No.833 地球温暖化詐欺の欺瞞

私が環境について一言を持っていることを知る知人から、少し前に、あるドキュメンタリー番組に対して意見を求められた。動画サイトYouTubeで公開されている、イギリスの公共放送「チャンネル4」が放映した『The Global Warming Swindle』(地球温暖化詐欺)という番組である。

地球温暖化詐欺の欺瞞

この番組の主旨は、気候は常に変化するものであり、温暖化は人間の活動によるCO2が原因などではないというもので、それをみて私はすぐにプロパガンダにも等しい、と感じた。そこでは明らかに間違った説明もあったため反論の価値もないと無視していた。ところが最近、身近な友人からもドキュメンタリーの感想を聞かれ、番組が多くの人を惑わせていることを知った。

細かくは説明しないが、そのドキュメンタリー番組では、人間の活動で地球温暖化が起きていると主張する人々は、それによって研究資金をもらえる科学者か、アフリカなどの成長を阻むことが目的だと結論づけていた。それがイギリスの公共テレビで放映されれば、温暖化に懐疑的な人だけでなく、一般の人でも興味をそそられるであろう。

私は地球環境について懸念はしているが、専門家ではないし、何が正しく、何が間違っていると立証することはできない。だからこそ、多くの専門家のデータを集めて分析し、そのあとは自分の直感に判断を委ねている。そういう意味からも、この番組では太陽の黒点サイクルに気温上昇をあわせるためにデータを改ざんしていたり、石油会社が提供元であるグラフデータを使用していたり、都合の悪い時期のデータが省かれていたり、それだけで十分“ドキュメンタリー”、つまり“制作者の意図や主観を含まない客観的な事実”ではなく、プロパガンダだと判断したのだ。

ちなみにこのコラムを書くにあたり調べたところ、Ofcom(イギリスの電気通信・放送の規律・監督を行う規制機関)も、この番組が目的にあわせて出演者の見解を意図的に歪曲しているとして、放送倫理規約違反だと裁定していた。

連日の暑さ、夜になっても続く熱波。われわれの住む地球の気候がこれまでとは違うパターンになってきていることは確実であるが、原因を100%立証できる人はいない。現にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告でも、人為的な温室効果ガスが温暖化の原因である確率は90%で、10%はわからないとしている。そしてその10%の不確実さをついて、温暖化対策を進めようとする人々をおとしめる、それがこの番組だと私は思っている。

また、地球温暖化の犯人探しにも似たこのやり取りは、タバコ業界と似ている。肺がんの原因がタバコだと100%実証されない限り、タバコ会社は人々にタバコを吸わせ続けようとしている。しかし100%の証拠がないからといって、決してタバコが無害になることはないのだ。

この番組の制作者の意図は私にはわからない。言えることは、同じ制作者は過去においても地球温暖化を防止することに反対する、つまり、石油や石炭の使用を控えることに反対する番組を作っているということである。

環境保護はうとまれる。車に乗るな、輸入品を買うな、海外旅行をするな。温暖化を阻止するためのライフスタイルや産業構造の転換は、石油会社や大企業だけでなく、普通の人にとっても容易なことではないからだ。しかし無限の欲望を持つ人間が住む地球、それはしょせん有限であり、また、科学が100%証明することは決してできない。だからこそ、地球温暖化は人間には責任はないというメッセージを放つこのドキュメンタリーは、環境保護への強い敵対だと思うのだ。