No.812 愛国者の流儀

3月7日、PHP研究所より『愛国者の流儀』 ~青い眼の日本人があなたに伝えたいこと~ が発刊される。

愛国者の流儀

私がこのメモを出し始めたのは1995年である。つい昨日のことのように感じるが、なんと13年もたった。当時は電子メールを持っている人もまだ多くなく、友人や知人にメモを定期的に郵送していた。

時折、コメントや意見をくれる友人もいたし、社員から質問がくることもあった。しかしほとんどは私の一方的なモノローグのように、手ごたえが返ってくることも少なかった。それでも私は発信を続けた。

テレビ局からコメンテーターとして番組出演を依頼されたこともあった。テレビを見ない私だが、もし私の考えが人々に何かを考えるきっかけになるのであればと思い、出演もした。テレビで私の行った発言に対して、酷評や嘲笑、なかには脅迫めいたメールが送られてきたときは、テレビの影響力の大きさを改めて感じた。それとともに、テレビの流す情報によって多くの国民が、この国を支配する人々によって都合のよいようにマインドコントロールされていることを改めて認識した。

与党政府や現行の株主至上主義、資本(家)主義を批判するうちに、テレビの出演依頼はぱったりこなくなった。その一方で、インターネットを通じて、このメモに共感をしてくれる普通の人々から、たくさんのメールをいただくようになった。縁があって、鳥取の地方紙のコラムにもこのメモが掲載されるようになった。ある日、鳥取の読者の方から宅急便で梨が送られ、御礼に電話をかけるとその方は介護ホームに住むご高齢の方で、励ましのお言葉をいただいた時はとても感激した。

今回、PHP研究所から、このメモをもとに加筆をして本を出版する提案をいただいた時は二つ返事でお引き受けした。インターネットの力は大きいけれど、書籍になれば、ご高齢の方が新聞のコラムで私を知ってくれたように、パソコンを使うことのない、これまでの読者以外の方の目に私の思いが伝わるかもしれないと思ったからである。

私の本職は経営である。しかし、年を重ねるごとに、私にとって企業のことを考えるのと同様、コミュニティや社会のこと、環境のことを考えることがいかに大切であることを痛感するようになった。なぜなら、それなくして企業の繁栄、ひいては個人の幸福などあり得ないからである。しかし同時に、社会や環境は、私一人ではどうすることもできない、変えることはできない、という無力感に陥ることもあった。

私の好きな言葉は「千里の道も一歩から」である。一歩を踏み出さなければ何も始まらないからだ。だから、これからも一歩一歩進み続けるために、このメモを出そうと思う。それによって誰かが一歩を一緒に歩いてくれるようになることを希望して。

このホームページを訪れてくださる読者の方には、すでに周知の内容も多く含まれているが、もし機会があれば新著をお手にとっていただければ幸いである。