私は共産主義者であり、社会主義者である、と言うと多くの人が驚く。しかし共産主義とは「共に産み出すこと」であり、またこの社会で暮らす限り、非社会主義者は迷惑にさえなりうる。それなのに私が共産主義に賛同する発言をすると「左翼だ」といわれ、祝日に日の丸を掲げると「右翼だ」と言う。要は、私はなんと呼ばれてもどちらでもかまわないし、そのこと自体に意味はないと思っている。
先日、赤旗の取材を受けた。日ごろから部下には読売新聞と赤旗の両方に目を通すよう指示している。なぜなら同じ事象でも対照的な報道がなされることが多いからだ。たとえば、アメリカで下院が公的資金投入法案が否決された。これを赤旗は「ギャンブルの後始末に税金投入か。銀行でなく国民に資金援助を」と報じ、読売は、「米経済は重大な局面にある、このままでは経済の損害は甚大で長期化する」というブッシュ側のコメントが中心。どちらの新聞を読むかで受ける印象は大きく変わるのだ。Our Worldの読者ならこの問題についての私の意見はもちろんわかっていただけるだろう。そして私が読売新聞からこの件で意見を求められることもないということを。
というわけで、先日受けた赤旗の取材を、以下に許可を得て転載する。
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米国標準が世界を不幸に
しんぶん赤旗 (2008年9月18日付)
小泉純一郎氏は、首相になって5年半の間、「小泉改革」と称して日本を悪くしました。しかし、小泉氏は、エンターティナー(役者)でしたから、メディアにとって都合がよかった。その後、あまり人気がない二人の首相が、続いて政権を投げ出しました。自民党総裁選では、メディアによって人気が出そうな政治家が、総裁になるでしょう。もはや政治は、政策よりも娯楽性が重視されるのです。
ただ、自民党の政治家のだれも、悪い政治を変える力を持っていません。法人税を減らし、国の借金を増やし、お金が足りないから消費税を10%に上げなければならないという。国をアメリカに開き、郵政を民営化し、郵便貯金をアメリカの金融機関に差し出した。その政治をなおせません。
解散・総選挙が近いという。国のために、どんな政治がいいのか。消費税はなくし、法人税は元の税率にし、税の累進性を取り戻し、金融などの規制を強めればいい。中曽根内閣時代の前川リポート(1986年)以来やってきたことを、元に戻すことです。
前川リポートは、日本をアメリカ社会のように貧富の差の激しい国にする、日本をアメリカの属国にするものでした。
アメリカが、日本の企業を自由に買えるようにする。アメリカは神様で、ほかの国の人々は奴隷。日本の総理大臣は、アメリカの属国の総督です。これが、アメリカのいうグローバルスタンダード(世界標準)です。
日本の金融ビッグバンは、日本経済を停滞させました。
アメリカでは1929年に株価が暴落し、その後世界恐慌になりました。そこで、有名なグラス・スティーガル法をつくり、銀行と証券会社の兼業を禁止。金融から不況が起こらないようにしたのです。
ところが、そのアメリカが、世界各国に金融自由化を迫り、日本でも金融ビッグバンだと規制を緩和しました。世界で一番、預金があるのが日本です。その日本の銀行が、国民が預けたお金を日本の産業のために使うのではなく、「財テクだ」と博打(ばくち)に使う。銀行はカジノの元締めとなり、日本人のお金は世界中のカジノへ流出しました。
しかし博打は、儲かる時もあれば損もします。儲かった時は、自由にさせてくれといい、損をすれば国になんとかしてくれという。使われるのは国民の税金です。アメリカのサブプライムローン問題もいっしょです。大手金融機関は、危ういことをやって大もうけし、うまくいかなくなると、政府に助けてもらう。ウォール街の仲間たちは政府の要人ですからね。
サブプライムローン問題を契機にした金融不安や原油高騰の影響をみると、1930年代の世界恐慌の時よりもひどい不況になる危険があります。アメリカンスタンダードは、世界や日本を不幸にします。アメリカのいいなりでは、だめです。
(しんぶん赤旗 2008年9月18日より許可を得て転載)