戦争が終わって60年、今年も8月6日に広島の平和記念公園で平和祈念式が開かれた。例年のように秋葉市長は平和宣言で核保有国が「人類を滅亡に導く危機に陥れている」と批判し、五月の核不拡散条約(NPT)再検討会議が成果なく終わったことにも言及した。
「アメリカの世紀」の終焉
核不拡散条約(NPT)が発効されたのは1970年、核戦争が全人類に惨害をもたらすものであり、核兵器の拡散が核戦争の危険を著しく増大させるものであることから、その分散の防止に関する協定を締結することを要請する国連総会の決議に従ったものである。しかし五年ごとに行われるNPT再検討会議が今年五月に国連で行われたが、進展はみられなかった。米国など核保有五カ国は合計で約27000発の核兵器を持ち続けているが、あとどれくらいそれらの国々は保有し続けていられるのであろうか。
それは必ずやってくる「石油ピーク」のためである。昨年から言い続けていることだが、人類の歴史の中で20世紀後半に起きたことは、石油による「バブル」だった。人類が化石燃料を使うようになり、先進国における快適な暮らしがもたらされたのも、広島、長崎へ原爆が投下されたことも、それを可能にしたのは豊富で安い石油である。そして今この瞬間にもイラクで起きている戦闘も豊富で安い石油なのである。
しかし石油生産は頭打ちとなり需要が急騰する一方で、現在の科学技術では代替エネルギーは見つかってはいない。つまり、石油ピークが人類に提供する最も良いことは、例えば米国がイラクやアフガニスタンで行っているように、武器を持たない民間人を殺りくすることで世界を恐怖に陥れるために使われる大量破壊兵器を動かす燃料がふんだんに使えなくなるということだ。
アングロサクソンは長い間、武器を持たない民間人を武力で脅し、略奪したい相手や敵を征服してきた。例えばアイルランドは12世紀にイギリスに侵略されて以来、土地を奪われ、作物を搾取され続けてきた。米国の南北戦争もそうである。南軍を負かすことができなかった北軍は、グラント将軍がシャーマン将軍を南下させ、家を燃やし、家畜を殺し、畑を破壊して南部に住む民間人を恐怖に陥れた。
北軍が行ったことは、テロ行為にほかならない。南北戦争の後、シャーマン将軍らの関心が向かったのはアメリカ先住民の土地である。先住民たちが食料とするバッファローの群れを殺し、また政府が約束した土地でも資源が発見されれば奪った。こうしてアメリカ先住民はずっとテロ行為にさらされてきた。
そのアングロサクソンの戦争の概念が、石油によって変わった。兵士が相手の兵士と対面で戦うものから、大量破壊兵器を利用して、一段高い場所から、武器を持たない民間人をも殺りくし恐怖に陥れるという一方的な攻撃になったのである。兵器を戦場まで運び投下するために使われるタンクや飛行機、ミサイル、このどれも燃料は石油である。
国際協定や条約を無視したこの新しい戦争は、第二次大戦、米英軍が行ったドレスデン爆撃で始まった。さまざまな高性能爆弾や焼夷弾を組み合わせ、米英連合軍はドレスデン地区に連続大爆撃を行った。その後、東京、そして60もの日本の都市にも焼夷弾が落とされクライマックスが広島、長崎への原爆投下であった。
広島、長崎から60年、ますます肥満し、怠け者となった米国人は自分の命を危険にさらして敵と戦うにはあまりにも憶病になった。イラクで、アフガニスタンで、彼らにできることはハイテクの大量破壊兵器で武器を持たない民間人を恐怖に陥れ、傷つけ、虐殺することなのである。「テロとの戦い」を主導しているふりをしている米国は、唯一核兵器を使用した国であり、核拡散に反対するふりをしながら今でも核開発を続け弾道弾迎撃ミサイル、バンカーバスター、その他新しい小型爆弾を開発し、世界全体の半分の軍事支出を一国で使い、兵器セールスは38社の北米企業(1社はカナダ)が全世界の60%を占めている。
世界の人々にとって石油ピークは幸いである。なぜなら大量破壊兵器を使うために必要な燃料がなくなるからである。それはドレスデン、東京大空襲、広島と長崎の原爆投下というテロリズムで始まったいわゆる「アメリカの世紀」の終焉を意味するのである。