家庭菜園をするようになって天気が気になるようになった。仕事で日本全国を移動しているため、種まきの時期になると週末に雨が降れば一週間延びてしまうからだ。それにつけても、近年の気候変動は農作業をする人に大きな影響を与えている。
利益追求は温暖化進める
家庭菜園をするようになって天気が気になるようになった。仕事で日本全国を移動しているため、種まきの時期になると週末に雨が降れば一週間延びてしまうからだ。それにつけても、近年の気候変動は農作業をする人に大きな影響を与えている。
日本が農作物の多くを依存している中国では黄河が干上がり、かたや揚子江は死者数千人を超える大洪水が起きている。黄河については過度の取水で、洪水は森林伐採が原因といわれているが、それにしてもこの対照的な現象は何を意味するのか。また中央アジアでもアラル海が年々縮小し、かつての半分になってしまった。その一方でチェコやドイツなどヨーロッパでは洪水が多発した。今までと降水の量や地域が、大きく変化していることは間違いない。
気候変動の一因には温暖化がある。気温が上がれば水の蒸発量が増え、雨となって降る。そして雨はあらゆる場所に均一に降ることはなく、温暖化によって雨の少なかった地方の雨量が急激に増えれば大きな災害につながる。日本でも昨年各地で洪水が発生したり、都心でも局地的な集中豪雨が起きた。すべて温暖化が原因ではないとしても、地球の気象メカニズムに異変が起きていることは確かだ。
野菜だけでなく日本は中国からさまざまな製品を輸入している。昨年、中国が森林資源の保護から日本への割りばしの輸出を2008年にも禁止するため、割りばしを利用しているスーパー、飲食店などへ影響が出るという報道があった。日本で使われる割りばしの何と九割は中国製なのだという。まさに中国は世界の工場である。
この点、日本が追随する米国と中国の関係も皮肉なものとなっている。製造業が空洞化した米国では生活用品の多くが中国からの輸入品だ。米国人が中国製品を買えば買うほど中国企業の利益は上がり、中国人労働者の所得は増える。昔の日本のように中国人の貯蓄率は高い。かたや米国人は買い物をクレジットカードで行い借金を増やしていく。米国は個人レベルでも国家レベルでも異常な消費を続けている。
経済的な犠牲を払うことは、現在の生活水準を下げることであり、米国人にとってそれは考えられないことのようだ。かつて、日本が真珠湾を攻撃して日米戦争に突入した時、ルーズベルト大統領は米国自動車業界の技術や工場を利用してタンクや戦闘機を製造するために、民間人への自動車の販売を禁止した。ところがアフガニスタン、イラクと戦争を続けているブッシュ大統領は国民に消費を奨励し、米国の貯蓄率はゼロどころかマイナスになっている。その一方で減税政策を行う米国の財政赤字は8兆5千億ドルにも上る。
それでも米国は戦争を続け、減税を続ける。お金を貸しているのは誰かといえば、米国債を買い続けている中国と日本なのだ。昨年11月末の日本の外貨準備高は約9千億ドル、中国は10月末で1兆ドルを超えた。2001年には2121億ドルだった中国の外貨準備高が5年で5倍近くに拡大したのも、米国にあふれる中国製品をみれば当然だろう。
平均的な国民の所得が米国人の6分の1にすぎない中国が、豊かな米国の過剰な消費を支えていることがどんなに危うく、異常なことか考えてみるべきだ。米国の貿易赤字は倍増し、2000年の4520億ドルから、2006年には8500億ドルと倍増したが、その半分は増える石油輸入と中国との貿易赤字だ。
気候変動に話を戻せば、米国はさまざまな国家政策で愚かな選択をしてきた。増える石油の輸入を減らし得る再生可能なエネルギー技術への対応がその一つだ。例えば太陽電池を1954年最初に発明したのはベル研究所だったが、米国はその技術を積極的に利用開発することはなかった。また風力発電もカリフォルニアで80年代に生まれたにもかかわらず、石油業界の圧力によって普及することはなかった。
結局、世界で起きていることはすべてどれも網の目のようにつながっている。短期的な快楽や利益を求めることは結果的に世界の温暖化を進め、長期的にはわれわれの生活水準や子供たちの将来も危うくする。衰退に向かう米国に従属する安倍政権の食料政策一つをとってみてもそれがいかに危ういか、例えば今年再び大雨の被害が日本列島を襲った時に気付くのでは遅すぎる。