政府与党がガソリン税の暫定税率を復活させ、ガソリン価格が急騰している。値上げをすれば消費が減り、環境対策になるなどと政府は言うが、その税金で日本国内に高速道路をたくさん作ろうというのだから結局は環境破壊以外のなにものでもない。
食糧危機の原因は弱肉強食
原油価格の高騰にともないさまざまな物の価格が値上がりしており、とくに穀物の高騰に伴うパンやめん類などの価格が上がっている。しかしこの1年間で原油価格が40%以上も上昇したことを考えれば、今後さまざまな物の値段が上がることはまちがいない。
穀物価格の高騰が日本人の暮らしに及ぼす影響はまだ小さなものだが、海外では暴動になるほどの影響がでている国もある。カリブ海の国ハイチでは、主食である米の価格が倍になり、加えて燃料価格も高騰したために住民が国連機関や大統領官邸を襲うなどの騒ぎとなっている。ハイチはもともと世界でもっとも貧しい国の一つで食料自給率は5割に満たない。穀物高騰による輸入不足は、たちまち国民の飢餓につながる。ハイチだけではなく、イエメン、フィリピン、バングラデシュ、アフリカ諸国などでも食糧価格高騰に対する抗議デモや暴動が起きている。貧しい国の国民にとっては生死にかかわる問題なのだ。
穀物価格高騰の原因の一つは、米国が脱石油戦略として、2005年に米国内のバイオ燃料の使用量を6年間で2倍にするとの政策を発表したことだ。すでに世界で消費される石油の25%を使う米国は、人々の命の糧である穀物を自動車を動かすガソリンにまわしたのだ。日本政府のガソリン税が環境対策にならないのと同じく、ブッシュのバイオ燃料も大企業や投資家には大きな利益をもたらしても、環境対策にはならない上に、貧しい国の人々から食料を奪う結果となった。
この地球に全ての人に食べさせるだけの食料があっても、資本家の視点が金儲けにあるかぎり、穀物が貧しい人に向かうことはない。食糧危機に対して資本家は供給を増やすという解決策を提言するが、有限である地球は人間の足ることを知らない貪欲に歩調を合わせることはできない。つまり、生産量を増やそうにもやせた土地に必要な化学肥料や灌漑や輸送に使われるエネルギー、これらすべてが石油に依存しており、有限である石油はもはやピークに達した。
現代農業がいかに石油に依存しているかは、農業に従事せずともわかるはずだ。また食べ物が食卓に並ぶまでにどれほどの石油がその輸送や保存、調理につかわれていることか。安くて豊富な石油の終わりは、安くて豊富な食料の終わりでもあるのだ。
道路を整備し、自動車を走らせるために穀物をバイオ燃料に向けるというような政策を国が取り続ければ、多くの人が飢餓に苦しむ時代がくる。今は貧しい国の国民だが、貧富の格差が広がるにつれ日本国内でも同じような状況になっていくだろう。
世界的な食糧危機の原因は食料不足にあるのではなく、弱肉強食、短期的な利益を追い求める自由経済市場というシステムそのものにある。飢餓に直面する世界の33ヶ国で、すでに食料をめぐって問題が起きていると世界銀行のゼーリック総裁は述べた。このままいけば日本社会が同じ不安定さに直面する日は遠くない。なにしろ日本の穀物自給率はハイチを下回り30%にも満たないのだから。