No.717 「新春の集い」でいただいたご質問と回答(1)

新春の集いのアンケートでいただいた質問への回答です。

「新春の集い」でいただいたご質問と回答(1)

<Q1-1>いつも日本の問題を指摘していただき感謝しております。どうすればいわれたような解決策を日本政府に導入させられることができるのか(税制について、地価税の導入、民間銀行ではなく政府が貨幣を印刷するなど)知りたいと思います。どのようにお考えですか。投票は確かに一つの方法ではありますが、言われたような主張をしている政党はありません。

<Q1-2>日本の課題を解決するためには何が必要でしょうか?

回答:たしかに私が述べたような解決策(地価税をとる、民間銀行にお金を作らせない)のような具体的なことを政策として掲げている党はないかもしれません。これらが導入されることは、既得権益を得ている人々がそれを失うことにつながるために日本や世界で一般的な主流とされている経済理論の中でもほとんど無視されている考え方だからです。しかし、誰がこれらの新しい政策に反対しているか我々は知っています。そして一部の人だけが得をするような政策を、誰がとっているのかも知っています。それは与党自民党政府です。ですから国民がすべきこととして、私個人の考えを申し上げるならば、一つの解決策は日本共産党や社会民主党を強力な野党の地位に上げることです。私の知る範囲の中で自民党と正反対の政策を掲げている野党はこの二政党です。この野党を強くして与党に圧力をかけられるくらいの力を持たせることが第一歩だと思います。保守派の方々は現政権とかけ離れたこれらの政党を支持することは好まれないかもしれません。むしろ嫌っているかもしれません。しかし、まずは日本社会の格差を広げ、一部の既得権益者のみが潤うような政策をとっている現与党政党を負けさせることしか、一歩は進まないと私は思います。

身近な例でいうと、顧客対応の悪いお店や会社にそのやり方を改めさせようとしてもそれはとても難しいか、まず不可能だと思います。あなたにできることはそういう相手とは取引をしない、そういう店を利用しない、ということしかありません。多くの国民がそれに気づいて、たとえ好きでなくても共産党や社民党に投票するようになれば、現与党を落選させるか、または改心させるかのどちらかしかないと私は思っています。

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<Q2>国民一人ひとりがこの国を動かす主人公としての自覚を持ち、さまざまなことに興味を持ち、頭を使い、助け合っていくことが重要だときづかせていただきました。地方自治体ができることなど、考えていることなどあったら教えてください。

回答:地方自治体ができることの一つは地域通貨があります。歴史的には1930年代に登場したものですが、現在では世界のさまざまな国で実際に使われています。取引の対象を地域のコミュニティ活動に限定したもの、または一般の商品やサービスの取引にもつなげたものとあり、日本ではエコマネーなどと呼ばれ導入している自治体は数多くあります。

地域の人々や企業が、地域内で利子のつかない地域通貨を使用することでより地域が独立性を持つようになれば、グローバル経済の波に翻弄されることなく、また日本政府の影響や権力が及ぼせる力も相対的に小さくなるでしょう。すでに推進している自治体を参考にして頂きたいと思います。国家という大きなものを舵取りするよりも、より小さな単位でうまく取り仕切っていくほうが、より簡単でかつ効果もわかりやすいのではないでしょうか。

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<Q3>日銀が作っているお金は8%にすぎず、国内で流通するお金の92%は民間銀行が貸し出しという形で無から作り出し、それで利子を得ている、ということを始めて知り、驚いています。例えば米国や英国もそうなのでしょうか。他国の情報をご存知でしたら教えてください。

回答:「Creating New Moneyの著書ジェイムス・ロバートソンによれば、英国政府とイングランド銀行は新規発行貨幣の5%しか占めず、残りの95%は現金ではなく商業銀行によって利子を求める貸付によるものであり、銀行はその貸付で1年間に120億ポンドの利益を得、国家は銀行にこうした貨幣創造の機会を与えることで政府歳入の年間損失は450億ポンドに及ぶと計算している(Positive News, Autumn, 2000 No.25)」

以上は“貨幣の生態学”(リチャード・ダウスェイト著)からの引用です。米国については、手元に情報はありませんが、戦後の日本の政策で米国を手本としていないものはないのですから米国も日本と同様であることはまちがいありません。

しかしこの質問ですが、もし米英がしていれば日本国民にとって悪いことであっても仕方がないというのか、それとも日本だけがどんなに悪い制度を取り入れているのかを知って、さらなる自己嫌悪に陥りたいというのでしょうか。日本人が経済至上主義ではなく国民中心の社会を築くことを真に望むのであれば、参考にするべきは、国家の健全さ、成熟度、社会の安定という意味からも手本とすべきは米英ではなくヨーロッパの社会民主主義国であると私は考えます。ですからこの問題にかかわらず米英だけでなくそういった国々についても注意を向けて欲しいと思います。

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<Q4>民間の銀行が空から作り出すというお金について、実際に存在させる方法は印刷すればよいだけだと思うが、印刷するための費用を削減しているのではないですか?(国が印刷すれば費用は税金となるため)

回答:印刷費用の削減ということであれば、民間の銀行にその権限を与えなくても、日銀が空から作り出せばよいだけではないでしょうか。
またマネーサプライの表を参照ください。

クリックしてMoneyControl.pdfにアクセス

過去20年間、日本政府が民間銀行に何もないところから新たに作ることを許してきたお金の総額は18兆円にのぼります。そして日本政府は18兆円のうち17兆円を借りてきました。なぜ借りたかというと、それ以前借金をしたために払わなければならないからです。この国債費は15兆円にものぼります。民間銀行にお金を作ることを許してきた政府が、その結果として利息分15兆円以上を支払ったのは、印刷費用の削減分として相殺するにはあまりにも大きな金額ではないでしょうか。

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<Q5>日本にはナショナリズムはなくなってしまったようですが、ナショナリズムはどうやれば形成されるでしょうか。

回答:ナショナリズムは民族主義、国民主義、国家主義など、使われる時代や場所で概念が異なるために、何を形成するのかといっても一般論として答えることは難しいと思います。ですからまず私の考える国家の役割について述べると、日本政府は国民の安全や健康、幸福のために奉仕すべきだと考えます。
国内や日本の海域内の安全を維持するためには、強力で効果的な警察が必要です。しかし、他国との国際関係においては、日本は常に非暴力でなければなりません。なぜなら世界のどの例をみても、国家の暴力は他の弱い国家に対して威張るために使われているからです。また日本は核兵器を保有する大国に対して威張ることはできません。日本を壊滅させるには原爆を2つも投下すればよいからです。しかしロシア、米国、中国、インドなどの大国の核保有国は、その広大な国土のために核攻撃を受けても日本のように壊滅することはないでしょう。また日本のように食料・エネルギー自給率が低い国は、戦争になればたちまちやられてしまうでしょう。ですからまず日本が独立した国家として国民の安寧を求めるのであれば、敗戦後意図的に低くされた食料、エネルギー自給率を上げることから着手すべきです。国家としての体を取り戻し、世界の暴力団の御用聞きのような役目をすることをやめれば、おのずと日本国民の中に国に対する思いが醸造されてくるのではないでしょうか。