米財務省によると今年9月、ついに中国が日本をぬいてアメリカ国債の最大の保有国になった。アメリカは中国、日本、中東諸国のマネーがなければ立ち行かない状況が鮮明になってきたが、貿易関係からみて米中は切り離せない関係にあるとはいえ、このような状態がいつまでも続くはずはない。
米発金融危機もうじき2年
2007年、アメリカで始まった金融危機ももうじき2年目にはいる。かつてアメリカは世界の国々から羨望される国であった。国家を支配するエリート層があまりにも自分だけの金銭的利益を貪欲に追い求めたために、国内産業は空洞化し、もはやアジアから借金をしなければ回らない国となってしまった。
もちろん、サブプライム以前から、正確には10年も前から、富裕層や大企業を減税しながら巨額の財政赤字を出しつつ世界のあちこちで戦争をしているアメリカを支えているのは、米国債を大量に買っている日本政府、つまり日本人のお金であると私は主張してきた。いまの金融危機も、日本がばくち中毒になっている借金国アメリカに貸し出したために起きたのである。
11月に発表された連結決算では、日本の銀行大手6行も58%の減益と報道された。少し前には、サブプライムで損失を出しながら、モルガンスタンレーやメリルリンチ、バークレイズなど海外の金融機関へ多額の出資を行った。預金者のお金でなぜそのような危険な投資をするのか、まったく理解できないが、不良債権が膨らめばまた日本政府が公的資金を投入してくれると思っているのかもしれない。
世界が金融危機に直面する今、われわれはただ単に小手先の治療をするのではなく、根本から変えていかなければ、10年後、20年後に再び同じことが繰り返されるだろう。今の状況が金融規制緩和によってもたらされたことを考えると、まずは規制の強化である。しかしそれ以前に、銀行業界が享受してきた特権を見直すことが必須である。
たとえば、イギリスの中央銀行であるイングランド銀行は11月に商業銀行にお金を貸し出す金利を4.5%から3%に引き下げたが、これは資金を3%の利子で借りて7%の利子で貸せる、ということである。このたなぼたのような利益で銀行は公的資金を返済し、資本を再構築し、またたくさんお金儲けができるということだ。
銀行業務を簡単にいうと、預金者のお金を集め、そこから自分たちの利益をとり、残りを貸付や不安定な投機、現金化しにくい債券などに投じる。さらに、あなたが100万円持っていれば、100万円しか人に貸すことができないが、銀行の場合100万円あれば9900万円貸し出すことができる。これが銀行に与えられている特権であり、現金通貨の量より預金総額がずっと大きいのはこのためだ。よく考えると、国民を保護するようにみえる預金保険も実は銀行のためだということもわかるだろう。
銀行業務は経済にとって重要であり、つぶす事ができないとはいえ、社会を不安定にする原因となっている今こそ、その機能と特権を公の場で議論し、精査する時だ。もし銀行が金庫にあるお金の貸し出しに専念すれば、金融危機が起きることも、また富がかたよることもないということを、多くの人が知るべきである。