でこの点を強調すべきでした。個人所得税、消費税、法人税、そして固定資産税をなくし、かわりに土地税を導入するのです。(ちなみに2002年の固定資産税収は9兆円でした。)2001年の税収で計算すると、土地税を5%にすれば、所得税、消費税、法人税、固定資産税をすべて撤廃でき、また4%の土地税であれば、4つの税収の合計の80%、3%では50%の税収となります。

自分自身として、所得税、消費税、固定資産税を撤廃して土地税だけになった場合の税負担の増減率を考えてみていただきたいと思います。どちらを選びますか。そしてそれが社会全体に及ぼす影響も考えていただけることを望みます。