2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロ事件から7年が過ぎた。そのテロを計画、実行したとアメリカがいうアルカイダのリーダー、オサマ・ビン・ラディンを保護するタリバン政権をアフガニスタンから追い出すという目的で、その翌月から始まったアフガン戦争も7年になる。
テロとの戦いは弱者を犠牲に
先月、アフガニスタンで日本人ボランティアが殺害された。NGOとしてアフガン人のために尽くしながらアフガン人から殺されてしまったという事実は、あえて批判を覚悟していうならば当然の帰結であったと私は思う。なぜならアフガニスタンは、アメリカをはじめとする連合軍によって爆撃を受けている戦場だからだ。
イラク攻撃に先駆けて始まったアフガン戦争は、今回のような犠牲者がでない限り、日本で報道されることはほとんどない。しかしイギリスのガーディアン紙によれば女性や子供が大半を占める民間のアフガン人が殺されるなど、ここ数ヶ月治安はかなり悪化していたという。アメリカはこれに対して、アフガン反政府武装勢力がプロパガンダのために民間人死傷者を多く報じていると反論しているが、イラクなみの戦場となっていることはもはや疑う余地はない。
多民族、多宗教の国家を理解することは容易ではない。ましてやアフガニスタンのような国を欧米のものさしではかることなどできない。私はNGOの活動を批判するつもりはないし、希望を捨てろというつもりもない。しかし3万人以上のアメリカ兵がいて日々空爆が行われ、共和党マケイン候補だけでなく、民主党のオバマ候補でさえ、大統領になったらさらに1万人の兵士を送りたいと述べているのが今のアフガニスタンだ。いかなる理由があっても、そのような国に入ること自体、アフガンの人々と同じ危険にさらされることだった。
アメリカの傀儡政権であるカルザイ大統領はカブールのごく一部の地区を支配しているに過ぎない。資金や兵器を提供して他のアフガン部族を取り込もうとしたアメリカ政府の試みは失敗し、その多くはタリバン武装勢力の傘下に入り、今後戦況はますます悪化していくであろう。
アメリカは「アフガニスタンにおけるテロとの戦い」を支援するために、海上自衛隊によるインド洋での給油活動を継続するよう日本政府に要請している。先日、官房長官がNGOの犠牲者がでたことを理由に、日本も積極的にテロとの戦いに関与する重要性を訴えたと聞いてあきれてしまった。9月11日を理由に、国際法を無視してアフガニスタン攻撃というテロ行為を行ったのはアメリカであり、日本がその殺戮を支援することをアフガンで亡くなったNGOボランティアが望むはずがない。
アフガンの人々のために復興支援に尽力することは純粋で素晴らしい行為である。しかし戦場で行われる無差別で残虐な行為を非難してもしかたがない。遠く離れたところで、まるでハリウッド映画のようなその暴力行為をコミュニケーション手段としてとっているのがアメリカ政府であり、それが戦争なのである。
日本でもアメリカでも、アフガニスタンでも、戦争で傷つき、殺されるのは一般の国民で、戦争を推し進めるのは、政治家であり、兵器を製造して利益を得るのは産業界という構図は先の世界大戦から変わっていない。強者が繁栄するために弱者を犠牲にすること、テロとの戦いとはまさにそれなのである。