No.776 米がイラン攻撃計画?

米国がイランを攻撃するのではないかという憶測が報じられている。

米がイラン攻撃計画?

ワシントン情報筋によると、イラク戦争で国民の支持を失ったブレア首相が引退する5月の前に、米英同盟軍がイランを攻撃する計画が立てられているという。米国が策定しているイラン攻撃では、ナタンツにある地下のウラン濃縮施設などが攻撃対象とされている。

イランを中東の核大国にしないために、安保理決議採択から60日間の「猶予期間」中も低濃縮ウランの生産を続けているイランを、なんとしてでも牽制することが目的だというが、これはイラク戦争開戦時とよく似ている。このままでは、米軍が攻撃を始めた後で大量破壊兵器がでっちあげだったことがわかったイラク戦争と同じ展開になりかねない。

米国が計画しているイラン攻撃とは、地下にあるナタンツ核施設を初めとする施設を「外科的に爆撃」するというもので、これは戦争ではなく「平和維持のための軍事作戦」なのだという。そしてそれが「イランが核兵器開発を止める有効な手段」だというのだから開いた口がふさがらない。なぜなら、イランの核兵器開発を阻止するための外科的攻撃に米国は小型の戦術「核兵器」を使おうとしている。

米ニューヨーカー誌によると、ブッシュ米政権が進めるイラン爆撃作戦では「バンカーバスター」と呼ばれる地中貫通型の核兵器を使う選択肢が含まれている。この戦術核兵器は堅固な地下施設を破壊することのできる威力を持ち、何層にも重なったコンクリートでも突き破って掘削して進み、地下で核爆発を起こす。爆発力は最低の場合でも広島に投下された原爆に匹敵するというのだから、その破壊力と汚染は想像を絶する。広島の原爆で14万人の民間人が瞬時に殺され、また放射能汚染によってその何年もあとになってから多くの人命が失われたが、それと同じことが中東で行われるかもしれないのだ。戦争中毒の米国では、この戦術核兵器は民間人がいるところでも使うことができる「安全」な従来兵器に分類されている。つまり米国は核戦争を始めるために、もはや大統領の許可は不要なのだ。

実際、過去20年間に米国はきのこ雲や大きな爆音を出すことなしに核戦争をずっと行ってきた。最初は1990年のコソボで、それから、湾岸戦争、ボスニア、アフガニスタン、イラクと、核兵器を使用し続けてきた。それは戦闘員、民間人を問わず殺傷し、また土地や水源をほぼ永久的に汚染し続けている。

核兵器の名前は劣化ウラン弾という。採掘した天然ウランは濃縮過程で核兵器の燃料となるウラン235と、低レベル放射性廃棄物となるウラン238に分離される。235は全体の0.7%しかなく、残りの238が「劣化ウラン」だ。1950年代半ばには、すでに米国のさまざまな施設に約60万トン分の劣化ウランが保管されていた。

それが米軍産業複合体にとって魅力なのはいくつもの理由がある。ただ同様の値段、大量に存在し鉛の1.7倍、鉄の2.5倍の比重であるため頑丈な戦車でも貫通すること。貫通時には高熱を発して戦車内の兵士をも殺すことができる理想なメタルだ。こうして米軍部は70年代から劣化ウランを利用し始めた。

劣化ウランは自然発火しやすく、高速で戦車などにぶつかると発火して微粒子を噴霧状に発生させる。これが強力な放射性をもつ発ガン物質である。肺から吸い込まれるとともに、土地や水源を汚染して食物連鎖であらゆる人に影響を及ぼすようになる。劣化ウランの半減期は46億年、地球の誕生ほどの年月がかかる。その結果、湾岸戦争以降イラクの子供たちの間で白血病や癌が多発し、先天性奇形が急増した。同時に、湾岸戦争を経験した米国の復員兵の間で奇形児が多いことも、いくら米国政府が隠そうとしてもインターネットの世界ではすでに多くの人の知ることとなっている。

米国政府は、劣化ウランの放射線はわれわれが日常的に受けているバックグラウンド放射線(自然界に偏在している微量の放射線)と大きな違いはない、したがって核兵器ではないといい続けている。もしブッシュ政権がイランを核兵器で攻撃するならば、それはテロとの戦いではないし、イデオロギーでも宗教の衝突でもない。これは米国の軍産複合体がその利益のために行う戦争であり、戦闘員、民間人、そしてまだこの世に生まれていない子供たちの命をも危険にさらすことなのだ。